日本産科婦人科学会の「低用量ピル」発表を読んでみた

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1999年に、低用量ピル経口避妊薬)が日本で解禁されて約15年。厚生労働省の集計によると、2004年からの10年間で、低用量ピルの副作用と考えられる報告が749件、その内、血栓症により11人が死亡したとのこと。

これを受けたメディアの報道に対して、日本産科婦人科学会が「低用量ピルの副作用について心配しておられる女性へ」の文書を発表している。

要点をまとめると次の通り

1、低用量ピルは避妊の他、生理不順などの治療に使われている。一方で血栓症を発症することもある
2、海外の調査によると、血栓症の発生リスクは高い順に、出産後(1万人当たり40~65人)、妊娠中(同5~20人)、低用量ピル服用者(同3~9人)、非服用者(同1~5人)
3、低用量ピルは、服用開始後の数か月間に血栓症リスクが高くなるので、継続して使った方が良い
4、タバコを吸っている人、高齢者、太った人の低用量ピル服用には注意が必要
5、低用量ピル服用中に、頭痛、腹痛、けいれん、むくみなどの症状が出た場合には、医療機関を受診する

「ふむふむ、なるほどね」と読み流すこともできるが、気になるところを挙げてみよう。

まず4と5を広げてみる。4について、ここでは明確な基準を示していないが、他のサイトによると、タバコ1日15本以上、35歳、BMI(体重kg÷身長mの2乗)30以上が目安のようだ。また過去に血栓症を発症した人、家族や親戚に血栓症や類する病歴(脳梗塞や心筋梗塞など)を発症した人がいる場合も要注意。5は経験者の書き込みなどを読むと「念のため」や「もしかして」の受診が奏功したとある。

そして2の「海外での調査」だが、こういう場合の海外はほとんど欧米だろう。食習慣の違いもあって、一般的に血栓症の発症率は日本より高い。それをそのまま日本に当てはめるのはどうだろうか。非服用者のリスクが一番少ないのは同じだろうが、それ以外の数値は多くなるかもしれないし、少なくなるかもしれない。もっとも低用量ピルが解禁されて14年では、まとまったデータを集めるのも難しそうだ。

さて特に引っかかったのが1と3。率直に思ったのは「避妊に使う場合と、生理不順治療に使う場合とを、一緒に考えて良いの?」だ。2にあるように、血栓症のリスクは妊娠・出産時に高くなる。であれば低用量ピルを避妊に使う場合のリスク比較(欧米の調査云々は横に置くとして)は妥当だろう。

しかし生理不順治療を考慮するのであれば、「低用量ピル服用者(同3~9人)、非服用者(同1~5人)」だけが対象になるはずだ。極論になってしまうが、血栓症で死ぬ人がいても、生理不順で死ぬ人はいない。この1点だけに限れば、低用量ピルは飲まない方が良いだろう。

ただし生理不順により精神的に不安定になったり、生理不順が原因で不妊、早期閉経、更年期症状の早期化になったりする人がいるのは事実。これらの治療に、低用量ピルを使うかどうか、個々で判断することになりそうだ。

そしてその場合に、3が重要になる。つまり避妊が目的ならば、低用量ピルを服用し続けるのは、目的に適っている。しかし生理不順の治療が目的の場合、治った後にも服用を続けるのだろうか。薬物相互作用を考えれば、服用する薬は少ない方が良い。もちろん生理不順の再発防止と、血栓症リスクを軽減する目的で服用を続けるのも、1つの選択だ。

今回は副作用を血栓症に限っているが、眠気、吐き気、めまい、肥満、乳房の張りなども報告されている。また「生理不順など」とまとめてしまったが、低用量ピルを使った治療は、ニキビや肌荒れの改善、子宮内膜症治療、骨粗鬆症の予防、卵巣ガンや子宮ガンの予防など多方面に渡っている。

もはや簡単にメリットとデメリットを天秤にかけられる状況にはないようだ。だからこそ当事者である女性、パートナーである男性の双方が、低用量ピルに関して理解を深めることを願いたい。

日本産婦人科学会「低用量ピルの副作用について心配しておられる女性へ」

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