海自たちかぜ自殺訴訟でいじめ原因を認定、減らない自衛官の自殺

2014年04月24日 08時37分

2014年04月24日 08時37分

裁判所
県田勢

海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」勤務の男性1等海士が自殺し、遺族が賠償を求めていた訴訟で、東京高等裁判所はいじめが自殺の原因だったとの判決を下した。

横浜地裁は440万円の賠償に留まる

事件は、2004年10月27に海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」配属の21歳(当時)男性1等海士が立会川駅(東京都品川区)に飛び込み自殺をしたことが発端。遺書などから、自殺の原因は先輩自衛官からの暴行や恐喝と、それを見過ごしていた組織に問題があるとして、遺族が国と先輩自衛官を相手に訴訟を起こしていた。

2011年、一審の横浜地方裁判所は、自殺の原因が先輩自衛官からの暴行や恐喝に原因があったこと、上官の監督が不十分だったことを認めたものの、自殺の予見可能性は否定し、約1億5000万円の賠償請求に対して計440万円の賠償を命じるに留まった。

高裁は海自の証拠隠しも認める

一審の最中に起きたのが海自のアンケート隠ぺい問題だ。海自では「たちかぜ」乗務員に対してアンケートを実施。翌年、遺族からアンケートの開示を求められたものの、海自側は「アンケートは破棄した」との返事だった。

しかし3等海佐の内部告発によりアンケートが保管されていたことが発覚、海自幹部が謝罪するに至った。ただし海自は当の3等海佐を規律違反で処分を開始するとの新たな問題も起きている。

今回の東京高裁の判決では、横浜地裁の判決に加え、自殺は予見可能だったこと、組織的なアンケート隠ぺいがあったことも認めた上で、約7350万円の賠償を命じている。

毎年80名前後の自衛官が自殺

ここ10年間の自衛官における自殺者数は、94人(平成16年)、93人、93人、83人、76人、80人、77人、78人、79人、そして76人(平成25年)だ。事務官を加えると100人を超えた自殺者が毎年出ていたこともあり、防衛省や自衛隊でもカウンセリングや規律の徹底を行っているが、相変わらず自殺者は減っていない。

総自衛官数に対する自殺者の割合は10万にあたり約30人と、日本人(全体10万人あたり約25人)と比較してやや高い数字だ。ただ自殺者には性差や年齢差もあるため一概には言えないとの意見や、自殺者数そのものに対しても操作が加えられているとの声もあるので、安易な比較は難しいだろう。

それでも他の省庁職員(10万人あたり約15人)と比較して倍以上の割合になっていると聞けば、どこか不自然なものを感じる人が多いだろう。一般に自殺の原因として健康問題や金銭問題が多いが、頑健な自衛官が健康面に不安を抱えているとは考えにくく、メンタル面での問題があるとすればフォロー体制に問題がありそうだ。また他の省庁職員同様に自衛官も収入は安定していることから、金銭的な問題が自衛官に抜きん出て多いとは考えにくい。

こうしたことからも、自衛隊や防衛省の閉鎖的な体質や体育会的な上下関係に問題があるのではとの指摘が止むことは無さそうだ。しかし約80人の自殺者がゼロになったとすれば、それはそれで恐ろしい裏側がありそうな気がする。

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