注目を集める福井の「もらい事故」判決、自賠責法の趣旨を考える

2015年04月19日 21時37分

2015年04月19日 21時52分

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福井地裁の判決は13日

福井地方裁判所で下された判決に注目が集まっている。

第一報は福井新聞のインターネットサイト「福井新聞オンライン」が17日の午後に報じたものだ。

現在のところ、当該記事のリツイートが約6000、フェイスブックシェアは約3000、リンクしたYAHOOニュースでは、それぞれ約3000と約1万3000になっていることからも、判決の注目度が分かる。この週末には、インターネットの掲示板から話題サイトなどにも波及したことで、盛り上がる一方だ。

判決自体は13日に出たものなので、福井新聞が取り上げなければ埋もれてしまった可能性もありそうだが、ここまで盛り上がるとは福井新聞の記者は予想していただろうか。

事故と判決の概要

ツイート数からすれば、ネットユーザーとしては今更の感もあるだろうが、おさらいの意味で経緯を簡単に記しておこう。

原因となった事故が起きたのは、2012年4月30日だ。

福井県あわら市の国道8号で、居眠り運転をした大学生(当時19歳)の車がセンターラインを越えて対向車と衝突、大学生の運転する車の助手席に乗っていた絹谷宏基さん(当時34歳)が死亡した他、対向車を運転していた森川圭造さんも骨折などの重傷を負った。

まず鍵となるのは、事故を起こした車が死亡した絹谷さんの所有するもので、加入していた任意保険は家族しか補償していなかったこと(運転していた大学生は対象外)だ。

死亡した絹谷さんの遺族と、運転していた大学生との間に、事故後にどのようないきさつがあったかは不明ながら、死亡した絹谷さんの遺族が対向車側にも責任があるとして訴えたのが今回の訴訟だ。

対向車側は一方的に衝突されたもので、賠償の責任はないと主張していたものの、13日の判決では、自動車損害賠償保障法にある賠償の定めに基づいて、賠償する義務があるとして約4000万円の賠償を命じた。

福井新聞の記事では、遺族側弁護士の言葉として「同様の事故で直進対向車の責任を認めたのは全国で初めて」であることを記している。

自動車損害賠償保障法の根拠とは

もう1つの鍵が、判決の元になった自動車損害賠償保障法(自賠責法)の定めだ。自動車損害賠償保障法の第3条では、次のように定めている。

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

つまり車を運転していて他人に怪我をさせたり死亡させたりした場合には損害を賠償しなくちゃいけないよ、でも過失がないことや車の欠陥がないことを証明したら賠償しなくていいよ、とのこと。

判決でクローズアップされたのは「過失のないことの証明」だ。福井新聞の記事をそのまま掲載させていただこう。

判決では「対向車の運転手が、どの時点でセンターラインを越えた車を発見できたか認定できず、過失があったと認められない」とした一方、「仮に早い段階で相手の車の動向を発見していれば、クラクションを鳴らすなどでき、前方不注視の過失がなかったはいえない」と、過失が全くないとの証明ができないとした。

要するに、過失があったとは言えないが、過失が無かったとも証明できていないため、自賠責法の定めに基づいて賠償を命じたようだ。

ネットは判決の批判が圧倒的

ネットユーザーのの意見は、判決を批判するものが圧倒的に多い。

過失の無いことを証明することの困難さから「悪魔の証明」とするもの、自賠責保険の基準を超える4000万円の賠償金額について言及するもの、自賠責保険の掛け金の値上がりを心配するものなど。

さらに「歩いていてぶつかられても……」と茶化す意見や、「金に困ったら車でぶつかりにいけば……」のような過激な書き込みもある。

その一方、何とか賠償金をねん出するための苦肉の策ではないかと遺族側に同情的な見解や、過失がないことを証明させる自賠責法の欠陥とする見方などもあった。

「自動車運送の健全な発達」とは

自動車損害賠償保障法の第1条「この法律の目的」は次の通り。

この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。

つまり「被害者の保護」と「自動車運送の健全な発達」の2つを目的としているのが分かるだろう。

今回の判決は「被害者の保護」になるのかもしれないが、果たして「自動車運送の健全な発達」に結びつくのだろうか。

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