介護職を辞めた理由の1位、女性「体力的にきつい」男性「給与が低い」

2015年10月26日 18時56分

2015年10月26日 21時28分

肩こり,体調不良,女性
123RF

体力的にきつい仕事

リクルートキャリアが介護サービス業に対するイメージ調査の結果を発表している。

調査は、全国の15~64歳の男女2757人を対象に行ったもので、学生618人、社会人1957人から得られた結果を集計した。介護職に対する主なイメージ(複数回答)は次の通り。

体力的にきつい:61.0%(前回から-4.7P)★
精神的にきつい:58.9%(同-6.1P)★
給与水準が低い:48.0%(同-3.3P)★
他人の人生に関わるのが大変:46.1%(同-6.4P)★
離職率が高い:44.6%(同-2.0P)★
個人の向き不向きがある:43.4%(同-7.4P)★
社会的意義が大きい:38.8%(同-7.3P)☆
補助金頼みの業界:37.4%(同-7.4P)★
今後成長する業界:30.9%(同-6.8P)☆
資格や知識を活かせる:29.8%(同-5.8P)☆
小規模の会社が多い:29.8%(同-5.2P)★
社会的地位が低い:29.6%(同-2.1P)★

資料では、良い印象を「ポジティブ」(☆印)、悪い印象を「ネガティブ」(★印)としており、圧倒的にネガティブイメージが多い。

ネガティブイメージは、前回(2014年)調査から減っているものの、ポジティブも減っているため、好悪が逆転する見込みは限りなく薄そうだ。

離職理由の男女差

介護職を辞めた人に聞いた主な理由(複数回答)は次の通り。

体力的にきつい:23.3%
精神的にきつい:20.4%
体調がすぐれない:19.4%
給与水準が低い:16.0%
尊敬できる仲間や上司がいない:14.1%
社風が良くない:11.2%
やりがいを感じなかった:9.7%

「体力的にきつい」「精神的にきつい」とのイメージがあり、離職理由のトップになっているのは、予想に違わぬ現状があるようだ。

「体力的にきつい」「精神的にきつい」「体調がすぐれない」は女性に多く、「給与水準が低い」「尊敬できる仲間や上司がいない」は男性に多い。

介護サービス業には肉体労働の面があり、それに見合った給与水準が求められると言えそうだ。

事実は真実か

資料には「『介護サービス業の仕事』の事実」として、次の12の項目を挙げている。

1、1年以内の離職率10%未満の事業所が約5割を占める
2、業界全体の離職率は産業全体と大きく変わらない
3、介護業界で働く人の5割強は残業がない
4、介護事業者にも、人事・総務・営業・企画などの部門がある
5、介護技術が発達してきたため、腰などを痛めずに生涯働ける環境になっている
6、大手企業が高齢者向けビジネスに参入している
7、現場職だけでなく、様々なポストや選択肢がある
8、技術さえあれば、初期投資が少なくても起業できる
9、未経験でも始められる
10、転職者の約60%が介護業界以外からの転職
11、介護職員の約3割が34歳以下
12、過去3年間、介護業顔の有効求人倍率は1.8倍を超えている

ザッと見て良さそうな事ばかりながら、統計の妙と言うか、表現の妙がありそうだ。

1と2の離職率では、大手事業所と中小の事業所を一緒に考えるのは不自然で、産業全体と比較するのも強引だろう。

3の「5割強は残業がない」は、反対に考えれば4割は残業があることになる。そして肝心なのは、残業に見合った手当が払われているかのはずだ。

そもそも他の業種や職種で統計に表れないサービス残業が横行していることを考えれば、「5割強は残業がない」自体も怪しい。

5の「生涯働ける環境になっている」、7の「様々なポストや選択肢がある」も、そういう場があると言うだけで、実際にそうした環境(事業所)やポストを選べるかは別問題だ。

10の「約60%が介護業界以外からの転職」、11の「約3割が34歳以下」は、他の業種も似たようなものだろう。さらに12の求人倍率の高さも、単に人手不足が続いているに過ぎない。

「参入」「起業」「始めた」後は?

もっと危ういのは、6の「大手企業が参入」、8の「初期投資が少なくても起業可能」、9の「未経験でも始められる」だ。

以前の記事で、帝国データバンクや東京商工リサーチの調査から、新規の中小介護事業者が倒産していることを書いた。

東京商工リサーチでは、倒産の一因として「介護事業への熱意はあっても、経営は全くの素人で経営能力に欠ける事業者が少なくない」「異業種から安易に新規参入したが、過剰投資や勝手の違う業種で経営に苦慮」と書いている。

それを踏まえれば、6・8・9は事実であっても、非情に危ないように思える。

安倍総理が「介護離職ゼロ」を打ち出したことで、国有地を介護施設に転用する方策が挙がっているが、建物があっても人が集まらないのでは意味がない。

社員待遇や労働環境の悪い企業を「ブラック企業」と表現するが、業界全体に「ブラック」のイメージが固定しかかっている介護業界の労働環境を改善することができるだろうか。

リクルートキャリア「HELPMAN JAPAN 『介護サービス業 職業イメージ調査 2015』」

【参考記事】
老人福祉事業者や介護事業者の倒産が昨年を上回るハイペースに!(10月15日)

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