火種が残った海老名市のツタヤ図書館、TRCとCCCの溝が明らかに

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図書館

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2019年3月まで体制が継続

神奈川県海老名市の図書館をめぐる問題で、図書館流通センター(TRC)とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、今後も運営を続けて行くことが分かった。

朝日新聞の報道によると、10月28日に内野優海老名市長とTRC、CCCとの話し合いが行われ、10月30日に内野市長が会見で明らかにしたもので、2019年3月の基本協定満了日まで両社による運営が続けられるとのこと。

選書委員会を新たに設置

会見を報じたのは、朝日新聞や日本経済新聞などがあるが、内容はハフィントンポストが詳しい。

ハフィントンポストでは、28日に「TRCとCCCの『関係解消』なぜ? 海老名市は会見へ」を報じた後、30日に「ツタヤと図書館流通センター、関係解消から一転して継続へ」の速報を、31日に「図書館流通センターが一転 CCCとの共同運営を継続する『理由』」として詳細な内容を記している。

朝日新聞では「(CCCとTRCの)両者の溝はなお残ったまま」「火種は残っている」と厳しめの論調で、ハフィントンポストでも「両社の歩み寄りはたやすくはない」などと、朝日新聞同様に厳しい視線はある。

ただハフィントンポストでは、CCCとTRCによる選書委員会を設置するなど、具体的な改善点を示し、いくらか明るさを感じさせる内容になっている。

協定にない分業体制

ハフィントンポストでは、TRCとCCCの考え方の違いを読むことができるが、それがより明らかになっているのが、東洋経済オンラインの記事だ。

東洋経済オンラインでは、10月28日に「TSUTAYA、誤解と憶測に満ちた会社の正体」として、CCCの増田宗昭社長のインタビューを掲載、29日には「TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由」の見出しで、TRCの谷一文子会長のインタビューを掲載している。

こうした記事を読んで気になるのは、海老名市と両社が結んでいる運営に関わる協定の内容だ。

これまでの記事を読むと、海老名市の中央図書館はCCCが、分館の有馬図書館はTRCが運営を担う格好になっている。

しかし「現在の『分業体制』について、『協定の中には書かれていません』」(ハフィントンポスト31日記事より)とのこと。ではこうしたズレ(分業体制)は、いつから起こり、なぜこれまで対策が取られなかったのだろうか。

図書館の名を借りた別物

東洋経済オンラインやハフィントンポストの記事を読むと、従来の図書館をなるべく維持していこうとするTRCと、新たな文化拠点を作ろうとするCCCの考え方の違いが分かる。

ただしCCCの増田社長の「図書館を再生している」(東洋経済オンライン28日記事より)には、引っかかるものを感じる。

例えば着物(図書館)を仕立て直してもらったものの、でき上がったのは着物(図書館)ではなく、ワンピース(ブックカフェ)だった、のような感じだ。

武雄市図書館の功績として、来館者数や貸し出し数の増加をあげることが多い。海老名市でも「来館者数は前年同期に比べ255%、貸出冊数は197%と増加」(ハフィントンポスト31日記事より)とのこと。

しかし武雄市図書館や海老名市の中央図書館が切り捨ててきた、地元に関連する資料の保存や、バックナンバー(アーカイブ)を保管する機能も図書館には必要なはず。

CCCの増田社長は、図書館の名を借りた新たなビジネスモデルが欲しかっただけなのではないだろうか。

もちろん新たにできたブックカフェを歓迎する武雄市民や海老名市民は少なくないだろう。その一方で従来からある図書館機能を希望していた市民は不満の声を寄せるはず。そして武雄市や海老名市では、市長を始めとした関係者が火消しに懸命になる。

武雄市や海老名市の関係者や市民は、CCCの意図をどこまで理解していたのだろうか。

選挙間近の海老名市

ハフィントンポストが28日記事で触れているように、11月15日には海老名市議会議員選挙と海老名市長選挙の投開票が行われる。ちなみに内野市長は4選の出馬を表明している。

今回の発表は、選挙間近のゴタゴタを避ける意図で、内野市長ら関係者が強引にまとめたようで、むしろ海老名市民にとっては、問題を先送りした印象が強いのではないだろうか。

ハフィントンポストの31日記事で「TRCも、海老名市立図書館以外で、CCCと協力することは今後ないという姿勢は崩していない」とあるように、朝日新聞の記事には、TRCの石井昭社長の言葉「海老名は責任を持つが、企業としては今後、CCCと組んだ図書館運営はしない」を掲載している。

単に3年半先(2019年3月)まで時限爆弾のタイマーを伸ばしたに過ぎないようだ。そしてその時の海老名市長は内野氏だろうか。

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