「もっと努力しろ」は時代遅れ―学力の半分はDNAで決まっていた

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成績が下がったとき、親から「もっと努力しなさい」と怒られた経験を持つ人は多いのではないか。しかしこれからは、そんな言葉は使われなくなるかもしれない。

the journal Nature Communicationsで発表された研究で、なんと学習能力の半分はDNAによって決まると結論付けられた。

調査では、遺伝相続と環境のどちらが学習能力に大きな影響を及ぼしているかを調べるため、12歳の双子1500組に算数と国語のテストを行い、成績を比較した。その結果、50%のDNAを共有する二卵性の双子より、100%同じDNAを持つ一卵性のほうが、2倍の確率で同じ点数分布が見られた。

さらに補足的な分析では、他人同士でも学習能力が同じ場合、遺伝的類似点を共有しているという結論が得られた。このことは子供の算数や読解能力のおよそ半分が、遺伝構造に由来することを示している。

遺伝子の意外な働き

しかし遺伝子といってもその働きは膨大で、相互に関連しているため、一つの機能に絞ることはできないと言われている。

実際、多方面の能力を伸ばす遺伝子、いわゆるgeneralist genesというものがある。これは子供たちの適性を複合的な訓練によって伸ばそうとするとき、一斉に作用するものだ。研究では、これらの遺伝子が学習能力の土台を作り上げることを明らかにした。

つまりある科目に取り組む子供の能力を決めている遺伝子は、他の分野でも影響を与えるということだ。

ロンドンにあるキング大学の心理学者ロバート・プロミン氏は、LosAngelsTimesの中で次のように語る。
「もしあなたに優れた読解能力の遺伝子があると分かれば、同時に50%以上の確率で、同じ遺伝子が数学にも影響を及ぼすだろう」

しかし遺伝的に劣っていれば、全ての努力は無意味に終わるのではないか。ほとんどはDNAが決めるのだから、もはや人間が関わる余地はないのか。

成績を上げるために

確かに「遺伝か、環境か」という問題はいつの時代も議論されてきた。犯罪や才能、さらには学習能力を含めて、先天的な資質が影響しているのか、または後天的な環境に依存しているのか、いまだに決めることはできない。

プロミン氏は同じくLosAngelsTimesの中で以下のように語っている。
「われわれは自然(遺伝)と教育(環境)を対立させたくはありません。(略)私はこのデータによって、人々が遺伝的に引き起こされた個別的な差異を認識し、尊敬するよう願っています」

その上で、全般的に能力が劣った子供の教育に大切なのは、適性や差異を考慮に入れた個別的な手法だと指摘する。

代表例がフィンランドだ。長い間、国際的教育レベルのトップに君臨してきたこの国は、たとえどんなに時間がかかろうとも全ての子供たちの読み書き能力と計算能力を平均レベルまで引き上げる、と決めている。

そうなると自然にクラスの規模は小さくなり、他の学習方法も試みるようになり、必要な子供には教室以外で時間を費やすことにもなる。つまり一人一人に合わせる教育が行われている。

LosAngelsTimesの中でプロミン氏は、遺伝子は前もってパフォーマンスを決めているわけではない、と指摘する。適性と同時に重要なのは、興味や欲求だとも言う。

遺伝子の研究が進むことによって人の体質や能力まで明らかにされつつある今、確かに学習に対して「努力一辺倒」という考え方は時代遅れなのかもしれない。しかし同時にDNAが全てを決めるわけでもない。大切なのは一人一人の適性をしっかり把握した上で、興味や関心を引き出させる教育なのかもしれない。

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