脳内の化学物質をブロックすることで、心肺停止状態からの生還率が高まる可能性が明らかに

Text by

  • 14
123RF

123RF

「死」と聞くと、心拍が弱くなることで血流が少なくなり、生体機能が徐々に失われていくイメージがある。だが、実際には死をコントロールしているのは脳かもしれない。

このほど専門誌PNASに発表された論文によると、臨死状態にあるとき、脳から心臓に送られる化学物質を断つことで心停止を遅らせられることが明らかになった。

研究チームは、「化学物質によるシグナルを阻害して心停止を遅らせる間に蘇生ができるようになるかもしれない」としている。

脳波と心拍がシンク

ミシガン大学の研究チームが、マウスを酸欠状態に置いて臨死状態にもっていき、死に至るまでの脳波や心臓の変化を調べた。

それによると、酸欠となったマウスの心拍は急速に落ち、その後、脳波と心拍がシンクすることが判明。また、シンクする際には、脳からドーパミンやノルエピネフリンといった12種類以上の化学物質が心臓に送られることも確認した。

脳波と心拍のシンク状態は、心室細動と呼ばれる心室の筋肉がけいれんした状態になるまで続いた。心室細動は全身に血液を送ることができず、心停止の一歩手前。しかし、研究チームがドーパミンなどの流れをブロックすると、心室細動に至るまでを遅らせることができた。

マウスが3度蘇生

つまり、臨死状態で脳から放出される化学物質をブロックすることで心停止を遅らせることができ、その間に蘇生処置を行えば生き返らせるチャンスが出てくるということになる。

実際、実験では化学物質をブロックすることで臨死のマウスが3度蘇生したという。

研究を主導したJimo Borjigin氏は「心臓を動かし続けるには、心臓とともに脳に注意を払う必要があるようだ」と話す。

Borjigin氏らのこれまでの研究によると、臨死状態のときに脳から大量に放出される化学物質が、「まぶしい光を見た」「死んだ○○に会った」といった臨死体験を引き起こしていると考えられるのだそう。

死ぬとき人の体で何が起きているのか。そのメカニズムはまだ謎に包まれているが、今回の研究結果は解明に向け大きな一歩となりそうだ。

また今回のマウスでの実験結果が人間でも確認されれば、蘇生医療にも大きな影響を与えるかもしれない。

Posted: |Updated:

Text by

注目の記事

前の記事を見る

次の記事を見る

Ranking