「本当の自分がわからなくなってしまう」現代人のネット依存をアートにした作品が海外メディアで注目

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2月17~19日の3日間にかけて、国立代々木競技場第一体育館で開催されたファッションとデザインの合同展示会「rooms32」

そこで展示された日本人アーティストの作品が、海外の大手メディアで紹介されるなど注目を集めています。

「Dazzle room」というタイトルのこのインスタレーションは、「rooms32」で披露されるや否や、日本の英字新聞「ジャパンタイムズ」の一面を飾ったほか、米AP通信ニューヨーク・ポスト、独EPA通信などでも取り上げられました。

NEW YORK POST

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部屋全体が複雑な幾何学模様で覆われ、どこに何があるのかわからなくなってしまうような謎めいた本作品に秘められた思いを、作者に聞きました。

「ダズル迷彩」で覆われた部屋

壁や床はもちろん、部屋の中に置かれている棚や時計、スケートボードまですべて白と黒の模様で塗られた「Dazzle room」。

幅2m、高さ2.4m、奥行きが1.5mほどの部屋の中には、部屋と同じ模様の人物がソファに座りながら終始スマートフォンをいじっており、ときおり立ち上がっては鏡越しに自撮りをしてSNSで発信しています。

この模様は「ダズル迷彩」と呼ばれ、第一次世界大戦のころに艦船に用いられた迷彩塗装なんだとか。

Wikimedia Commons

これを施すことで、艦船の進行方向や速度の把握を困難にさせる効果があるそうです。

現代社会の「偏向」のメタファー

「Dazzle room」を制作したのは、画家として活動する松山しげきさん。

これまで平面のアートを中心に手がけてきた彼が、初めて取り組んだという本インスタレーションについて話を聞きました。

―作品のコンセプトを教えてください。

インターネット上では素人が匿名で発信することができ、自分がどう見られたいかを自分の都合のいいように操作できてしまいます。

情報は文字にするとリアリティが増し、発信した人自身もその真偽がわからなくなったりするものです。

その辺がダズル迷彩をまとって方向がわからなくなっている船と似ていると思い、そういった現代社会の「偏向」に対するメタファーがこめられています。

―この部屋の中にいる人物も、周りと同化して自分が見えなくなっていますね。

ダズル迷彩をまとった航空母艦は、目の錯覚を利用して敵から攻撃を受ける前に戦闘機を飛び立たせることができます。

だけど、攻撃が終わって空母に戻ろうとしたときに、自らも距離感が掴めなくなって墜落することがあるらしいんです。

それが滑稽で、現代人が自分をどう見せたいとか、自分の都合のいいように装うことで、本当の自分がわからなくなってしまう様子と似ているなと思ったんです。

作品を通して“意識”が芽生えたら

―作品を通して伝えたかったメッセージはありますか?

現代人の象徴を可視化して、それに対しての反応をみているという作品なので、強いメッセージがあるわけではありません。

ただ、今までまったく(現代社会の偏向などを)意識していなかった人たちに、この作品を見ることで少しでも意識が芽生えたらいいなとは思っています。

―今後制作してみたい作品は?

普通の住宅地の家をひとつすべてダズル迷彩にして、その家の中で家族全員がスマホをいじっているというような大規模なインスタレーションをやってみたいです。

ちなみに、今回のインスタレーションでモデルを務めたのは、松山さんの奥様で画家のfeebeeさんだそう。

松山さんの過去の作品や今後の活動については、下記公式サイトをチェックしてください。

松山しげき
Official Site:
http://sgk7.net/wp/
Instagram:
https://www.instagram.com/sige_mt/

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