アレルゲンを少しずつ取り入れる経口免疫療法で複数の食物アレルギーを同時進行で克服することに成功:米研究

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以前、ピーナツアレルギーをあえてピーナツを摂取することで克服できるかもしれないという話題をご紹介したが、今回は複数のアレルギーを同様の原理で克服しようという試みをご紹介したいと思う。

食物アレルギーに悩む子どもはたくさんいる。どんなに気をつけて生活をしていても、思わぬところでアレルゲンとなっている食物を口にしてしまい、不幸な結果を招くことがあるのは周知の事実だ。こうしたアレルギーを持つ子どもは行動も消極的になりがちで、アナフィラキシー性ショックで命の危険にさらされたことをきっかけに、母親と一緒でなければ出かけられない、外出するとパニック発作を起こすなど、肉体面のみならず心理的にもダメージを受けてしまう。

花粉や猫の毛など「環境アレルゲン」に対しては、それらを少しずつ体内に取り入れてアレルギーを克服する治療法が行われているが、食物アレルギーに関してはリスクが大きく、そのような治療は行われてこなかった。だが最近、スタンフォード大学の准教授で、カリフォルニア州Lucile Packar小児病院で医師を務めるDr. Kari Nadeauの研究チームが、複数の食物アレルギーを持つ子どもに対して、アレルゲンをごく微量ずつ体内に取り入れて耐性を作っていく経口免疫療法を行い、効果を挙げている。以前にも、ピーナツのみ、卵のみなど、個別のアレルギーでは成功例があったが、複数のアレルギーを同時進行で克服した例は初めてだそうだ。

治療は子どもの年齢や状態によって若干異なるが、アレルギー反応を抑えるための薬(ぜんそくの治療にも使われるゾーレアなど)を併用しながら行う。ある10歳の少女の場合を例に取ると、まず病院で医師の監視のもと、5つのアレルゲン(小麦、卵、牛乳、ピーナツ、アーモンド)が含まれた粉末を1mg摂取する。数時間様子を見て問題がなければ、その後、家庭でも同じ分量を毎日摂取するようにし、2週間ごとに通院して摂取量を少しずつ増やしていく。この少女の場合、2012年1月より治療を開始して、5月初旬に「脱感」の状態(アレルゲンに対する感受性・過敏性が抑制されている状態)に到達することができた。この日、少女は病院でケーキを食べ、夜は家族や友人とピザレストランでお祝いをしたそうだ。ただ、Nadeau博士によれば、この状態は「治癒」ではなく、あくまでも「脱感」であり、この状態を維持するには、アレルゲンとなっていた食物を毎日摂取する必要がある。3日摂取しないと、アレルギーが戻ってしまう可能性があるが、摂取する量は、ナッツなら1粒、卵や牛乳なら、パンケーキ1枚に含まれる程度の分量でいいそうだ。

まだ実験段階の治療であり、ここまで来るのも許可の問題、研究予算の問題等で3年以上かかったそうだが、今後さらに研究・分析をすすめ、最終的には食物アレルギーの標準的治療にしていきたいとNadeau博士は考えている。

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