「自分は死んでいる」と思い込んでいるコタール症候群の患者の脳スキャンをしたらどうなる?

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flickr_welovethedark

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前にも世にも奇妙な症候群の記事で、「自分はすでに死人だ」と思い込むコタール症候群を紹介させて頂いたが、今回そんな患者の脳スキャンを行うという画期的な研究が行われた。この興味深いケースに携わったのはベルギー・リエージュ大学の脳神経学者Vanessa Charland-Varville氏。コタール症候群の患者自身「自分は生きている肉体に死した脳がある状態」だと語っている。それはまさにリビングデッド。では、この患者の脳は本当に“死んで”いるのだろうか?

研究者たちは、この患者の安静時の脳の代謝活動を調べるため、PETスキャンを使用。39人の健康な脳と比べた。するとどうだろう、この患者の脳は“デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)”と呼ばれる安静時の前頭葉と側頭葉の活動が大幅に減っていることが明らかになった。DMNは通常の場合、安静時に活動がアップする脳の領域で、人間が“自我”を感じる部分ではないかと言われているものだ。「データによると、コタール症候群の“死した”妄想通り、思考と経験がひどく妨害されているのが見受けられる。これは人間の意識が“個としての自覚が出来ない”病気だ」と、研究者たちは決定づける。

しかし残念ながら、この研究はケーススタディであり、1人の患者だけでは研究に限界がある。さらにこの患者はうつ病にも悩まされており、薬漬けの生活を送っているのだという。そのため、ここまでの脳の代謝低下は抗鬱剤ではあり得ないとしながらも、この結果が事実コタール症候群によるものか、抗鬱剤によるものかの判断がつかないのだという。また、発表された記事が短いフォーマットだったのもあり、スキャン時の詳しい状況も記載されていないのも問題だ。例えばスキャン時に“目を開けていたのか閉じていたのか”、はたまた“何かを考えていたのか”、などの描写も無かった。

この患者は、コタール症候群を発症したから脳活動が変則的なのか、それともアブノーマルな脳活動が“ゾンビ思考”を生み出すのか、因果関係がわからない所だ。瞑想の達人などは、意図して脳の代謝低下を導ける事もあり、一つのケーススタディだけでは判断がつかない。

果たしてヒトは自我を自覚できないと、自分を死人だと思い込むのか? 意識の矛盾とはこのような症候群を生み出すのだろうか? 今後の研究が気になる所だ。

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