生まれ持った遺伝子を変えられる時代。ウイルスによる遺伝子治療を施された難病持ちの男児3人、経過は良好

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Flickr_Caroline Davis2010

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もしあなたの子供が致死率の高い先天性の難治疾患に苦しめられており、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を応用したレンチウイルス遺伝子治療で健康になれると知ったらーーどの親だってその治療法を試したくなるに違いない。今回、X連鎖劣性遺伝病であるウィスコット・アルドリッチ症候群を持つ男児3人に対し、レンチウイルスを改良したものに“感染”させる事で遺伝子治療が施された。30ヶ月経った今でも経過は良好。期待が持てそうだ。

 これまでにも患者本人の血液からステムセルを取り出し、正常な遺伝情報をレトロウイルスに導入したものをステムセルに“感染”させ培養し、患者の体に戻すという遺伝子療法があった。しかし遺伝子療法自体は“成功”すれど、数年経つと再び免疫不全となり、白血病を発症する例も多かった。研究者らはレトロウイルスベクターがDNAの発癌遺伝子を発現させてしまい、癌化を促すものと想定。これを受け、今回開発された新たな技術は、部分的に不活性化させたレンチウイルスベクターで正常な遺伝子を運ぶというものだ。

レンチウイルスベクターはレトロウイルスベクターの特長に加えて、①細胞分裂していない細胞にも効率良く遺伝子導入できる、②導入遺伝子の発現抑制を受けにくく長期に安定した発現が期待できる (宿主ゲノムに組み込まれたレトロウイルスはメチル化等の種々の影響を受けて遺伝子発現が抑制され易いことが知られている。一方レンチウイルスでは、そのような効果が殆どない。)、という点で優れている。阪大学微生物研究所より引用

 この遺伝子治療法が3人の男児に施されて、現在20〜30ヶ月。血液中のウィスコット・アルドリッチ遺伝子は“修復”されており、子供たちは劇的な回復を見せた。これまでこの先天性免疫不全症候群は放っておけば死に至り、臍帯血移植や骨髄移植なくして長くを生きられない難治疾患であったもの。この画期的な治療法により、ドナー不足や拒絶反応などの解決ともなりそうだ。この研究結果はScience Expressに掲載された

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