記憶を取り戻すための脳インプラントが近々登場:アメリカ国防高等研究計画局

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脳へのダメージやトラウマによる記憶喪失、健忘症、または解離性健忘症。戦争で負傷した兵士たちに多く存在するアクセス不可能となってしまった「記憶」を呼び起こすため、とある試みが行われている。オバマ政権は、人間の脳をより理解するため国防高等研究計画局(DARPA)に一億ドルを投資したばかりだが、脳インプラントの開発は彼らの極秘研究の一環であるようだ。

家族の顔を忘れてしまった人々の記憶を取り戻す

戦争により脳損傷を負った兵士たちが家族の名前や顔を思い出す手助けをする。または、高齢による認知症やアルツハイマー病による記憶の喪失をリストアする。戦争での脳トラウマを抱えた兵士たちは推定30万人、そしてアメリカでは認知症やアルツハイマー病による患者は500万人とも言われている。記憶を呼び起こす脳インプラントは多くの人々に可能性をもたらすことになるだろう。

記憶はパターンとコネクションにより成り立っている

脳インプラントは心臓のペースメーカーをヒントに考えられたという。電気刺激を待つばかりの心臓と同様、脳深部刺激により呼び起こされる記憶がある。実際に脳深部刺激はパーキンソン病患者の「ふるえ」やてんかん患者の発作を減少させられるのがわかっており、刺激によるパターンとコネクションが復活すれば、記憶を取り戻すのも不可能ではないという考え方だ。

米ノースカロライナ州ウェイクフォレスト大学のロバート・ハミルトン教授は、マウスや猿を使って海馬(記憶形成に関わる脳の部位)における電気信号を調査。すると青と赤、食物と顔写真ではそれぞれ異なるニューロンが発火していることがわかった。これらのパターンを知ることが脳インプラントによる記憶想起のカギとなる。ハミルトンはこの技術を使った猿の実験で短期記憶を長く継続させることに成功しているが、損傷を受けた人間の脳に応用するには、より詳細な記憶の電気信号パターンを知る必要があるのだという。

 倫理的な問題点

サイエンスの名のもとに、われわれの倫理観が試されることは多い。そもそも記憶というものは人格に多大なる影響を与える。たとえ理由は真っ当なものでも、脳に手を加えるという行為は患者の“自己”を変えてしまうかもしれない。脳インプラントを施すことで家族の記憶が戻っても、それは後に学んだ戦闘テクニックなどの記憶を邪魔する可能性すらある。マインドコントロールやハッキングの危険性もあるだろう。

SFの世界ではお馴染みの心理操作や記憶処理だが、脳インプラントはそんな未来を示唆する最初の一歩となるのではないだろうか。社会に問いかけられているものの1つは、記憶障害のある個人の自己や人格をどれだけ尊重するか。いずれにせよ、DARPAからの詳細発表は数ヶ月中に行われる見通しだ。

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