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35キロ横浜から東京都内まで歩く”リアル版夜のピクニック”に参加してきた!疲労感を上回る達成感は異常

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2004年から始まり、今年で第13回目を迎えた本屋大賞。普段、本を読まない人も注目する文芸賞で、第2回の本屋大賞を受賞した作品に「夜のピクニック」という小説があるのをご存知だろうか。

著者、恩田陸の母校である茨城県立水戸第一高等学校の名物行事”歩く会”をモデルにした小説で、約80kmの道のりを1日かけて目的地に向かって歩き続ける。映画化もされている。

今回、そんな原作を元に東京で開催された「夜のピクニック」に参加し、主催者である佐藤沙耶伽さんに話を聞いてきた。人も、建物も密集する東京で、無謀ともいえるイベントの開催。沙耶伽さんはどのような想いでイベントの開催を決めたのか。

“僕らの歩行祭”で体験した出会いと感動をもう一度

歩道の幅は狭く、人も多く、建物も密集している東京で、大人数で歩こう!と思ったきっかけを聞いた。

--今回なぜこのイベントを開催しようと思ったのですか?

札幌に住んでいた大学4年生の頃、北海道大学の生徒さんが運営する”僕らの歩行祭”で夜のピクニックに参加しました。約75kmの距離を、24時間かけて歩いたのですが、私を含め4人で参加したのに、ゴール出来たのは私と友人1人だけでした。

思い出すことと言えば、後半のほとんどを泣きながら歩いたことと、星空の下、友人2人が救護者に乗せられていくところ。それほど辛かったんです。

それなのにゴールの瞬間は、足の辛さや痛みを忘れるほどの達成感がありました。

星空の下、その日歩くためだけに集まった誰かと語りあったあの夜、ゴールした時の達成感。この出会いと感動をもう一度味わいたいと思って、開催を決めました。

--1番大変だったことを教えてください。

そもそも「どうやって開催すればいいんだろう?」というところからのスタートだったので、やること全てが新鮮でした。正直大変だったという感覚はなく、むしろ面白かったです。私に付き合わされたスタッフの方が大変だったんじゃないかなと。行動的で協力的なスタッフをはじめ、多くの人に支えて頂きました。

夏の開催が一度中止、とにかく「申し訳なかった」

第1回目が開催された11月19日は、冬の寒さも本格的になりつつある、いわば秋と冬の中間の時期だった。しかし本来、第1回目は夏に行われる予定だったが、台風の時期と重なり中止となってしまった。その時の参加表明者数は40人近く。参加者の安全を確保するため、中止はギリギリの判断だった。

Twitter/@yorupic_Tokyo

Twitter/@yorupic_Tokyo

--夏の開催が中止になった時、どんなことを思いましたか?

悔しいとか悲しいとかより、申し訳ないという思いが1番強かったです。私の好きなこと、やりたいことにスタッフや参加者を含め多くの人を付き合わせて、中止だなんて、顔向け出来ないと思いました。

でも、参加予定だった数名の方から電話で「リベンジしてほしい!」との声を頂いたことで、気持ちを切り替えることができました。

「夜のピクニック」東京で歩く道のりは35km

そして11月、やっと第1回目が開催された。東京では初ということで今回の道のりは、原作やモデルになった”歩く会”よりも短い35km。コースは横浜公園からコスモワールドを通過し、東京タワーがある芝公園まで。80kmに比べたら歩けそうな距離に思えてくる。

--今回の距離やコースはどのようにして決めたのですか?

原作に忠実でありたいと思っていたので、当初は80kmで距離を設定していました。スカイツリーを出発して、コスモワールドで折り返し、東京タワーでゴールという形です。

しかしスタッフの1人に、「参加者のハードルをさげ、第1回というリスクを回避するために距離を短くしたらどうか」という提案を受けました。

そこからは、歩く時に何が見たいか、そもそも距離はどうするかなどが議論になりました。

その中で定まった最低条件が、「県を必ずまたぐこと」「目印やメインとなる建造物があること」の2つ。その後、数回、自転車や徒歩でのリハーサルを重ね、今回のコースが出来上がりました。

--どんな人に参加してほしいと思っていましたか?

基本的にはどんな方でも大歓迎です!恩田陸さんが好きな方、「夜のピクニック」という小説・映画が好きな方はもちろん、私みたいに地方出身者で、知り合いや友だちがいない方には出会いのきっかけにもなると思います。私自身、この企画を始めてから知り合いや友だちが増えたなと思っているので。

多摩川越える前に「35kmは無理かも……」

普段から歩くの大好き、冬は駅から1時間かけて歩き家に帰るさくらした。原作も読了済みで、ウキウキしながら初対面の人たち10人と話しつつ歩き始めた。

今回のコース間に設けられた休憩ポイントは3つ。途中、食べ物や飲み物、トイレでコンビニ寄ることは可能だ。

(1)横浜公園〜寺尾の丘公園

コスモワールドからは次の休憩地点まで、トイレを1回挟んだだけでノンストップ22時まで歩き続ける。そして辿り着く第1休憩ポイントは寺尾の丘公園。奥にある階段から上へ登ると、住宅街を見下ろせる場所に出られる。この日は爪のように鋭い三日月が綺麗だった。

(2)寺尾の丘公園〜多摩川

そして多摩川を越え、第2の休憩ポイントに辿り着く。残り15kmと聞かされ「まだ15kmもあるの……」と気が遠くなるが、ここまで来たら途中棄権とかありえない、という気持ちの方が強くなる。止まっていると汗が冷えてとてつもなく寒くなるが、大学4年生という女性参加者は半袖姿。また10代の男性参加者は元気がありあまっているのか、休憩せずに「ちょっとそこらを」と言ってランニングに出かけた。

(3)多摩川〜芝公園

最後の休憩ポイントは戸越公園。すぐ隣に高校がある公園だが、深夜3時も超えているだけあり、シンと静まり返っている。まだ夜が明ける気配はなく、永遠に暗闇なのではないかという気がして少し不安になる。

ここから東京タワーがある芝公園まで、もう休憩ポイントはない。もうすぐ終わると思えば思うだけ辛さが増す。品川駅の前を通過し、東京タワーがチラチラと見えてはいるが、近づいているという実感が得られず、蜃気楼だと思うことにした。

東京タワーに辿り着いた時の達成感たるや

そうして11月20日の朝6時、東京タワー下に到着。35kmの距離、時間にして約10時間の「夜のピクニック」を終えた。そして後日、主催者である沙耶伽さんに話を伺った。

--実際に参加した方の反応はどうでしたか?

「楽しかった」「また参加したい」という声をたくさん頂きました!「次は友人を誘って行きます」と言われた時は、本当に嬉しかったです。開催後、アンケートを取ったのでそこで頂いた意見を参考に、次回以降、より良いものにしていきたいと思っています。

--次回の開催はいつを予定していますか?

来年の春、3、4月あたりを予定しています。さっそく今回の反省と企画会議を兼ねてスタッフで集まっているところです。

--夜のピクニックを知っている方、知らない方へのメッセージをお願いします。

恩田陸さんの小説「夜のピクニック」は、茨城県立水戸第一高等学校の名物行事”歩く会”がモデルとなっています。当イベントもそんな小説・高校を元にスタートしました。今回もそうでしたが、次回もきっと、ただ歩くだけです。

ですが、普通なら出会わなかったかもしれない、そんな誰かとひたすら歩くというのも案外悪くありません。思いもよらない感動と達成感、そして思い出が得られるはずです。

きっかけなんて何でもいい。ただ歩くか歩かないか。色々な人と歩けることを楽しみにしています!

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