作業中の工員、産業用オーブンから出られず280度の低温で焼死

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flickr/ Zoo Noses

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イギリスで、54才の工員が産業用オーブンの中に閉じ込められて焼け死ぬ、という事故が起こった。

11月20日に行なわれた裁判の冒頭陳述で、検察官は、犠牲者であるアラン・カテラルさんがどのような状況で死んで行ったかを、克明に描写した。

修理が終わったオーブンの清掃作業中に

事故が起こったのは、イギリス・チェシャー州にあるカヤック製造会社Pyranha Mouldings Ltdの工場。ここには、プラスチックを融かしてカヤック(スポーツ用のカヌーに似た舟)の船体を成型する「オーブン」がある。オーブン、と言っても大きく、自動車のバンを1.5倍長くした程だ。

事故があった日、そのオーブンは調子が悪くメンテナンス中だった。それが終わった後、犠牲者となってしまうカテラルさんはオーブンの中に入り、あちこちにへばりついたプラスチックのカスをこそぎ落としにかかった。

もしもオーブンにスイッチが入れば、中は280度になる。料理用オーブンの通常温度より高く、焼豚などに焦げ目を付ける温度に近い。

カテラルさんは、もちろん扉を開けて入っていた。誰かがそれに気づいていれば事故は防げたろう。

気づかずにスイッチオン。扉が自動的に閉まり…

その時、オーブンの操作を担当していたのは、同僚のマーク・フランシスさん。彼は、メンテナンスはすべて終わったものと思い、オーブンを稼働させるためにスイッチを入れた。オーブンには扉が2つあるが、フランシスさんがいる操作盤の位置からは、どちらも見えない配置になっていた。

そのオーブンは、省エネのため、スイッチが入ると自動的に扉が閉まる設計になっている。そして、閉まった扉には、ボルト式の鍵が自動的にかかる。内部に非常ベルはない。10分かからないうちに、通常の操業温度である280度になる。

カテラルさんは、重度の火傷とそのショックで死亡した。

 断熱材が叫び声を遮断

閉じ込められたカテラルさんは当然叫んだだろう。だが、熱効率を良くするために断熱材で囲まれたオーブンから、声が漏れることはなかった。断熱材には高い防音性がある。

検死の結果、カテラルさんは280度になる部屋に、少なくとも10分は閉じ込められていたと考えられる。扉の隙間から異常な煙が出て来るまで、周囲にいた誰も気づかなかったという。

バールを使って脱出を試みた形跡

現場検証の結果、オーブンの扉の内側にいくつもの傷跡が見つかった。カテラルさんは、プラスチックをこそぎ落とすためにバール(かなてこ)を持って入っていた。「それを使って脱出を試みたに違いない」と、検察官は裁判で陳述している。

スイッチを押したのは義理の息子

この事故の悲劇性をさらに増しているのは、スイッチを入れたフランシスさんの立場だ。フランシスさんが婚約している相手は、閉じ込められたカテラルさんの娘。つまり彼は、将来の義理の父を殺すスイッチを押してしまったことになる。

事故のあった会社Pyranha Mouldings Ltdは、安全管理が不十分だったという理由で、現在、業務上過失致死罪に問われている。

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