小説を読むと脳が変化 少なくとも数日間は心も体も主人公になりきっていると判明:米大学調査

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flickr_B-Rosen

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誰にでもお気に入りの一冊があるとは思うが、フィクションでもノンフィクションでも、小説は私たちに想像以上の影響を与えていることがわかった。物語には人を刺激し感動させる力があり、それほどのパワーを持つ物は他にないとか。いささか大げさな気もするが、米エモリー大学が物語が脳に与える影響を調べたところ、科学的にこの事実が証明された。

小説を読むと脳内が変化し、その状態は数日間は続くという。「物語は私たちの人生を形作り、その人の人となりを特徴付けることすらある」と語るのは、神経科学者のGregory Berns氏。物語がどの様に脳内に入り込み、どう作用するのか-その謎を探るのが今回の調査の目的である。同氏は同大学のMichael Prietula教授と共に、大学生21人に対し、ロバート・ハリスの『ポンペイの四日間』を読んでもらう実験を行った。古代イタリアで実際に起きた火山噴火を題材としたストーリーで、この本を選んだのは断固とした語り口とスリルに満ちた筋が理由だったそう。

被験者はまず安静時の基礎線を測るために5日間fMRIで脳をスキャンした。続いて9日間、毎夜30ページずつ同書を読み進めた。翌朝、昨晩読んだ部分に関するクイズに答える彼らの脳内をfMRIでスキャン。9日間の実験期間が過ぎると、再び5日間毎朝被験者の脳をスキャンしたという。

その結果、被験者は実際に本を読んでいる時には脳をスキャンしていなかったものの、その後も彼らの脳は接続性が高い状態が続き、筋肉が記憶している状態と言おうか、同氏らはこの現象を“シャドーアクティビティー”と呼んでいる。脳の中心溝部分で接続性が高まると感覚運動スキルに影響する。そのため同氏らは「スリルのある物語を読んだだけで、人は主人公と同じような体験をしているような気になる」と結論付けている。

良くできた物語ほど読者を感情移入させるというが、こうなると生物学的見地から言っても、読者は主人公になりきっているとか。ではこの様な状態はどれ位続くのか?今回の調査では数日間経過を観察したに過ぎなかったが、お気に入りの本であればその効果、影響はより大きく、長く続く可能性があるという。“主人公になりきる”というまさに読書の醍醐味を存分に楽しめるとわかり、俄然今後の読書に力が入りそうな筆者である。

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