9月6日に合格発表を行った平成28年度司法試験で、ひときわ腕っぷしの強い男が合格した。
よみめいとさん(28)=横浜市出身=は、屈強な肉体にゲームやアニメのキャラクターの衣装をまとうコスプレ集団「肉体造形部」の一員。Twitter(@yomimate)でも、その勇姿を発信している。
今回、みごと趣味と学業を両立し、法曹界への入り口に立った。
「弁護士になっても筋トレもコスプレも続けたい」と語る文武両道の体現者に、一発合格までの道のりを聞いた。
きっかけは裁判ゲームの主人公、ゲーム好き高じコスプレに
よみめいとさんが法曹界を志したきっかけは、弁護士役となって被害者の無罪を証明するゲーム「逆転裁判」だ。
中学生の頃からハマり、主人公の弁護士・成歩堂龍一(なるほどう・りゅういち)が法廷で戦う姿に、「弁護士って面白そうだな」と感じたという。

ゲーム「逆転裁判」のパッケージ 手前の紺のスーツが成歩堂龍一
逆転裁判こそ日本のゲームだが、よみめいとさんは主にPCでオンラインゲームや海外ゲームをプレーする。
大学2年の冬に初めて挑戦したコスプレは、全身をアーマーで覆った海外ゲームの兵士を模した姿だった。
「あの時、なんでコスプレしようと思ったんだけ」と話すが、以降、主要なイベントに行っては変身するようになった。
衣装や小道具、ウィッグはみずから工作、裁縫をして手作りしている。
「写真撮影が好きな人もいますが、自分はイベント参加がいちばん。(コスプレのモデルとなった)キャラクターのファンが自分を見つけてうれしそうに近寄ってきたり、話しかけてもらえる生の反応がうれしいんです」
コスプレのため法科大学院で体重20キロ増
「お前はいったい何になりたいんだ(笑)」
徐々にたくましくなる体つきに、法科大学院の教授陣からよく冗談交じりに言われたセリフだ。

コスプレ姿 提供:よみめいとさん
筋トレを始めたのは院への進学直前の冬。
イベント会場で現在所属する肉体造形部のメンバーと知り合い、「女性が多いコスプレイヤーの中で、せっかく男がやるなら身体を生かしたコスプレをしよう」と誘われた。
それまでスポーツ経験はなかったが、週2、3回程度ジムに通い、ガリガリだったという肉体を改造。
同部のメンバーとも一緒にご飯に行ったり、トレーニングに励んだりしたという。
「昔は全然脱いでいなかったんですけどね」と笑う。
最近はイベントを特集したサイトにコスプレ姿を掲載され、友人たちから「お前みたいなのがいるんだが」と言われることも増えたそうだ。

コスプレ姿 提供:よみめいとさん
東大進むも燃え尽き症候群に
よみめいとさんが学んだ神奈川県内の中高一貫校は、毎年学年の3分の1が東京大学に進むという進学校だった。
「軽い気持ちで」東大の文科一類(法学部に進む区分)に入学したという。
だが、「受験で燃え尽きて、ニートに近い生活をしていました」と振り返る。

東京大学 出典:Fotolia
大好きなゲームとコスプレを楽しむうちに、気が付けば大学生として6年目を迎えていた。
「いい加減、卒業しなきゃなと思って進路を考えた時に、どうしても残った気持ちが法曹になりたいでした。ここでやらなきゃ一生後悔するだろうなと」
一念発起し、法科大学院を受験勉強を開始。東大法学部を卒業して1年後、首都大学東京法科大学院に入学した。
「小規模なので勉強に集中できると考えました。一から勉強をし直すつもりで(法学部出身者向けの)2年コースではなく、(法学部以外の人向けの)3年コースを選びました」
すでに官僚や会社員としてバリバリ働く大学の同期たちを見て、焦った時もある。
しかし、「自分にうそをつきたくない」と気持ちをごまかさず、奨学金をもらいながら勉学を続けた。
「無駄な努力はしない」
司法試験に向け朝8時半に登校、授業を受けつつ院生室で勉強し、夜9時半に帰宅する生活を続けた。
時間割が空いている日は、午前中にジムに通って筋トレ。コスプレの準備は、イベントがちょうど夏休みの時期だったことも幸いし、直前に一気に仕上げていたという。
「文武両道は自然にできましたね、体を動かすと頭も回りましたから」と語る。
そんなよみめいとさんの信条は「無駄な努力をしない」だ。
「努力すること自体が評価されるけど、司法試験みたいに最後は結果を出さなきゃいけない。筋トレも司法試験も、ゴールから逆算してどういう努力が必要か考えるべき。必要な努力をすれば結果は出ます」

「無駄な努力はしない」と語るよみめいとさん
12月からは1年間に及ぶ司法修習に入る。
埼玉県和光市で基礎を学んだのち、来年1月から実地修習として全国の地裁に配属される。
6つまで選べる希望地は、「近くに設備が整ったジムがあるか」を調べて決めたという。
「ジムで希望地を決めた司法修習生なんて自分だけでしょう」とはにかんだ。
東京ゲームショウではついに成歩堂龍一に
9月18日(日)には、現在開催中の東京ゲームショウ2016の会場で憧れの成歩堂龍一に変身する予定だ。
5月の司法試験後、結果が分かるまで精神的につらかったというが、晴れてコスプレを楽しめる。
合格発表後、肉体造形部の仲間からサプライズで高級ボールペンを贈られた。名前入りのそのペンを、司法修習で愛用するつもりだ。

一度は堕落した学生時代から、まさに逆転劇を見せて難関試験を突破したよみめいとさん。
「諦めないで良かったと思います。両親にはすごく迷惑を掛けた。学部に6年、1年ブランクを挟んで院3年、これ以上時間を無駄にできなかったので一安心でした」
合格を受け、今は就職活動にも取り組む。
成歩堂は刑事案件を扱う弁護士だが、「確かに法廷で戦うのは弁護士の花形だと思います。でも、弁護士は色々やれることがあるので、うまいこと自分が向いているものを見つけたい」と力強く語った。