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日本一の町内広報誌の編集者は独学だった!三芳町のやり手職員に迫る

拡張現実を使った広報みよしの表紙

拡張現実を使った広報みよしの表紙

有名テレビ雑誌のように、表紙を飾るのはイモを右手にはにかむ女性タレント。

スマートフォンをかざすと、AR機能(拡張現実)により写真の女性が手を振り始める。

どこのタウン誌かと思いきや、実は“お堅い”イメージの行政が出す正式な広報誌だ。

拡張現実を使った広報みよしの表紙

拡張現実を使った広報みよしの表紙

埼玉県三芳町(みよしまち)が毎月発行する「広報みよし」。

この凝った広報誌の取材・編集を担うのが、町秘書広報室の佐久間智之さんだ。

2015年には自治体広報誌を対象にした全国広報コンクールで、内閣総理大臣賞に輝いた。

今年から新たに庁内報もつくり始めた「日本一の広報さん」の熱意に迫った。

特集で広報の可能性実感

三芳町は東京都に程近く、ベッドタウンであると同時に特産の「川越イモ」など近郊農業が盛んである。

車を運転する人は、関越道・三芳パーキングエリア(PA)に馴染みがあるだろう。

「原付で端から端まで行けるほどコンパクト」(佐久間さん)という町に、約38,000人が暮らす。

佐久間さんは専任者として、広報誌の制作をほぼ一人で担う。

毎号特集を組み、地元の飲食店や消防団、頑張っている住民を取材。

全32ページを印刷を除き10日間ほどで仕上げる。

かつて町内でホタルが見える場所について紹介したところ、例年700人ほどだったイベントに約1300人が集まった。

認知症の男性を特集した際には大きな反響を呼び、介護する男性の妻から感謝の言葉をもらったという。

広報誌が町の役に立つと実感した瞬間だ。

写真も文章も独学で

2011年4月から広報を担当し5年目。

当時、新たに就任した林伊佐雄町長が情報発信の強化を掲げ、広報担当者を庁内公募。そこに自ら手を挙げた。

広報みよしの一ページ

広報みよしの一ページ

自身は東京都板橋区の出身だが、「大きい街より、小さい街のほうが住民が近い」と同町に入庁した。

各種SNSに公式アカウントを開設し、広報大使に元モーニング娘。の吉澤ひとみさんを起用するなど次々に新しいことに取り組んだ。

広報誌も内製にし、編集ソフトを駆使してそれまで経験がなかった写真撮影や紙面構成の技術を独学で身に付けたという。

特に写真にはこだわっており、いくつかレンズを使い分けて印象的な1枚を切り取る。

「写真はいちばん読む人の心を動かすと思っています。自分の中では『写心』と言っています」

広報みよしの紙面

広報みよしの紙面

行政情報も読みやすく

町条例で掲載を義務付けられてる行政情報にも工夫を凝らす。

がん検診のお知らせなど実際の写真やピクトグラムを使い、分かりやすく表現する。

分かりやすい図解を心がけた検診案内

分かりやすさを心がけた検診案内のイラスト

また、可読性を高めるためにUDフォント(ユニバーサルデザイン・フォント)を導入。

「お年寄りにも分かりやすい、バリアフリーの広報誌」を目指し、改良を重ねている。

全国初の取り組みも

今年8月からは役場内のコミュニ―ケーションを活性化しようと、新たに「庁内報みよし」の制作を始めた。

年4回発行し、冊子版を各課に配布するほか、職員は庁内ネットワーク上で閲覧できる。

肝となるのは、空いたスペースを広告に充てる点だ。

三芳町は県内でも数少ない地方交付税不交付団体の一つだが、財政状況は決して芳しくなく、広報予算も限られているという。

掲載料により、「1円でも収入源を自分たちでつくっていく」(佐久間さん)と意気込む。

庁内報を手にする三芳町職員

庁内報を手にする三芳町職員

同町によると、同様の試みは全国初。実際に11月から広告掲載を開始した。

自治体支援サービスを展開する株式会社ホープ(本社・福岡市)の協力を得ている。

住民自身が情報発信をできるように

「広報みよし」が日本一になり、全国から冊子の取り寄せ希望も増えたという。

過去2年分のバックナンバーは、町公式サイトで読める(PDF形式)。

佐久間さん

佐久間さん

「小さな自治体ですが、紹介したいことがいっぱいある。ネタ探しには困りません」と明るく語る佐久間さん。

「住民が主体となり、住民自身が情報を発信できるようにしたい」とさらなる高みを目指し、きょうもカメラを手に三芳町を駆け回っている。

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