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なぜ地方の大学生が地方を離れるのか?第2回:東京は未来志向、地方は過去志向?

座談会15

全国で「地方創生」が声高に叫ばれる一方、毎年数万人の地方学生が首都圏で就職する。

上京する彼らは多額の交通費と滞在費を掛けて、スマートフォンで地図と就職情報サイトから届く通知を確認しながら就活に励む。

本連載は、東京で就職を考える学生たちの座談会を通して、現代の若者が地方と東京をどのように比べているのか明らかにしたい。

座談会2

集まったのは北海道、秋田、岩手、愛知の4道県出身の5人。

5人は地方学生の就活を支援する(株)地方のミカタ(新宿区)でインターンをしながら、シェアハウスで都内に長期滞在した経験を持つ。

なぜ東京に関心を持ったのかを探った1回目では、学生たちが地方の現状に閉塞感を抱いていることが分かった。

【第1回:なぜ地方の大学生が地方を離れるのか?

【最終回:若者にとって地方はいいところ?】

2回目は、自分が感じた地方の良いところ、悪いところについて。アルバイトの話では地方の現実が垣間見えた。

※学生の名前はすべて仮名です。

保守的で挑戦心に欠けている

筆者:3番目の質問。皆さんの思う地方の良いところ、悪いところを教えてください。思いついた方からお願いします。

みおりさん3

みおり:うーんと、悪い?か分からないんですけど、栃木で2カ月、出版社でインターンしたときに感じたのは、すごく保守的というか挑戦心に欠けるなと思ったんです。

県内では大きめの企業なんですけど、なんだろう、上の立場にあぐらをかいている感が嫌だなあと。地方という括りじゃないかもしれないけど。

地元の岩手を考えても、これを成し遂げたいからこういう成長しようって働いているという人がいなかったなって。

いいところとしては、親や友達がいるから単純にストレスは感じにくいと思います。

男女なく仕事能力で見てもらえる

りなさん3

りな:求められるものが地方と東京だと全然違うと思います。

地方だとゆっくり成長していく、コツコツやっていくことが求められる。

突出してできるよりも、みんなと合わせていくことが大事。それが向いている人にはいいと思います。

私はもっと早く成長したいと思っていたので、その環境は合わないなと。

筆者:長くやる人がいいという感じですか。

りな:それもそうだし、上をちゃんと持ち上げるというか、立てられる人というか。

みんな:ああ~。(うなずく)

りな:あと、愛知だと男女で求められるものがまた違ってくるんです。

東京の良いところは、女性も男性も関係なく仕事ができる人、できない人で見てもらえる。

仕事をするうえで、とてもいい刺激になるなと思います。

筆者:なるほど。

地方は波風立てない人材重視

つーちゃん3

つーちゃん:この前、弘前でなぜ若者が東京に流れていくのかって話し合いがあった時、東京の商工会議所の人と話したんです。

その人が地方の人って今までやってきたこととか、その人が会社に入ってから波風立てない人材かってことに着目してるんじゃないかって指摘してました。

みんな:うんうん。

つーちゃん:あまりやりたいこととか夢とかを重視してみているわけじゃないんだろうなって。安定志向の風が流れているなと。

地方のいいところは、特色ある仕事というか、すごく独特な育ち方をした仕事があるところ。

弘前はリンゴが強いでしょう。リンゴ農家が税収に占める割合もすごいみたいな話も聞いて。

リンゴ産業が発達しているように、地域で特化したとがった産業がある所は、やりたいこととマッチしたら面白いだろうなって。

地方の人は現在と過去を見る

ゆうすけ

筆者:ゆうすけさんはどう?

ゆうすけ:はい、2つあります。

まず時間の観点で考えると、地方のいいところは、すごくゆったりしていてそれはそれでいいなと。とてもゆとりがある。

都会は良くも悪くも、すごく時間通り。きっちりしています。電車も分単位で何本も来るし、状況に合わせて使い分けられる。

使いこなせば、なんでもできる環境が整っているという点はあります。

それと、これは僕の完全な主観ですが……東京の人は未来を考える人が多いけど、地方の人って現在と過去を見ている人が多いのかなって感じます。

筆者:確かにそうかもしれませんね。

ゆうすけ:地方は昔どうやったかを重視して、東京は根拠がなくても、こういうことしたい!という人が多いなって気がします。

同じ仕事なのに違う賃金

筆者:どうでしょう、ふだんの生活でも地方で良かった悪かったことはありますか?

さとみさん

さとみ:朝っぱらから混雑した電車に乗らなくていいです。

みんな:(笑)

筆者:確かに満員電車はつらいですね(笑)

さとみ:私は青森県庁が若い人向けにUターン、Iターンで戻って来ようっていう講座を開いているんですが、その講座に参加しませんかって募集があって。

それに加わって地域の社会人の人とか、東京からも講師で大手情報サイトのトップの人が来て話してくれました。

そういう、普通の学生生活だったら関わらないような人と触れ合える機会があったのは青森にいたおかげだなって思っています。

筆者:確かに人間関係の密度を濃くできるのは、貴重な経験かもしれませんね。

例として私の経験を話すと、新潟で大学生をしていた時は、東京だと人気のテレビ局のアルバイトが、みんなのんびりしているせいか全然人気がなかったんです。

面接も「やってくれるだけでありがたい」で採用されて、そこは地方で良かったなと思ったことでした。

つーちゃん:倍率は低いけど、賃金が……(苦笑)

座談会13

筆者:みんなアルバイトはしてますか?

さとみ:あたしは全国チェーンの寿司店で。

筆者:やっぱり賃金は低い…?

さとみ:いや、でも青森の中ではいい方です。800円!

つーちゃん:ああ、高いね!

さとみ:高いぞ~、青森の中では(笑)

つーちゃん:俺なんか(青森県の)最低賃金だよ。720円。

りな:それはやばいなぁ。

さとみ:最近上がって、この前まで695円だったかな。

みおり:うそぉ……!

座談会11

厚生労働省によると、2016年12月現在の地域別最低賃金は青森、秋田、岩手県が716円、愛知845円、東京932円である。

ゆうすけ:東京と2倍くらい違うね。

つーちゃん:同じラーメンチェーン店なのに、時給が倍違ったこともあったもん。

さとみ:それ悲しいよね。同じことしてるのにってなるよね。

りな:あたしは家電量販店だったんですけど、1100円でした。

みんな:いいなぁー!

つーちゃん:うらやましい!

りな:(時給が)全国一律だったんです。

地方学生2

つーちゃん:本当はそれがいいよね。でも、1000円越えるとブラックバイトじゃないかって疑っちゃう。

さとみ:1000円越えってなると、弘前だとスナックとかしかない。

みおり:1000円は深夜だったらありましたよ。

留学のために(宇都宮の)居酒屋でバイトしてたんですけど、普段は900円とか950円。

深夜シフトに入って『1000円越えた、よし!』みたいな。

筆者:1000円越えると、稼げるバイトだなと感じますか?

みんな:うんうん。

最低賃金ににじむ悲観

今回の話し合いに見え隠れするのは、地方学生たちが地方で働くことに多少なりとも悲観的であることだ。

セミナーなど貴重な機会を得やすい一方、アルバイトやインターンで東京の労働との違いを実感しているようだ。

特にアルバイトの時給格差について、筆者も予想外の盛り上がりを見せた。

よく「地方は物価が安いから」と言われるが、消費者物価指数に基づくと、決して低い収入に見合うほど物価が安いわけではないことが分かっている。

最終回となる第3回は、いよいよ地方創生について意見を交わす。

「地方で働く人を見ていると、残らない理由が分かる」「東京に来たら消費しか考えていない自分がいた」など、冷静に社会人や自分を観察した発言が飛び出す。

はたして、みんなの議論はいったいどこに落ち着くのだろうか。

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