今まで出した赤字は5億円以上!蛇口メーカー「カクダイ」がふざけた商品を作り続ける理由とは?

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カクダイ公式ページ

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新商品を開発して儲けたい…これが正常な経営者の発想ではないだろうか?

しかし、利益度外視で「Da Reya」というブランドの変な蛇口を作り続けるカクダイというメーカーが大阪にある。

2015年の12月、Twitterにカクダイのカタログの一部が掲載されると、反響が反響を呼び、2万以上のリツイートを記録した。

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公式ページの「Da Reya」のコーナーを見ても、どの蛇口も売る気が微塵も感じられず、ふざけたものばかり。

「誰や!ホースの先踏んでんのん?」「誰や!さかさまつけたん?」など正直なところ誰が買うのか想像がつかない。

カクダイはなぜこんなふざけた蛇口を作り続けるのだろうか?そもそもなんでこんな蛇口を販売しているのだろうか?気になったのでカクダイの多田修三副社長にいろいろ話を聞いてみることにした。

「トータルで5億円以上の赤字です」

これらの蛇口が「儲かっているのか」という質問をぶつけてみると「製造原価や人件費などトータルで5億円以上赤字が出ております」との回答。

中には1千万円弱の設備投資を行い、年間数十個しか売れない製品を作ることもあるそうだ。

面白い蛇口を作っても、ヒットすればその商品はすぐに販売中止になるという。この会社、意味が分からない。

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欧州の壁は越えられない

赤字でもこういった蛇口を作ることには理由がある。5年ほど前から日本のポップカルチャーが世界的にヒットしており、この現象は「クールジャパン」と名付けられ、各地でブームが続いている。

カクダイの蛇口開発者もこの現象に影響を受けた一人で「世界の人がうなるデザイン・性能・機能の日本らしい蛇口を作りたい!」という思いを抱き、新たな蛇口を作るプロジェクトがスタートした。

しかし、いざ開発を始めると、今まで欧米の製品に慣れ親しんできた開発者たちは、どんなに新しいデザインを考えても欧州っぽいデザインが浮かんでしまったという。

どこかで欧米の生活スタイルを真似てしまっている自分たちの製品に、他ならぬ自分たちが失望してしまい、このプロジェクトは頓挫しかけたそうだ。

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「負け」を認めることからの第一歩

考えれば考えるほど欧州製品が浮かんでしまう状況下で出した結論が「我々日本人が、欧州人が作る以上に欧州らしいデザインの洗練された蛇口を作ることはできない」ということ。

素直に欧州デザインへの負けを認め、「次世代に託したデザインを作る」というコンセプトに変更し、20年後のデザイナーやエンジニアである子供たちが興味を持つ蛇口を作ることにしたという。

「どうしてこんな形になったんだろう?」「いつからこんな形なのか?」「どんな仕組みなのか?」と子供たちが興味を持ち「これはどうなっているの?」と大人に問いかけるようなデザインの蛇口を目指したそうだ。

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アイディアだけで蛇口は作れない

時には開発段階で壁にぶつかることもある。いくら面白いデザインの蛇口を思いついても、それを作り上げる技術がなければ商品化することはできない。

思いつきで蛇口を作るため、新たな技術の習得が必要になるケースは多々あったそうだ。

しかし、開発者たちはそういった過程こそがイノベーションであり、自分たちの製品の技術力を高めるということに気づき、ますます蛇口作りに熱中していった。

今まで作った蛇口の中で、最も苦労したものが下記の細長い蛇口「びよ~ん」だという。

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不可能と言われた蛇口が完成

カクダイは今まで数々の蛇口を作り上げてきたが、中でも思い入れが強いのがこの蛇口。最も細い部分で太さ5mm、さらに水が通る中空部を持ち、左右が非対称というエキセントリックなデザインに仕上がっている。

この蛇口は、社内でもほとんどの人間が完成しないと信じていたそうだが、この蛇口を完成させたのは日本人ではなくカクダイのフィリピン工場に勤務する現地人たちだった。

彼らは図のように「反対側で掃除機を吸いながら、溶かした金属を流し込む」という日本人が思いもよらない方法で蛇口を完成させた。

カクダイ

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現在は安全上の観点からこの方法は採用されていないが、こういった過程の中で多くのノウハウや新技術を手に入れたという。

例えばびよ~んを作る際に編み出した技術やノウハウは、新たな蛇口を作る際に大いに役に立ったそうだ。

カクダイ

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変な蛇口を作るためのノウハウや新技術をを手に入れても、直接の利益には結びつかない。

しかし、こういった製品を見て子供が喜んだり、新たな蛇口作りのノウハウが手に入れられることはカクダイにとって「有形無形の資産」であり、将来への投資と考えているようだ。

 20年後、世界一の蛇口屋に

今では変な蛇口を作ることで様々なノウハウが蓄積し「欧州製品に負けていない」と自負できるレベルにまで技術力が上がったそうだ。今後も技術力を高めていくために、遊び心にあふれた蛇口を作り続けていくという。

最後にインタビューに答えてくれた副社長に「あなたにとって蛇口とは?」と直球の質問をぶつけてみた。

帰ってきた回答は「私にとって蛇口は第二の伴侶です」とのことだった。作り手が蛇口にかける情熱、尋常ではない。

カクダイ

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株式会社カクダイ・KAKUDAI MFG. CO., LTD

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