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サッポロビールの「極ZERO」問題、国税局の判断の元になったのは?

国税庁

県田勢

約115億円の返還申請

国内ビール会社の大手、サッポロビールでは、「極ZERO」をめぐって、追加納税した約115億円を返還するよう国税局に申請していたことが分かった。

今回の問題は、サッポロビールが2013年6月から発売していた「極ZERO」のビール種類が根底にある。同社では、税率が安い発泡性のあるリキュールとして発売、価格の安さに加えて、プリン体や糖質がゼロであることをアピールしたこともあり、半年で約300万ケース(1ケース:大ビン20本)を超える大ヒットとなった。

しかし2014年に入り、国税局から製造方法の情報提供の要請があったため、同社では次の対応を行った。

1、行政への対応
2、自主的な検証作業
3、旧商品の販売終了(2014年5月出荷分まで)
4、発泡酒として発売開始(2014年7月から)
5、修正申告と追加納税(合計約116億円)
6、追加納税に伴う特別損失の計上

その結果、製造方法に問題がなかったとして、26日付けで追加納税分の返還を申請したとのこと。

どうやって判定?

ビールに限らず、酒税には細かな区分が存在する。気になるのは、それらをどうやって判定しているかだ。

昨年7月に財務省内で行われた会議の議事録に、独立行政法人酒類総合研究所の後藤奈美研究企画知財部門長(当時)からの次のような発言あった。

(前略)これは、(イ)A「酒類の品目判定に関する研究」です。酒類は、品目によって酒税の税率が異なりますので、これはまさに税務行政に直結した重要な分析手法の開発と言えます。
まず目的1「ビール系酒類の品目判定方法の開発」では、25年度は、ⅰとしまして、昨年までに作成された麦芽使用比率の推定式につきまして、多種類の市販品の分析を行ったところ、まだ精度向上の余地があることが明らかになりました。そこで、各指標ピークについて、製麦中、醸造工程中の濃度変化や市販麦芽の濃度のばらつきを調べ、より適した40ピークを選ぶことで、右のグラフにございますように、キャリブレーション及びバリデーション精度の高い回帰式を作成することができました。
ⅱにつきましては、いわゆる第三のビールに使用が認められているペプチド系の原料は種類が限られておりますので、これらの使用不使用を判別するため、昨年に引き続き特異的な成分を探索し、環状ペプチド7種類を同定することができました。
ビール系酒類の品目判定については一定の成果が得られたと考えておりまして(後略)

要はビールの区分判定の研究で、麦芽などの原料の推定について、一定の成果が得られたとのこと。

それらに対して、委員の1人である中西載慶東京農業大学名誉教授から質問があがっている。

中西臨時委員 ビールのキャリブレーションのカーブ、すごくきれいに精度が上がっているんですけれども、このビールは発酵法が違ったり、例えば上面発酵と下面発酵と違ったりしてもきれいになるものですか。

後藤研究企画知財部門長 今回使用しておりますビールは下面発酵のものになると思います。あまり特殊な醸造方法になりますと若干難しい部分はございますけれども、日本で通常に製造されておりますビールや発泡酒や第三のビールと言われるような比較的たくさんの量をつくられているようなものについてはほぼこれで推定ができるものと考えております。

ビールの上面発酵と下面発酵は下記サイトを見てもらうとして、日本で発売されているビールのほとんどが下面発酵だ。

要するに酒類総合研究所は「これでバッチリ区別できる」と判断し、その結果に従って国税局(財務省)では「サッポロさん、おかしいんじゃないの?」と指摘したのではないだろうか。

結果はどうなる?

こうした会議の資料も完全に公開されておらず、サッポロビールでも詳しい製法は社内秘となっているため、どちらが正しいのかは不明だ。また先の議事録は1つの原因にすぎず、他の方面から、今回の問題につながった可能性もある。

しかしサッポロビール側がダメ元で返還申請をしたとは考えにくく、よほどの見落としがない限り、国税局が不利なのではないだろうか。

ただし返還するにあたって、そのまま「返しますよ」では終わらない。その期間に応じて金利を付けて返すことになる可能性が大きい。もちろん元は税金だ。

財務省「独立行政法人評価委員会 酒類総合研究所分科会 研究WG(平成26年7月28日)議事録」

サントリー「上面発酵、下面発酵とはなんですか?」

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