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子供を通わせたい保育園が見つからず、鹿児島で自ら園を設立した女性に聞く起業家精神

提供:福島さん

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「保育園落ちた日本死ね!!!」と題したブログが話題になった2016年から、日本の保活状況の苛酷さはあまり変わっておらず、2019年4月12日に厚生労働省が発表した待機児童数はおよそ4万7,000人だった。

「子どもを保育園に預けられず、職場復帰ができない」「子どもを預けたいと思えるような保育園が見つからない」など、働きたい親にとって不満は募るばかりだ。

そんな中、自分で納得のいく保育園を作ろう!と自ら立ち上がり、実際に保育園を設立したというパワフルな女性の登場が相次いでいる。

今回はそのうちの1人、株式会社RaJAの代表・福島紗矢香さりいさんを取材した。

豊かな国際性を身に着けるために

福島さんは2018年4月1日、鹿児島市内に企業主導型保育園「ラジャ・インターナショナル保育園」を設立した。

園のコンセプトは「子どもたちに”自分の言葉”で伝えるよろこびを」。

同園では、価値観や文化の違いを受け入れられる真の国際性を育むべく、子どもたちが日本語以外のネイティブスピーカーとほぼ毎日触れ合う機会を提供している。

希望者には、親子留学や語学留学の機会も得られるという徹底ぶりだ。

さらに、「保育園に持参する荷物を減らしたい」という母としての想いから、子どもたちの持ち物は水筒と連絡帳のみ。着替えなどはすべて園が用意しているという。

営業時間は朝7時から夜8時まで。土日祝日も営業し、様々なかたちで働く親をサポートしている。

自社職員の子連れ出勤を実現したり、地元地域の学生インターン受け入れなどを通して保育という仕事の本当の奥深さを伝えたりと、独自の取り組みを盛んに行っているのが印象的だ。

提供:福島さん

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第2子妊娠中に設立を決意

福島さんは、14歳で初めて単身渡米し、高校生活と大学生活は米・オレゴン州で過ごした。

30歳の時に現在の夫と結婚して熊本県で長女を出産したが、31歳の時に熊本地震で被災、鹿児島県へ移住した。

その後、株式会社RaJAを創業し、留学プランの提供と帰国までを支援する「留学サポート鹿児島」を開業する。

33歳で長男を妊娠中、保育園をつくることを決意。出産前後を理想の保育園を目指して駆け抜けたという。

2018年4月にラジャ・インターナショナル保育園が開園日を迎えた。

私が保育園を作る!!と思い立ったのは、開園わずか7カ月前の2017年9月のことでした。

当時、私は12月に出産予定の長男を妊娠中で、だいぶお腹も出ている状態でした。2歳の長女とお腹の子、このふたりへのプレゼントだという想いだけで突っ走りました。

提供:福島さん

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──保育園を作ろうと思ったきっかけは何でしょうか?

保育園設立の大きなきっかけは2つ。

1つめは、日本一の児童数を数える地域に住んでいたため、待機児童数も300名ほどおり、保育園の利用が極めて困難だったこと。

2つめは、自分が親として理想とする保育カリキュラムを行っている園を見つけ出すことができなかったことです。

「ことばが話せない」月齢の子どもたちに特化

──保育園のこだわりを教えてください。

自分自身のことを振り返ったとき、アメリカ人の運営している幼稚園へ通っていたため英語に触れる機会が多く、それが14歳からの留学で花開き、糧(言語力の習得)となったことが生きていると考えています。

幼少期に聞いた歌がふと大人になってからも口ずさめるように、「人は聞いたことのある音を忘れない」という個人的に導き出した理屈を当てはめています。

子どもたちが日常の延長上に日本語以外も聞こえ、多国籍のお友達や先生たちがいる「自宅では実現しにくい世界観」の中で過ごすことができるよう、環境づくりを行い、自然と言語だけではない国際感覚も身に付けばという想いを持っています。

こだわりは、0~2歳児という「ことばが話せない」月齢の子どもたちに特化して保育を行っていることです。

この「ことばが話せない」というのがキーポイントです。子どもは3歳くらいになると、割と流暢に話せるようになりますが、基本的にこの3年間で「聞いたことのあること」しか発しません。

例えば、赤ちゃん言葉で話しかけてきたご家庭の子は「赤ちゃん言葉発音」になり、少し乱暴な言葉遣いの場合も、そうなります。

だからこそ、条件的にいっぱい言葉を聞いて、蓄積する0~2歳までに「美しい言葉を美しい発音で聞かせたい」と考えました。

提供:福島さん

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有資格者との関係づくり

──保育園開業後に最も困難だったことは何ですか?

困難に感じたのは、対外的なことよりも社内のことでした。

1つめは、社員(保育士など有資格者)に「企業主導型保育」という新しい保育の概念や在り方を落とし込むこと。この保育園は、弊社の中にある「留学部門」と何ら変わりない「保育部門」であり、スタッフがこれまでのキャリアの中で経験してきた、ひとつの独立した園とは根本も基準も異なります。

彼らは「これまで通り」ではいかないことへの戸惑いと不安があったと思いますし、プロとしてどのようにこれから園を作り上げていってくれるのかを期待する前に、まずは彼らに、新しい概念を理解してもらい、基本を固めることが必要だと考えました。

さらに、一般企業に就職する意味として、年齢やキャリアに関わらず、「志を形にする(発信する)ことが、各々の評価に繋がる」ということ、それが賞与や昇給、地位向上のキャリア形成に繋がっていく、ある意味「実力社会」であることも、正しく理解してもう必要がありました。

そのことに開園後に気づいて取り組みましたが、なかなか根気の要る作業でした。しかし、課題にぶち当たってはみんなで考え、ひとつひとつ丁寧に関係各所に確認し、理解を深めていくことができました。

提供:福島さん

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──保育士の資格・経験がないことが壁になったことはありますか?

ありません。その理由は簡単で、私は一経営者なので、現場は現場のプロに任せるというのが基本のスタンスであるからです。有資格者に学ぶことはあっても、壁やトラブルに感じることは一切ありません。

しいて言えば、「保護者」と「プロの保育者」の違いを感じたことがあります。

実際に現場に触れてみて、あくまでも良い意味で“「保育のスキル」だけをかいつまんでみてみると、実際に2児の母である私よりもはるかに幅広い知見と技術で子どものことを見てくれている”ということに、ただただ感心しっぱなしでした。

さらには、保育士になった方々に社会的地位を上げるためのお手伝いも「社長として」絶対に欠かせない課題であると認識しています。

世界に誇れる園を目指して

起業にあたり、ご主人は、妊娠中である福島さんの体調を案じ、家事や料理などをサポートする、親身に相談に乗ってくれるなどして身体的にも精神的にも大きな支えとなってくれたという。

熱い思いと確かな覚悟で実現した理想の保育園設立。

今後の展望は、「世界のラジャ・インターナショナル保育園!」だという。

利用する子どもたちが遊びながら学ぶというだけでなく、働くママの輝く姿を魅せたいです。

「こんな大人にはやくなりたい」と子どもが憧れることによって、活力になれるような素敵な大人がたくさんいる場所になるようにと夢を膨らませています。

提供:福島さん

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──最後に、起業を考えている人へのメッセージをお願いします

私が会社の社長になりたいと思い描いたのは、16歳の時でした。その頃の理由は「人の言うことをききたくないから」(笑)

あの頃は社長になることの本当の意味やそれに付随する責任とか、そういう難しいことは分からなかったですし、深く考えてもみませんでした。

今、社長になって思うことは「楽しい!」ということ。

働かなければ給料はマイナスだけど、頑張れば上限はないのです。それを、自分の考えや信念についてきてくれる素晴らしい家族(従業員)と分け合いながら、みんなで豊かになることが喜びです。

もちろん、これを継続しつつ、さらに飛躍するということには、様々なリスクや責任も大きくなっていきます。このストレスを原動力に変換し、仲間のために頑張ろうという覚悟ができる人であれば、必ず成功します。

物事は、やるかやらないか。マイナスな出来事にも意味を無理やりにでも見出し、糧にできる強さを身に着け、これから起業する皆さん、ともに肩を並べて踏ん張りましょう!

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Text by Ericolatte

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