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母親が1人で育児を背負う状況を変えたい─2児のママが保育園設立に踏み切ったわけ

提供:高野さん

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子育てをしながら働く母親が珍しくない一方で、都市部では待機児童問題がなかなか解決されない。

とはいえ、預けられるならどこでもよいというわけではなく、親として「自分の子どもに合った保育園にお願いしたい」という気持ちも当然ある。

周りを見渡すと、保護者や子どもたちが求める環境を提供するべく、道を切り拓いている女性が増えている。

第1回では、自分の子どもを預けたいと思える保育園を自ら設立した鹿児島県の福島紗矢香さりいさんを紹介した。

【関連記事】子供を通わせたい保育園が見つからず、鹿児島で自ら園を設立した女性に聞く起業家精神

第2回は「日本の子育てを変えたい」と自ら立ち上がり、同じように保育園を設立した株式会社バタフライエフェクト代表の高野麻伊さん(36)を取材した。

子どもらしくなれる場所を目指す保育園

高野さんは2015年、東京都世田谷区に「Kids Oasis」を開園した。

「子どもが一番こどもらしくなれる場所」を目指し、個性を尊重する保育が自慢の認可外保育園だ。

園で必要なオムツや着替え、お昼寝用タオルなどはすべて園で準備。保育中に撮影した写真はタイムリーに保護者の携帯電話へ送るなど、親の立場に立って考えられた、いくつもの細やかな配慮がなされている。

提供:高野さん

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米シカゴから帰国後に開業

高野さんは奈良県で生まれ、大学までは関西で過ごした。

22歳で日系エアラインに客室乗務員(CA)として就職したのを機に上京し、28歳で結婚。その後、長男を出産し、30歳の時に夫の仕事の都合で米シカゴに渡った。現地では次男が産まれ、異国での育児に励んでいたという。

「Kids Oasis」を立ち上げたのは、日本に帰国後の33歳の時。保育園とは関係ない仕事で働いていた高野さんは、何をきっかけに園の設立を思い立ったのだろうか。

提供:高野さん

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──どのようにして保育園設立に至ったのか、経緯を教えてください。

アメリカで家族ファースト文化での育児経験をしてからの東京生活、ママたちが本当に大変そうに見えました。

すべての育児を1人で背負って、家族のためだけに毎日を過ごし、保育園に空きもないから今までの自分のキャリアも捨てざるを得ない。私もその1人でした。

ママが1人で育児を背負って苦しい状況を何とか変えられないものか。せめて、保育園がないからといって今までのキャリアを捨てなくてはいけない状況を何とかしたい!

仕事をしないママにも、ちょっと息抜きできる時間を作ってあげたい。

ならば、スポット利用も月極め利用も柔軟に対応できる素敵な保育園を作ろう!

ただ預けるのではなく、育児を一緒にするパートナ一と思ってもらえるような保育園にしよう!ということで、保育園作りを始めました。

人材にも恵まれた

高野さん自身も2人の息子がおり、開業準備中は自分の子どもを連れて従業員の面接を行ったことも。夫は基本的に「楽しそうにしているね」と応援してくれたという。

子育て真っ只中での起業でもあった。困難を尋ねると、「人材に恵まれ、特に大きな困難はなかったと言ってもいいくらいです」という。

起業初心者として金銭面では苦労したものの、従業員の能力や人柄に魅せられ、「このメンバーならなんとかなる!」という感覚でここまでやってきたのだという。

──保育士の資格・経験がないことが壁になったことはありますか?

壁はありますが、でも、むしろ壁があるからいいのかなと思っています。

私はとにかく理想に向かって突き進んでいるので、保育内容や企画について「もっとこうして!」みたいなことをいつも言うのですが、現場としてはやっぱり現実的ではないこともあります。

でも、そこで終わるのではなく、私の意見そのままだと無理だけど、ちょっとアレンジすればできるかも、という方向でみんなで考え、子どもたちがいきいきとできる企画や保育が生まれるんです。

私は現場経験がないからこその視点で、理想を無茶振りする役割としてそれはそれでいいのかなと思っています。

提供:高野さん

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「ダメ」は禁句

──保育園設立に込めた想い、こだわりを教えてください。

毎日近所の色々な公園でたくさんのママたちと話をして、「保育園に預けるのはかわいそう」と思っていたり、祖父母から言われたりというママがとっても多くて。

それなら、家より子どもにとっていいと思える場所にしようと思いました。

自分の育児経験から、自宅に子どもたちといると「それは触らないで」「そこにはいかないで」「これは出しちゃダメ」とかばかり言ってしまっていることに気づきました。

自己肯定感を伸ばすことを子育てで何よりも大切にしたいと思っているのに…でも、子どもって家でやってほしくないことばかりやるんですよね。

そこで、Kids Oasisでは「ダメ」という言葉は絶対に使わないように徹底しています。だって、KidsのOasisですから。子どものための、子どもが中心の場所です。

大人も子どもも対等でいたいので、Kids Oasisでは保育スタッフのことを先生とは呼ばず、子どもたちからも保護者からも名前で呼んでもらっています。

また、ママたちに少しでもお家でゆっくりしてもらえるように、お洗濯お昼寝ベッドの準備も全部園でしています。

保育スタッフとしても、子どもたちは園の汚れてもいいお洋服で遊ぶから、思いっきり遊ぶことができるんです。

提供:高野さん

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Kids Oasisでは、自宅ではなかなか作れない野菜をふんだんに使った料理を提供。昼食とおやつで30品目摂取できるという。

そして、園庭がないからこそ、たくさん歩いて色々な場所に出かけ、毎日思いっきり外遊びをする。

自宅ではできないような、藍染や玉ねぎ染などの汚れる遊びも積極的に取り入れている。

こういった特色には、まさに高野さんの「想い」が形となって表れていると言っていいだろう。

理想の保育園を追求

──今後の展望を教えてください。

嬉しいことに、最初の園児さんの弟ちゃん妹ちゃんが、ほぼ100%またKids Oasisに通ってくれているんです。

「自宅にいるより子どもにとって良い」と、みんなに思ってもらえる保育園に向かって、まずは引き続き、理想の保育園を追求し続けたいです。

そして、Kids Oasisを選んでくれる保護者さんは、本当に個性的で多才で素敵な保護者さんが多いので、せっかくのこのご縁をつなげていきたいという卒園児さんの保護者と一緒に、「Friends of Kids Oasis」というグループを立ち上げました。

これまでKids Oasisに関わってくれた人も在籍中の人も、保護者同士の繋がりを活かして様々なイベントを企画開催しています。

このグループでの活動も今後もっと力をいれ、子育てのサポートはもちろん、ママパパの充実したの毎日のお手伝いをしていきたいと思っています。

日本的な一斉保育よりも、レッジョ・エミリア・アプローチの方針を取り入れて個性を重視しているので、その方針に賛同してくれる外国人の園児さんが増えてきました。

インターナショナルスクールのように英語での保育をするのではではなく、あくまでも日本語で、日本的な感覚を育みながら、世界にも繋がりを感じられるようなカリキュラムを入れていけたらいいなと思っています。

提供:高野さん

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──最後に、起業を考えている人へのメッセージをお願いします。

自分の会社を持つというのは、本当に楽しいです。

ただ、会社の愚痴を言いながら呑気に仕事をしていた雇われ時代のことを思い出すと、なんてありがたい時間だったんだとも思います。

起業をしてから、起業を考えている友人に相談を受けることが多いのですが、基本的にはまず止めます(笑)

それでも、本当に想いがあるのなら誰に何と言われようがやるだろう、それくらいの想いが必要なのかなと思います。

勢いでここまできた私が偉そうなことは言えないかもしれませんが、それが率直な気持ちです。

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Text by Ericolatte

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