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今にも動き出しそう!皮革でつくられた幻想生物がリアルすぎる

Photography by 松田幹夫

Photography by 松田幹夫

皮革でつくられた甲虫や幻想生物が、今にも動き出しそうなほどリアルで精巧だと話題を呼んでいる。

独特の存在感を放つレザーアート作品を制作するのは、造形作家の河野 甲氏。

今回は同氏に、皮革造形を始めたきっかけや作品へ託されている思いなどを伺った。

憧れていた叔父に弟子入り

―皮革造形を始めたキッカケは?

叔父である石丸雅通(銀座和光や鎌倉ポロ・ラルフローレン店のディスプレイも手がけたレザーアートの第一人者)がキッカケです。

河野 甲

河野 甲

叔父は大学の油絵科を卒業後、最初に鞄のメーカーに就職しました。そこで革という素材に出会い、彼独自の革による立体造形を制作するようになったのを子供の頃から知っていて、ずっと憧れていました。

河野 甲

河野 甲

そこで、美術短大を卒業後に叔父の元へ弟子入りし、その技術を学ぶことにしました。

―作品によって素材や道具の違いは?

主に使っている素材は「牛革」です。

きめが細かく、マチエール(素材・材質によってつくり出される美術的効果。材質効果のこと)を自分で作り上げることができるので一番気に入ってます。

Photography by 藤谷伸次

Photography by 藤谷伸次

時々、豚革も使います。革自体がすでに表情をもっているので、それが生かせる時に使用しています。

道具は色々と使いますが、歯科医の道具が結構役に立ちます。私の父が歯科医でしたので、自然と使うようになりました。

河野 甲

河野 甲

父は私が10歳の時に他界したので、形見とも言うべき道具を引き継いだことは自分の中では大切なことになっています。

東洋人としてのアイデンティティを大切に

―幻想的な作品を生み出している発想力となっているものは?

もともと空想癖の強かった私はとりわけシュルレアリスムの絵画が好きで、マグリットやデルヴォーなど独特のポエジーを発する作品にずいぶん影響されました。

Photography by 堀江雄一

Photography by 堀江雄一

しかし鑑賞者としてではなく、表現者としては独自の表現をしなくてはなりません。つまり、自分の中からにじみ出る世界観を表現しなければならないと感じていました。

―麒麟や河童など空想生物はどこから着想を?

麒麟や河童を制作した意図には、やはり東洋人としてのアイデンティティを大切にしたいという思いがありました。

Photography by 藤谷伸次

Photography by 藤谷伸次

あらゆる現生の生物が空想生物のモチーフになりますが、その形態をつなぎ合わせるのではありません。

印象に残った生物の得も言われぬ肢体のフォルムが、心の中で自然に新しい姿として現れるように心がけています。

リアリズムの形式にこだわる

―今にも動き出しそうな感じを出すために工夫されていることは?

生きている生物をよく観察すること。基本的にリアリズムの形式にこだわっています。

Photography by 北岡剛

Photography by 北岡剛

獲物を取る時の緊張感のある体のバランスとか弛緩したときの様子などを、少し誇張しつつもディフォルメまでいかないようにしながら制作しています。

―「風を読む」や「大気への托身」など人体に羽根がついている作品があります。作品に託されている思いとは?

(子供の頃から)昆虫が好きだったので、羽根はよく作品に取り上げます。トンボや鳥が風をうけて自分の身体を自在にすべらせるシーンは、ひときわ自然との一体感を感じさせます。

Photography by 中谷昌司

Photography by 中谷昌司

自然の中に自身が溶け込んでいる状態を表現したいと思いました。自我が消滅し自分を取り巻く外界の旋律に共鳴している瞬間が、なによりも幸福な時間のように思うからです。

Photography by 中谷昌司

Photography by 中谷昌司

命の宿った作品でありたい

河野氏は皮革造形作家として30年続けてきて、仕事の中でを意識するようになったことがあるという。

作品を制作する際に使う革素材は「食の副産物」として手に入るもので、「もともと血の通った生き物だった」ということ。

河野 甲

河野 甲

「できれば命の宿った作品でありたいと思いながら制作している」と語る河野氏。

彼の作品が、鼓動が聞こえてきそうなほど活き活きとしているのは、そういう気持ちが込められているからだろう。

河野 甲

河野 甲

河野氏の作品が気になる方は、ぜひホームページのNEWSから展示会情報をチェックしてほしい。彼の作品を間近で見るチャンスがあるかもしれない。

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