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【取材】下北沢の「ビールが飲める美容室」が大人の憩いの場だった

ビールが飲める美容室「T:Luck(ティーラック)」

ビールが飲める美容室「T:Luck(ティーラック)」

「今日はちょっと飲みたいな」

そんな時、どこに行きますか?

バーや居酒屋、酒屋の角打ちなんて選択肢も。

その中に「美容室」が入ってきたらどうでしょうか。

下北沢のビールが飲める美容室

東京都世田谷区の下北沢駅から徒歩2分。古着屋が立ち並ぶ駅前通りを一本入ると、鮮やかなブルーの扉が目を引きます。

T:Luck外観

T:Luck外観

「T:Luck(ティーラック)」は、ビールが飲めるちょっと変わった美容室です。

ありそうでなかった独自のサービスを展開した、オーナーの伊藤さんに話を伺いました。

T:Luckオーナー伊藤さん

T:Luckオーナー伊藤さん

伊藤さんは、およそ1年半前に「T:Luck」をオープン。

独立して美容室をオープンした友人に触発され、自分も店を構えたいと思いました。ただ美容室はコンビニよりも店舗数が多いと言われていて、そこでありきたりな美容室をやっても埋もれるだけだなと思ったんです。

ビールを提供すると決めた背景に、伊藤さんのある実体験がありました。

どんな美容室にしようか考えていた頃、初めて一人で海外旅行をしました。ふらっと入ったバーでビールを飲んでいたら、知らないおじさんが奢ってくれたんです。言葉も文化も違う人だけど、ビールがあればコミュニケーションが生まれるんだと気が付きました。

隣の人と話してはいけない、そんな美容室の不文律もビールで壊せるのではないか。

そう思い“ビールが飲める美容室”というコンセプトに決定しました。

今ではお客さんの約7割がビールを注文し、中にはヘアカットをせずにビールだけ飲みにくる常連客もいるそう。

20代〜40代の幅広い世代の憩いの場となっています。

ビールを飲みながらヘアカット

ビールを飲みながらヘアカット

万人受けを狙うと、味気ない塩むすびになっちゃう

ビールを提供しているため高校生の来店は少なく、またフランクな雰囲気がかえって客足を遠ざけてしまうこともあります。

それでも美容室の個性を保ち続けるには理由がありました。

みんなに好かれようと万人受けを狙うと、味気ない塩むすびになっちゃう。塩むすびを嫌いな人はいないかもしれないけれど、「塩むすび大好き!」って人も少ないと思うんです。

梅干しだって鮭だって何でもいい。自分なりの具があることで、他より愛着をもって選んでいただけると思っています。

そんなおにぎりの具であるキャラクター性を養うため、伊藤さんはスタッフに「よく遊ぶこと」を推奨しています。

遊んでネタを作ってきてとスタッフに伝えています。カットやカラーの技術も大切ですが、会話のレパートリーを持っていることも美容師には重要です。

例えば「近くでおすすめの飲食店は?」と聞かれた時に、「◯◯のハンバーグが美味しいらしいですよ」と口コミを教えても説得力がないですよね。自分が食べた中で一番美味しいご飯を力説することで、お客さんの共感度も高まると思いますし、後の信頼にも結びつきます。

そのためスタッフがフレキシブルに休暇を取れるようにしているとのこと。

T:Luckオーナー伊藤さん

T:Luckオーナー伊藤さん

また、ビールや会話だけでなく、さまざまな取り組みでお客さんを楽しませています。

僕は「ライフスタイル提案サロン」って名乗っていて、うちの店に通うことで趣味や友達が増えるという体験を提供したいと考えています。だから雑誌は置かずに、趣味に繋がる旅行系や読み物系の本を置いています。

また、美容室で「フリーマーケット」を開催したり、別の場所でお客さんが参加できる「犬猫チャリティの飲み会」を開催して、参加費の半分を盲導犬育成協会やシェルターに寄付したりしました。

そこで生まれたお客さん同士の繋がりは、イベント後も継続しているケースが多いそう。

「お客さん同士で飲みに行ったという話を聞いて、僕も誘ってよって寂しくなります」と語りながらも伊藤さんは嬉しそうな表情を浮かべていました。

技術じゃなくて時間に対価を払ってもらう

美容室で全ての施術が終わり、会計をします。そのお金は何への対価なのでしょうか。

お客さんはカットとカラーの技術にお金を払うという意識があるのですが、僕は違くて。

例えば、美容室に来て20分待たされて、カラー材を塗ってまた待たされて、ほっとかれている間に美容師は別の人と楽しそうに話している……そんな空間に孤独を感じることもありますよね。それでも施術が終わったら決められた額を支払う。僕はそうじゃないだろうと思うんです。

施術している時間を楽しませる、その分の対価だと伊藤さんは語ります。

髪型を整えるという義務的なことでなく、ビールを飲みながら話をして気晴らしになったり、隣に座るお客さん同士で会話をして有意義な時間を過ごしてほしい。それに払う対価だと考えています。

だから僕はなるべくお客さんが孤独にならないよう努力をします。カウンター越しではないけど、お客さんの後ろに立っているバーテンダーという感じですね。

今後について「お客さんが楽しんでくれるなら何でもしたい」と伊藤さんは語ります。

“ビールが飲める美容室”というコンセプトはあくまで入り口。

一歩足を踏み入れれば、好奇心旺盛で面倒見の良いオーナーと気さくなお客さんとの輪が広がっているほっこりと温かな場所でした。

「T:Luck(ティーラック)」
住所:東京都世田谷区北沢2-30-10 102号
営業時間:10:00〜21:00
電話番号:03-5738-8459
定休日:無休

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Text by 水上アユミ

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