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視覚障がいを乗り越えて「美の大切さ」を伝える資生堂・奥沢美砂さん

資生堂・奥沢美砂さん

資生堂・奥沢美砂さん

美しさとは何か、彼女の言葉を聞いて改めて考えさせられた。

資生堂ジャパン株式会社のCSR・コミュニケーション部に所属する奥沢美砂さんは、網膜色素変性症という視覚障がいを持ちながら、18年間化粧品会社に勤務している。

網膜色素変性症とは、眼の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる遺伝性の病気。暗い所でものが見えにくくなる、視野が狭くなる、視力が低下するという症状がある。

視覚的情報が求められる「美」を彼女はどのように捉え、伝えているのか。

奥沢さん本人に聞いてみた。

少しでも後押しができれば

職場では、会社の社会貢献や社員のボランティア活動を促進する業務を担う。また、年に4回美容情報の音声コンテンツ「おしゃれなひととき」を配信し、視覚に障がいのある方に美の大切さ、楽しさを伝えている。

視覚障がいが壁となり得る化粧品会社に就職したのには理由があった。

とにかく自立をしたいという気持ちがありました。親と同居していると甘えてしまうので、働いて自分の力で生きたいという思いが強かったです。

就職先を選ぶときも、なるべく長く働けて、女性が活躍できる会社という基準で選びました。

資生堂は化粧品という女性の強みを活かせる環境ですし、テレビCMやポスターなどから美しさへのこだわりを感じ、また常に新しいことに挑戦している印象を受け、ここで働きたいと思いました。

過去に全盲の女性を採用した実績もある資生堂。強い思いが通じ、入社が決まった。

資生堂・奥沢美砂さん

資生堂・奥沢美砂さん

およそ2年前から「おしゃれなひととき」の制作を担当することになり、実体験を活かしてコンテンツ作りに励む。制作する上でこのようなことを心がけているという。

「おしゃれなひととき」はスキンケアやメイクテクニック、季節ごとの注目アイテムなどを視覚に障がいのある方向けに発信している音声コンテンツです。

リスナーの立場に立って、まず耳で聞いてわかりやすい表現になっているか気をつけています。“あれ”“これ”など曖昧な表現は避けて、なるべく細かく描写しながら説明をします。

「おしゃれなひととき」2018年春・第122号では、春の訪れを下記のように表現している。

視覚に頼らない表現を節々にみることができる。

紹介する化粧品の選び方にもこだわりが。

旬のメイクアップ方法とともにおすすめの化粧品を紹介していますが、商品は実際に使用感を確かめて、視覚に障がいのある方が使いやすいものを選ぶように心がけています。

塗った化粧品がどれほど発色しているのか確認が難しいので、肌なじみのいい色で薄付きの商品を選んだり、塗布する回数を具体的に伝えています。

アイシャドウであれば、グラデーションで色分けされているものよりも、色ごとに仕切りのあるものの方が、色の境目を認識しやすく使いやすいです。

(左)仕切りがないグラデーションタイプのアイシャドウ(右)色ごとに仕切りがあるアイシャドウ

(左)仕切りがないグラデーションタイプのアイシャドウ(右)色ごとに仕切りがあるアイシャドウ

選んだ商品のキャップの開け方、塗り方など細かく説明することで、メイクに対する不安を解消して前向きにおしゃれを楽しんでもらえるよう促している。

「美しさ」は目に見えるものだけではない

奥沢さんが考える「美しさ」とはなんだろうか。

見た目の美しさだけでなく、美しくなるために行動をすること自体が「美しさ」につながると思います。メイクをするだけで気持ちが明るくなって、顔を上げて堂々と歩くことができるのは女性が誰しも体験したことがあると思います。

しかしながら、視覚に障がいのある方はメイクに対し臆病になってしまい、なかなか一歩を踏み出せないこともあります。

おしゃれをしてワクワクしながら外出できるようになったらいいな、と思いながら「おしゃれなひととき」を作っています。

一部の視覚に障がいのある方の間では聴かれている「おしゃれなひととき」も、まだまだ認知度は低いそう。

視覚に障がいのある方のコミュニティだけでは、情報拡散も難しいのが現実だ。

この記事をきっかけに「おしゃれなひととき」を多くの方々に知ってもらい、周りの視覚に障がいのある方たちへ届けてほしい。そしてひとりでも多くの方に美しくなる楽しさを伝えたいと奥沢さんは語る。

自らの障がいを乗り越えて前進する姿に、内から溢れる美しさとひたむきな情熱を感じた。

資生堂・奥沢美砂さん

資生堂・奥沢美砂さん

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Text by 水上アユミ

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