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怒らない国マレーシアの穏やかな子育てとは?

筆者撮影

筆者撮影

移住したい国ナンバーワンに13年連続(2006-2018年)選ばれている、マレーシア(※財団法人ロングステイ財団の調査による)。

人気の理由は、暮らしやすい穏やかな南国の気候、他民族国家のマルチカルチャーが楽しめる、さらに親日国家という理由などに加え、近年は教育のクオリティにも注目が集まり、子育て世代の移住や留学が増えている。

インターナショナル・スクールの増加に伴い、さらに留学先としても人気を集めている。これぞ「世界の縮図」と言えるほど、世界各国からやってきた色々な人種がバランスよく生活している、非常に稀有な国だ。

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マレーシア人は怒らない?

筆者は2年半ほど前に、仕事の関係でマレーシア・クアラルンプールに母子で移住。とある日系企業で働きながら、小学2年生(現地では小3)になる息子を現地のインター校へ通わせている。

 筆者の職場には、チャイニーズ系、マレー系、インド系など色んな人種のマレーシア人がおり、性格も様々だったが、基本的には皆明るくて穏やかだった。

体験する限り、マイペースを重視するカルチャーで自分の気持ちや思いを大事にし、決して無理はしない。仕事に関しても今日できなければ明日やればいい、というスタンスの人が多かった。さらに同僚に対して感情的に怒ったり嫉妬する、激しく口論するようなことはなかった。人は人、自分は自分。人と比べるようなこともしない。

仕事に対する考え方も独特で、他にやりたいことが見つかると一切迷うことなく転職していった。筆者のチャイニーズ系マレーシア人の友人いわく、

「我慢する、自分を抑えて苦境に耐えること」を美徳とする人は少ないと思う。私は心に「嫌な感情」を溜め込まないように、常に居心地のいい場所を探しているの。だって人生は一度だから、我慢してる時間がないって、そう思わない?

もちろん個人差はあれど、そんな独自のカルチャーは彼らが怒らない秘訣なのかもしれない。

▼犬好きが集まるパークシティの様子

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そういえば子供に怒っている人を見たことがない

マレーシアでは、イスラム教徒が約7割を占める。語学学校のムスリム(イスラム教徒)の先生に話を聞いてみた。

イスラム教では、“怒りを他人に見せることは感情のコントロールができない人”というマイナスのイメージがあるの(国によって多少異なる)。

さらに、親は子供の勇敢さ、素直さ、他人に対して優しく接すること、そして“怒りを抑えること”を教育することが最も重要で、“他人に対する妬みや怒り”を取り除くことこそが”しつけ”だとされているわ。

たしかに、飲食店やショッピングモールなど人がたくさん集まる場所で子供が大声で騒いでも、誰も気にしないし、それを大声で叱る親もいない。それはイスラム教徒だけの話ではなく、チャイニーズ系やインド系などの他民族においても、この国では同じ価値観を共通して持っているらしい。

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性格は穏やかに、でも自己主張はしっかりできる子供たち

 そんな環境がそうさせるのか、この国の子供たちはのびのびと自由に行動し、堂々と物怖じせず、はっきりと自分の意見を発言する。彼らの自己肯定感の強さに驚かされることが多い。

実際に息子の同級生と話すと、自分の好きなことや得意なことについて自信満々に語ってくる。そして、まだ英語でのコミュニケーションができない外国人であった2年前の我が息子にも、「ねえ、今から遊ばない?」「日本人は何が好きなの?」と積極的に話しかけてくれていた。

しっかりと親に愛されている。だから恥ずかしがらずに、他人に興味を持ち、優しく接するという行為が身についているのだと感じた。

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マレーシアでタクシーに乗ると「少しだけ日本語を話せるよ」「マレーシアには何年住んでるの?」「マレーシアはどう?日本はどこから?」「日本は美しいしエキサイティングな国だよね」「エアコン寒くない?」などと、ドライバーはフレンドリーで明るい人が多く、よく話しかけてくる。

PC作業をしようとカフェに入ると、どのカフェでも皆楽しそうに友人やファミリーとの時間を過ごしている人が多い。

談笑する声、ニコニコと最高の表情だ。マレーシアのカフェは、基本的にどこへ行っても大人も子供もワイワイと盛り上がっている。本を読んだり、仕事やPC作業をしている人は圧倒的に少ない(ブックカフェや作業用カフェは存在する)。人とのコミュニケーションを楽しもうとする人が多い印象だ。

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人に迷惑をかけないように生きるより、迷惑はお互い様

子育てにおける概念がそもそも違う国において、怒ること・叱ることは必ずしも「しつけ」ではないようだ。家族や子育てについて、あるチャイニーズ系マレーシア人の友人に話を聞いてみた。

マレーシアでは2、3世代の家族が同じ家で一緒に暮らすのが当たり前。親はいつまでも子供をサポートし、子供もずっと親をサポートし続けていくの。

家族だから、お互いケアし合うのは自然なことよね。私にはたくさんのファミリーがいつも近くにいるし、それが幸せだと思うの。

そんなお互い様の関係性や、思いやりの精神がマレーシア人の独自のカルチャーを形成していると言える。

▼学校でのカルチャーイベントでの一コマ62242452_856980831342282_4175850973660446720_n

マレー語では「トゥルマカシ(ありがとう)」に対して「サマサマ(お互い様)」と答える。(@travel starマレー語辞典ーより引用

日本では「人に迷惑をかけないように」と教わる。だから筆者も、子供を叱り諭すことで周りに迷惑をかけないようにと、気を配ってきたように思う。

しかし、生きている以上「すでに自分も人に色々と迷惑をかけている、だから相手のことも“お互い様”だと受け入れよう」というマレーシアのカルチャーも、また違った視点からの子育てのヒントになるように思う。

マレーシアの子供たちの優しく穏やかな性格やいつも和やかな表情は、この独自のカルチャーの下に形成されたものだと思う。だから大人になってからも、人の目を気にし過ぎることなく、自分に正直に素直に生きていく術を身につけていると感じる。

こんな形の教育もあるのだな。マレーシアにて我が子を叱り過ぎて、気づけば疲れ果てていた筆者の心には痛いほど響いている。

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Text by michikotsutsumi

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