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【取材】6300本のゲーム資料を公開!ゲーム保存協会「文化を未来へ引き継ぐ」

出典:「ゲーム保存協会」

出典:「ゲーム保存協会」

「ゲーム・アーカイブ公開」について、ゲーム保存協会に取材した。

6300本の「PCゲーム・アーカイブ」を公開

NPO法人ゲーム保存協会は11月25日、「ゲームソフト・アーカイブ」の一般公開を始めた。本部アーカイブ室にある2万本以上の資料のうち、一般公開の準備ができている6300本のソフトを公開。80年代を中心に日本独自の発展を遂げたパソコンゲームソフトのアーカイブで、20世紀のパソコンゲームの歴史における貴重な資料の数々が含まれているという。

今回の公開はあくまで最初の一歩で、今後も閲覧可能な資料を追加していく予定だという。

貴重なゲーム資料の保存に取り組む

同協会は2011年、日本の貴重なゲーム資料を保存し、ゲーム文化と文化財を継承するために設立。同協会の理事長を務めるルドン・ジョゼフ氏は、フランス国立図書館を始めとするアーカイブ機関が使っているメディア保存技術の開発に関わっており、この保存技術の完成をきっかけに同協会を立ち上げたという。

ルドン・ジョゼフ氏に、日本のゲームに関心を持ったキッカケを聞くと、次のような答えが返ってきた。

こういったご質問をよく受けます。でも、ベートーヴェンなどのクラシック音楽が好きな日本人にわざわざ「ドイツの音楽に関心を持ったキッカケ」を聞くでしょうか?

出典:「NPO法人ゲーム保存協会」HP

出典:「NPO法人ゲーム保存協会」HP

日本のゲームは、どこの国で作られたという感覚もなく昔から海外で遊ばれており、ルドン氏も子供の頃、日本製だと知らずにたくさんのゲームで遊んでいたという。

日本のゲームは日本の人たちが考えている以上に早くから国境を越えて楽しまれており、ヨーロッパのクラシック音楽が世界で愛されているようにして世界中で愛されてきました。

なので、特に日本のゲームだから関心を持ったのではなく、好きだったゲームがたまたま日本製だった、という方が近いと思います。

日本という国に注目するようになってからは、活動の中でできるだけ日本にしかないものや、海外に出なかった国産PCゲーム等を優先的に収集・保存するようになったそう。

日本らしいシナリオ作りやキャラクターといった独特の味わいがあるゲームは、マイコン時代の試行錯誤の中で確立されたものだが、日本独自の国産PCは海外にはなかったため、こうしたゲーム作品は日本で集め、保存しなければ歴史から消え去ってしまうという。

フランスでは国立図書館で貸出

海外では、アメリカの大学機関やヨーロッパ各国で少しずつゲーム・アーカイブが立ち上がりつつある状況で、フランスでは国立図書館で研究者へのゲーム資料の館内貸し出しが始まっているという。また、一般のアーカイブ機関を国が支援する仕組みもあり、ゲームの保存に対する積極的な姿勢が整ってきている。

しかし日本では、ゲームは「商品」として扱われがちで、無料で資料を見られる場所はほとんどないという。

残念ながら日本ではこうした文化事業に対する国の予算は限られ、また様々な利権や偏見などもあってゲームの真面目なアーカイブが進まない状況です。

当協会でも文化庁などから助成を受けた事業展開が今年度から始まってはおりますが、資料の特殊性や劣化への対処など考えると今のやり方では資料を保存し終わる前に劣化で失われるものが出てくるのではないかと懸念されます。

日本は高温多湿な環境で、地震や災害も多い島国なので、文化財全体に対して“保存”という観点で見れば問題の多い国の1つと言えるそう。

また、磁気メディアなど多くのゲーム資料は化学的劣化による寿命もあり、フロッピーは作られてから30年もすれば磁性体が弱くなり読み込みが難しくなる可能性が高く、CDなど光学メディアもある日突然化学的劣化が原因でディスク面が剥がれ落ちるなどの問題が起きるという。

そうなると中に保存されているデータは取り出せなくなります。さらに80年代後半、メディアの低価格大量生産がはじまってからは各メディアの質が低下し劣化耐久年数も短くなっていますので、一刻も早く資料を適切な保管環境に移し、特殊な処置を施して劣化する前にデータを保存する必要があります。

最近になってようやく、文化庁が主体となりゲームを文化として認めるように動き出しているが、国立アーカイブの実現にはまだ長い時間がかかると思われ、その間に資料の散逸や劣化によるデータ消失などが起こる恐れがあるという。

出典:「ゲーム保存協会」HP

出典:「ゲーム保存協会」HP

資料はコレクターの善意

同協会は保存技術は当然ながら、資料数でも世界最大級のアーカイブを作れる10万点以上のコレクションを誇っているが、協会自体が資料を購入することはないという。

NPOはあくまでも、ゲームを保存したいと願う市民が集まって活動をする場所ですので、団体としてソフトを購入することはなく、現在団体が保有している全資料は、NPOに参加している個人個人のコレクターの善意によってNPOに管理を任されている資料です。

出典:「ゲーム保存協会」

出典:「ゲーム保存協会」

例えば、今回公開した等々力本部のアーカイブは、理事長個人のコレクションと参加メンバーから借り受けた資料、そして活動内容に賛同した人々からの寄贈資料だそう。

現在、レトロゲームの売買価格は高騰し、ゼロから資料を集めることはほぼ不可能な状況です。

ゲーム保存協会では設立当初から資料のコレクションはせず、その代わり、活動趣旨に賛同し共に資料の保存のため最善の策を考え行動するコレクターのネットワークを作ることに力を注いできました。自分たちが集めた資料を未来に残し、愛してやまないゲーム文化を多くの人と共有し引き継いでいく気持ちを持つたくさんの仲間がいたおかげで、他では達成しえない大規模なコレクションを維持することができるのです。

特に、収集が難しく、劣化や保存にもさまざまな問題がある脆弱なものを優先的にアーカイブし、資料情報を整理。

ゲーム資料の保存・共有は、次世代の文化活動を活性化し、豊かな未来を作っていくと言われており、若いクリエイターを育てるためにも、一般の利用者が気軽に資料を見ることができる環境づくりが大切なのだという。

ゲーム文化と資料を未来に残すために

資料の収集や管理、保存にあたって「一番大変なのは、コレクターとのやり取りかもしれない」と語る。

協会は、「貴重な資料でも死蔵しては意味がない」という考えで情報を共有し、協力して資料を集めて守っているが、「自分しか持っていないから価値がある」という考えや、他コレクターとの競争を楽しむようなコレクターもいるからだ。

大切なのはゲーム文化とその資料を未来に残すことですので、当協会としては、色々な考え方でコレクションをしている方々とうまくコミュニケーションを取り、どなたとも公平で良好な関係を作っていくことを意識しています。

出典:「ゲーム保存協会」HP

出典:「ゲーム保存協会」HP

資料等への負担を考慮し、利用には制限

利用にあたっては、出来る限り同協会へのサポーター登録をお願いする、利用時には閲覧理由と閲覧資料名を明示するなど、いくかの利用制限を設けている。そのため、公開を発表した後も、予約が集中することはなく、落ち着いているという。

資料閲覧に基準を設けているのは、貴重な資料の損傷やトラブルを防ぐため、そして普段保存やアーカイブ整理の作業に従事するスタッフに負担がかかりすぎないように利用者数をコントロールするためでもあります。

なお、一部ニュースで「実機で動作可能」という点が強調されて報じられているが、非常に脆弱な資料が主なことから、ソフトの実機動作が必要な場合にはオリジナルのマスターディスクは使わず、同協会が開発に関わっている特殊な保存技術で保存したデータを利用する形をとっているという。

出典:「ゲーム保存協会」HP

出典:「ゲーム保存協会」HP

公開発表後、嬉しい反響が

公開を発表した後、リストを見て「自分が作ったソフトが保存されてると知り、胸がいっぱいです」といった声をかけてくれたクリエイターの方々がいたことや、取り組みを知って、サポーターとして活動を応援してれる人が増えるなど嬉しい反響があったそう。

同協会の活動は一般の人々からの寄付をよりどころに運営されており、今後もアーカイブを充実させ保存活動を進めていくためにも、会費という形で取り組みを応援してくれるサポーターの力が本当に大きいという。

今回の6300本の公開が実現できたのも、これまで活動を支援くださっていたサポーターの方々のおかげですが、ご寄付はこうした活動への賛同と応援の声です。

日々、アーカイブ室で作業を進めるスタッフにとって、こうしたサポーター会員の方たちの声には深い意味がありますから、いただいたご支援をしっかりと受け止め真摯に活動を続けてまいります。

出典:「ゲーム保存協会」

出典:「ゲーム保存協会」

夢は「世界一のデジタル・ゲーム・アーカイブ」

活動に込める思いを聞いた。

日本は過去、浮世絵を価値ある作品として認めることが遅れ、国として重要な文化財の多くを失った歴史があります。ゲームでも同じことが起こらないように、一つでも多くの資料を残すことが大切だと考えています。

特に国産PCゲームなど、ゲームの黄金時代を築いた資料群は浮世絵と違い、海を渡ることがなかった資料です。日本にしか存在せず、今ここ日本で保存しなければ、数年後にはカビや錆といった物理的な劣化損傷でデータを読み込むことができなくなります。そうした資料を残すため、多くの方々と協力して活動する場がNPO法人ゲーム保存協会です。

現時点では著作権の問題や作業にかかる人手、予算の問題ですぐには実現できないかもしれないが、フィジカルな資料はソフト、周辺機器、書籍、関連CDなど合わせ10万点以上集まっているとして、今後のビジョンをこう語る。

これら資料をデジタル化し、世界一のデジタル・ゲーム・アーカイブを作ることが協会全体の大きな夢です。

実現までまだ長い道のりがあり、多くの人からのご支援ご声援も必要としています。ゲームの未来のためにこれからも一人でも多くの方からのお力添えをいただければと思い、地道に保存作業を続けてまいりますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

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Text by 長澤まき

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