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【取材】中学生を3年かけて「暑さ対策サポーター」に養成!日本一暑い熊谷市の対策がスゴい

活動する熊谷市の中学生 提供:熊谷市

活動する熊谷市の中学生 提供:熊谷市

7月に国内の史上最高気温41.1℃を観測した埼玉県の熊谷市に「暑さ対策」について話を聞いた。

熱中症予防強化月間が8月31日まで延長に

連日、列島各地で暑い日が続いている。

環境省の熱中症予防情報サイトは、当初7月31日までと設定していた「熱中症予防強化月間」を8月31日まで延長。

気象庁の3カ月予報によると、北・東・西日本では温かい空気に覆われやすく、向こう3カ月(8~10月)の気温は平年並みか高い見通しだという。

出典:気象庁ホームページ「3か月予報」

出典:気象庁ホームページ「3か月予報」

観測史上最高の41.1℃、暑さの理由は?

厳しい暑さと、どのように付き合えばいいのか。

今年7月23日に、国内の観測史上1位となる41.1℃が観測された熊谷市の市長公室政策調査課に話を聞いた。

同市の気温が高いのは、こんな理由があるという。

・都心のヒートアイランド現象により温められた空気が、南寄りの風に乗って運ばれてくること

・上空を吹いている西風が秩父の山を越えて吹き降ろしてくる際に圧縮されて温度が上がるフェーン現象が発生し、温度の上がった空気が流れ込むこと

これらの理由による2つの温かい空気が重なる「交差点」が、熊谷あたりだといわれています。

提供:熊谷市

提供:熊谷市

2007年から「暑さ対策」に力

熊谷市は「暑さ対策日本一」として、さまざまな取り組みを行っている。

2004年の全国的な猛暑をきっかけに、暑さを逆手に取り、市民の気持ちの熱さや人情の篤さなどの「あつさ」をまちづくりに活かそうと、2005年から「『あついぞ!熊谷』人づくり支援事業」をスタートした。

これは暑さのPRや対策ではなく、市民の活動を市が広報や補助金という形で応援するものだ。

2007年に、当時の日本最高気温を計測したことを契機に、「熱中症から市民の健康を守ること」を緊急に取り組むべき課題に据え、この課題解決を図るとともに、「暑さ日本一」「快晴日数日本一」という特徴的な気象条件を生かした地域振興策にもつながるようなアイディアを全職員から募ったという。

アイディアは400以上寄せられ、初年度はその中から24個を事業化し、「あつさ はればれ 熊谷流プロジェクト」(あっぱれ熊谷流)を立ち上げました。

「あっぱれ熊谷流」は、2008年度から2017年度を計画期間とする第1次総合振興計画におけるリーディングプロジェクトに位置づけられたそう。

さらに、2010年の猛暑を受けて体制を強化するために結成された、若手職員を中心とした「暑さ対策プロジェクトチーム」では、暑さ対策、熱中症対策の調査・研究及び事業の企画・立案を行い、熊谷オリジナルの暑さ対策を多数生み出しているという。

出典:「熊谷市暑さ対策バンク」ホームページ

出典:「熊谷市暑さ対策バンク」ホームページ

幼児にクールキャップを配布

具体的に、どのような取り組みを行っているのか。

【保育所ひんやりペタペタ事業】

保育所のテラスに熱交換塗料を塗布し、子供たちが夏場にも裸足で過ごせるようにしています。

※熱交換塗料:夏場は余分な蓄熱や放射熱が発生しない一方で、逆に冬場は一定温度での蓄熱をするという特徴を持つ塗料。吸収した熱エネルギーを塗料の分子の働きで消耗するもの

提供:熊谷市

提供:熊谷市

【ちびっこ元気事業】

市内在住の3~6歳児に、熱中症予防に効果のある冷却機能を備えた「ニャオざね(※)クールキャップ」を配布しています。

帽子全体にUVカット加工を施し、首の部分についた高吸水繊維を水で濡らして使用することで、体感マイナス10度の冷却効果が3時間程度持続します。

※ニャオざね:市のマスコットキャラクター

提供:熊谷市

提供:熊谷市

中学生を「暑さ対策サポーター」に養成

【地域へ発信!中学生暑さ対策サポーター事業】

中学校生活3年間をかけて、生徒を暑さ対策サポーターに養成しています。

1年生には暑さ対策セミナーの受講、2年生にはAED講習を行い、3年生では、学んだことを防災行政無線での放送や、商業施設、地域行事等で発信するなど、熱中症予防を地域の方にまで広げています。

提供:熊谷市

提供:熊谷市

トイレットペーパーでも熱中症に注意喚起

【トイレの中から暑さ対策!事業】

「熱中症を注意喚起するトイレットペーパー」や「尿の色等で脱水症状を判定するポスター」を、公共施設のほか、駅、商業施設などのトイレに設置し、熱中症予防を啓発しています。

提供:熊谷市

提供:熊谷市

観光客に「えんむすび日傘」をレンタル

【えんむすび日傘事業】

日本三大聖天の一つとして知られる、国宝妻沼聖天山の本殿「歓喜院聖天堂」周辺の商店街の商店等20カ所に、熊谷染の図柄をあしらった日傘や番傘計300本を設置し、訪れた観光客に無料で貸し出しています。

提供:熊谷市

提供:熊谷市

オリジナルかき氷に涼しさ体感アートも

立正大学地球環境科学部と連携して、市内の熱中症搬送者データや小学校区ごとに設置している観測機のデータを分析・研究する「めざせ!暑さ対策研究日本一事業」も実施。

地域ごとの暑さの特徴等の結果を、市民への熱中症啓発や、今後の暑さ対策事業に役立てていくそうだ。

その他にも、熊谷オリジナルかき氷「雪くま」の考案や、駅への「涼感を演出する“階段アート”」の展示など、多数の事業を実施。民間企業等と連携した取り組みも行っているという。

提供:熊谷市

提供:熊谷市

重症者の割合減少など効果

これら対策の効果か、同市では救急搬送者の初診時における傷病程度について、埼玉県や全国の数値と比較して、軽症での搬送者が多く、中等症・重症者の割合が低くなっているという。

市が2008年から10年にわたって実施してきた様々な暑さ対策や熱中症予防の啓発により、熱中症が死に至る危険もあるということが市民に周知されている証拠ではないかと考えています。

同市は、環境省が推進する「熱中症予防声かけプロジェクト」主催の「ひと涼みアワード」で、初回の2012年から6年連続で、日本一であるトップランナー賞等の最高賞を受賞。

同市の暑さ対策はマスコミに数多く取り上げられ、講演依頼や視察の受け入れなど、広く市のイメージアップや健康対策、地域活性化などにも貢献しているそうだ。

重要なのは「市民の命を守ること」

「暑さ対策」に込める思いを、こう話す。

一番重要なのは、市民の命を守ることです。

 

提供:熊谷市

提供:熊谷市

引き続き暑さ対策に万全を期していきたいと考えているという。

熊谷市では2007年に40.9℃の最高気温を記録して以来、暑さ対策、熱中症予防の啓発活動等に力を入れておりますが、7月23日に41.1℃という観測史上最高気温を記録しました。

熱中症は命に関わる問題ですので、今回も先んじて、7月20日には市民の皆様へ「緊急メッセージ」として注意喚起を行いましたが、これからも市民の皆さんの命、健康を守るため、これまで以上に気を引き締め、取り組んでいきたいと考えています。

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Text by 長澤まき

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