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“言葉の壁”を越えていこう!ろう者・難聴者・聴者の協力で謎が解ける脱出ゲームが開催へ

出典:「異言語Lab.」ホームページ

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さまざまな異言語を持つ人たちが力を合わせてミッションをクリアしていく体験型エンターテインメント「異言語脱出ゲーム」について、異言語Lab.代表の菊永ふみさんに話を聞いた。

異言語脱出ゲーム「5ミリの恋物語」開催

一般社団法人 異言語Lab.は9月8日(土)と9日(日)に、異言語脱出ゲーム「5ミリの恋物語」を開催する。

手話を使う人、知らない人、日本語を音声で使う人など、さまざまな異言語を持つ人たちが力を合わせてミッションをクリアしていく体験型エンターテインメントだ。

【ストーリー】異なる言語を使う2つの村の間に、小さな恋をはぐくむ男女がいた。その距離は近いようで遠い。主役は村人であるあなた。彼らの願いをかなえるために応援するおせっかいな村人たちの愛が、村の歴史を変える。

出典:「異言語Lab.」ホームページ

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「異言語×謎解き」の新しいゲーム

「異言語脱出ゲーム」とは、手話や筆談、身振り、音声など異言語を謎解きに取り入れたゲーム。

異言語を織り交ぜた謎の数々を、聴者とろう者、難聴者が一緒に参加して助け合うことで解いていく仕組みになっている。

出典:「異言語Lab.」ホームページ

出典:「異言語Lab.」ホームページ

同ゲームを考案したのは、2018年4月に設立した「一般社団法人 異言語Lab.」。ろう者である菊永さんを代表として、聴者・ろう者・難聴者で構成されているラボだ。

異言語同士の接点が社会に与えるイノベーションを探求しており、異言語との融合エンターテイメント体験によって、自分とは異なるものと繋がり、通じ合い、笑いあえる場を提供すべく活動している。

「異言語の壁を壊したい」と発案

菊永さんは「異言語脱出ゲームは幸運の連鎖で生まれたゲームです」と話す。

福祉型障害児入所施設の児童指導員として、ろうの子どもたちの支援をしていた2015年に、グローバル金融機関の社員とろうの子供たちの交流企画を担当した。

子供たちが社員に手話を教える「手話学習会」がメインの交流会だったが、学習会後の昼食タイムになると、社員は社員同士で固まって音声で会話し、子どもらは子供たちで固まって手話で談笑してたという。

菊永さんはその光景を目の当たりにして、ショックを覚えたそうだ。

もちろん、同じ言語を持つ者が集まるのは自然な流れです。共通の言語を持つ集団は心地の良い空間であり、なくてはならない大切な場所なのは確かです。

でも、それで満足していいのだろうか。もっとお互いが向き合い、通じ合い、笑い合える関係を作ってもいいのでは、と考えていました。

そんなある時、プライベートで「謎解きゲーム」をやった経験を上司に話すと、「交流会でやればいいじゃない」とアドバイスされたそう。それでゲームを作ってみたところ、思いのほか好評だったという。

異なる言語を持つ者同士がコミュニケーションを取り、協力し合って謎を解いて、ミッションをクリアしていく。

その中で通訳を介さずに直接関わり、手話を使ってみたり、筆談してみたりする過程と謎解き独特のハラハラドキドキな非日常空間が面白かったようです。

その後、「企業研修でやってほしい」と毎年依頼がくるように。本業の傍らで謎解きゲームを制作しているうちに、あれよあれよとゲームが成長していったという。

提供:異言語Lab.

提供:異言語Lab.

手話と謎解きの相性に着目

菊永さんは、「手話」と「謎解き」は相性がいいと考えているという。

福祉分野での技能という印象が強い手話だが、近年は言語として認識されつつあるそうだ。

そこにエンターテイメントとしての異言語脱出ゲームを提供することで、福祉に興味のない人も、手話を知らない人も参加しやすく、ゲームの過程で手話の面白さに気づき、新たな価値観が生まれると期待しています。

手話は見たもののイメージをそのまま表してつくる言葉であり、微妙な手や指先の動き、眉、目、唇、首などの顔の動き、向きを使って一つの空間を作り、ストーリーが出来上がっているそう。

その空間で何が行われているかを分からないなりに読み取ってみること、それが聴者にとっては謎を解く感覚と似ています。

ポイントは「コミュニケーション」

同ゲームを上手く進めるために重要なのは「コミュニケーション」だという。

同じ言語を持つ者だけで喋っていると、どこかでズレが起きて上手くいかなくなります。お互いに伝え合おうとする気持ちと行動があれば、チームの雰囲気は良くなり、脱出が近くなります。

答えが分かっていても、上手く伝えることができずに脱出に失敗することもあり得ます。

しかし、脱出できなくても、密度の濃いコミュニケーションが取れたチームほど絆は深まり、ゲームへの満足度は高いようです。

ぜひ、その体験をしてほしいです。

提供:異言語Lab.

提供:異言語Lab.

外国人とも「言葉の壁」を越えて談笑

実際に同ゲームを通じて、異なる言語を持つ人たちの絆が深まったことがあるという。

以前、ろう者が案内役になり、聴者が覚えたばかりの手話を使ってろう者とコミュニケーションを取りながら謎を解く「異言語脱出ゲーム『うしなわれたこころさがし』」を開催したときのことだ。

筆談もできず、すべて手話やボディランゲージで謎を解いていくゲーム。参加者の中に外国人がいたが、不思議と会話が成立して脱出に成功したという。

謎解きで、イメージや状況を共有するための手がかり(絵、映像、ピクトグラム)さえあれば、どんな人とでも言いたいことが大体伝わるのだと思います。

ゲーム終了後、案内役のろう者と外国人は「どこの国?」「パスタ?」「ビール?」「そうそうビール!」「ドイツか!」と談笑を楽しんだそうです。

はじめての一般公開へ

今回開催される「異言語脱出ゲーム『5ミリの恋物語』」は、神話「バベルの塔」がモチーフだという。

「バベルの塔」をモチーフにスタッフであれこれと話し合いを重ねた結果、最終的には、ある村の男女の恋物語に行き着きました。それが5ミリの恋物語です。

開発にあたっては、舞台設定に徹底的にこだわったそうだ。

伝え合うことを重点に置いたゲームになっていると思います。

異なる言語を持つ者同士が協力し合わないと解けない仕組みになっております。音声言語を使う者と視覚言語を使う者が対等な人数になるように組んでおります。

異言語脱出ゲームはこれまで、企業や大学、福祉イベントなどで公開してきたが、広く世の中に一般公開するのは今回が初めてだという。

出典:「異言語Lab.」ホームページ

出典:「異言語Lab.」ホームページ

代表「通じ合う世界を創っていきたい」

異言語Lab.は今後、このゲームを娯楽施設や学校、社内研修や海外などで幅広く活用できるようにしていくという。

さまざまな人に手話や身体表現で伝えることの面白さ、自分と異なる者と関わり合い、通じる喜びを体験してほしいです。

ゲームのほかに、「コミュニケーションツールの開発」「画像処理や解析技術を活用したコミュニケーションの可能性」「異言語間の違いに着目した情報伝達の在り方」を探求した実験の場も作っていきたいと考えているそうだ。

ラボで開発されたツールをゲームを通じてお客様に体験していただくことを重ね、実験と実践を繰り返して、通じ合う世界をつくっていきたいです。

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Text by 長澤まき

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