シェア

世界一臭い食べ物「シュールストレミング」は輸入も激ムズ!貿易会社に苦労話を聞いた

提供:三幸貿易

提供:三幸貿易

世界一臭い食べ物と言われる缶詰「シュールストレミング」の輸入について、輸入を手掛ける貿易会社と東京税関に詳しい話を聞いた。

シュールストレミングの「厳重な輸入」が話題に

食品輸入を手掛ける三幸貿易株式会社(東京都中央区)がこのほど、公式Twitter(@SANKO_TRADING)にスウェーデンのニシンの塩漬け「シュールストレミング」の輸入の様子を投稿した。

厳重に梱包された木箱には「危」と書かれた紙が貼ってある。「去年、輸入した時の梱包状態です。国連番号3334に該当するため、恐ろしく高い運賃と制約があります。誰も食品とは思わなかったそうです」とコメントしている。

シュールストレミングの輸入時 提供:三幸貿易

シュールストレミングの輸入時 提供:三幸貿易

SNS上では「凄い厳重」「こうやって輸入されるのか」「扱いが爆弾みたい」「危険物なのか…」「持ってくるだけで一苦労」「なるほど高価なわけだ」など多くの反響が寄せられ、一躍話題となった。

輸入元「こういう禍々しい表記をみることは通常ない」

「危」という紙が貼ってあるが、シュールストレミングは「危険物」扱いなのか?

三幸貿易株式会社シュールストレミング部長・伊藤謙さんに話を聞いた。

漢字表記なので、国際規格の危険性ラベルではないのですが、国内輸送業者向けで書かれたと思います。危険物扱いになっています。

当社は食品輸入商社なので、こういう禍々しい表記を見ることは通常ないのですが。

提供:三幸貿易

提供:三幸貿易

同商品が該当する「UN NO.3334」とは、航空規制の液体貨物を指す国連番号。もともと各国で好き勝手に設定していた危険物の名前や取扱が国際貨物になると問題になってしまうため、世界で統一した約3000種類の危険物の番号だという。

この番号に従って、各国で国内配送、航空貨物、海上貨物、輸出、輸入とさまざまな規制・法律があり、すべてをクリアして初めて輸出入可能になるそうだ。

数多くの制約、大半が輸送コスト

危険物の輸送・積載にあたっては、場合によって専用タンクが必要になるなどたくさんの制約があるそうだ。

シュールストレミングに関しては、ほぼすべてのエアラインが積載を禁止していることや温度管理が必要なこと、輸入自由化されていないことなど、制約が数多く存在しています。

日本でシュールストレミングは5000円ほどで販売されているが、同社によると、価格の約7割は輸送コストで約2割は関税だという。

シュールストレミングの輸入時 提供:三幸貿易

輸入時のシュールストレミング 提供:三幸貿易

東京税関「『輸入割当』等が必要な場合も」

東京税関に、シュールストレミングの輸入に関する規制や決まりについて聞いた。

外国から貨物を輸入する際、輸入申告を行い、税関の検査が必要とされる貨物については、必要な検査を受けた後、関税、内国消費税及び地方消費税を納付する必要がある場合には、それらを納付して輸入の許可を受けなければなりません。

また、関税関係法令以外の法令により許可・承認等を要する貨物である場合には、税関の輸入許可を受ける前にこれら法令の規定する許可・承認等を受けておく必要があります。

シュールストレミングは、食品衛生法により「食品等輸入届出書」及び外国為替及び外国貿易法、輸入貿易管理令により「輸入割当」が必要となる場合があります。(東京税関広報室)

提供:東京税関

提供:東京税関

輸送コーディネート5社に断られた

三幸貿易がシュールストレミングの輸入を実現させるまでには、2つの解決すべき障壁があったという。

一つは「輸入許可」です。

シュールストレミングの原料は“大西洋にしん”なので、税番号確定と輸入許可をとる必要があり、色々な役所で折衝が必要でした。

税関では、実際に缶を開けて確認する必要があり、「死にそうになりながら検査した」と言われました。

もう一つは「輸送コーディネート」です。5社に断られた挙げ句、ようやく引き受けてもらいましたが、それも遅々として進まず大変な思いをしました。

シュールストレミング 提供:三幸貿易

シュールストレミング 提供:三幸貿易

輸入にあたって最も大変なのは、スウェーデンから日本への「国際輸送」だと話す。

伊藤さんによると、シュールストレミングを生産するスウェーデンは北欧で気温が低く、現地の人たちはシュールストレミングを常温で置いており、輸送・保管時も冷蔵していないという。

しかし、日本へ輸送する場合は「温度管理」が必要。中で発酵が進んでいるので一定の温度以下にしておかないと、「激臭ガス」でパンパンに膨らんでしまう。

もちろん、食べる部分がありませんので、嫌がらせや復讐以外に商品価値が無くなります。しかし、冷凍もできません。冷蔵です。

開いた時におぞましい臭いのガスと液体をともに噴出するため、万が一、荷室内で開いてしまった場合、他の荷物が全面するだけでなく、コンテナや飛行機が使用できなくなってしまうそうだ。

海上便も航空便も嫌がる貨物

シュールストレミングは、「海上も航空も嫌がる荷物」なのだという。

海上コンテナの場合、赤道付近を通ることからコンテナ内部が時に60度を越えるため、「冷蔵のリーファーコンテナ」を使用する。

しかし、同コンテナは通常、混載ではなくコンテナ1本単位での契約になるという。

シュールストレミングを1コンテナ買うのは無謀過ぎます。シュールストレミングは鮭缶のように毎日の食卓に乗るわけではありません。

さらに、積み合わせのできる業者は限られており、スウェーデンから遠く、他の繊細なグルメ食品との積み合わせも怖がります。

シュールストレミング 提供:三幸貿易

シュールストレミング 提供:三幸貿易

一方で、航空貨物の場合は、そもそも航空会社が社内規定で禁止しているという。

禁止していない会社の場合でも営業担当者が、“Surstrommiongs”の文字を見ただけで逃げ帰ります。

品名を書かずに塩水漬けのニシンとして申請しても、「スウェーデンのニシン?」と勘づかれしまいなかなか搭載してもらえません。

かつて缶の製造技術が未熟だった頃に自然爆発が多発したためにできた規定らしいが、現在は自然爆発をすることは「多分ない」とか。

また、ストックホルムまで陸送でも10時間、独ハンブルクや蘭ロッテルダム、仏のル・アーブル港までとなるとさらに別の輸送を組合わせなければならず、かなり難易度の高い国際輸送なのだという。

悪臭の先にある旨味と楽しい時間

そんなにも大変な思いをして、なぜ同社はシュールストレミングの輸入を続けているのか?

シュールストレミングというのは、本当に変な食べ物です。

実は、人が食べ物を手にする理由はそれほど多くありません。空腹を満たす、栄養を摂取する、美味しい、可愛い、など。

そんな中で、「臭い」と言う理由で買われる食べ物なんて他に思いつきません。

シュールストレミングを1人で食べる人はあまりいません。友達や仲間と集まって、みんなで悪臭を嗅いで楽しく(?)過ごせる。当社としては、そういう「悪夢のような楽しい時間」を共有して頂きたいと思って輸入をしております。

ただし、私たちも食品を扱う以上は、騒いで臭いを嗅いだだけで捨ててしまう、と言うのはまったく望んでおりません。

折角の機会ですので、キワモノ扱いして適当な食べ方をされる前に正しい食べ方を通してスウェーデンの文化を理解して頂きたいと思っております。

実際の所、正しく食べればシュールストレミングはそれほど不味くありません(臭いは最悪ですが)。

スウェーデンで日本の鮒寿司をメチャメチャな食べ方をして、臭い臭いと騒いで捨てていたら、悲しい思いをしますよね?

私たちは、同じ思いをスウェーデンの生産者の方たちにして欲しくないのです。

汚物のような悪臭の先にある、発酵食品の旨味にたどり着いて欲しい。そして、その経験を思い出として、友達と共有して頂きたいと思っています。

幾多の困難を乗り越えて日本に届く世界一臭い食べ物の缶詰。そこには、貿易会社の並々ならぬ情熱も詰まっている。

Posted: |Updated:

Text by 長澤まき

Ranking

All Categorys Ranking総合ランキング