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いい加減気づけよ!急展開すぎる中小機構の動画が話題、制作者に聞くその狙いとは

出典:「中小機構」Press Release

出典:「中小機構」Press Release

予想外の展開に驚かされる中小機構の動画「今日、部下が会社を辞める。」について、制作を手掛けた面白法人カヤックに取材した。

中小機構のPR動画「今日、部下が会社を辞める。」

中小企業支援を行う経済産業省所管の独立行政法人・中小機構は10月、PR動画「今日、部下が会社を辞める。」を公開した。

中小企業の生産性向上を促進するために開設した「低コストで簡単に導入できるアプリ等のITツール紹介等を行う特設サイト」のPR動画だ。

予想外の展開が話題に

動画は、上司が部下に花束を渡すシーンからスタート。

感動を誘うバックミュージックが流れる中、上司は部下と過ごした日々をしみじみと思い出し、「あっという間の、3年間」「私はいい上司だっただろうか」と笑顔で部下を送り出そうとする。

その後、「働くすべての人を、応援したい。」という字幕と同機構のロゴが表示され、動画は終了するかに思えた。

【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。/YouTube

【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。/YouTube

しかし、その後も動画は続き、雰囲気は一転する。

「勝手にいい話にするな!うちの会社、次から次に若手が辞めて…いい加減気づけよ!」と悲痛な叫びをぶつける部下に、上司は茫然とした表情。

真っ暗な社内で残業する社員や荒れる社員の映像、「人手不足を残業などの業務過多で解決する中小企業が60.7%」「中小企業の新入社員の52.4%が3年以内に離職」など中小企業が抱える問題が流れ、最後は部下が上司にタックルする衝撃の展開となっている。

出典:「中小機構」Press Release

出典:「中小機構」Press Release

動画について、ネット上には「感動系?と思ったら全然違かった」「良く見ると、不満をためる要素がいっぱい」「限りなくノンフィクションに近いフィクション」「コレまさにウチの会社だわ」「衝撃的だったけど、綺麗ごとじゃなく現実を突きつけててすごいなと思った」などさまざまな声が寄せられている。

経営層と若手の「ギャップ」を表現

面白法人カヤックのプランナー/ディレクターの平野俊介さんに詳しい話を聞いた。

—–前半と後半でストーリーの雰囲気を一変させた狙いは?

中小企業は大企業と比較しても人手不足問題が顕著です。その中でも若手社員の離職率は深刻な問題です。

「なぜ若手が辞めてしまうのか」。理由はさまざまですが、気が付いたのは、辞める行為自体がネガティブな理由であろうと、美化されることが多いということです。最近は「退職代行サービス」というのも聞きますが、若手が本音を言えない環境に置かれていることを表しているかもしれません。

経営層側と若手社員側の間に、大きなギャップが生まれていると感じ、それを軸に今回の企画を設計しようと考えました。

前半は上司目線で、感動ストーリーに。後半は、部下目線で、感動ストーリーをひっくり返す内容にすることで、両者のギャップをセンセーショナルに表現しました。

後半部分はインパクトを強めるために誇張して描いたそうだが、実際の現場でも、このようなギャップは起きていると感じているという。

【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。/YOUTUBE

【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。/YOUTUBE

耳に残りやすい音楽で、メッセージを響かせる

—–動画作成にあたって「工夫した点」は?

多々あるのですが、その中でも「音楽の世界観」を強く意識して作りました。

特に後半の音楽は、「荒野の果てに」という賛美歌を使用しています。後半のスローモーションと相性がいいのと、耳に残りやすいので後半のメッセージが響きやすいと感じています。

音楽以外にも、後半のシーンは、オフィスを可能な限りめちゃくちゃにするなど、表現を過剰にしてインパクトを強めています。また映像のトーン&マナーをやや青みがかかった画にすることで、緊張感とシリアス感を強調しました。

—–動画の反響は?

You Tubeでの再生数が公開から10日間で、50万再生を突破しました。

Twitter上でも100万再生されるなど、WEBを中心に話題になっています。ユーザーの反応も好意的なものがほとんどで、大きなインパクトを残せたと感じています。

【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。/YouTube

【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。/YouTube

まず「中小企業の経営者」に伝えたい

—–この動画で、誰にどのようなことを伝えたい?

まず第一に、中小企業の経営者に伝えたいです。

人手不足問題が深刻化しているからこそ、ITツール促進などの生産性向上で、少しでも社員の負担を減らし、会社が古い体質から抜け出すことは大事だと考えています。

人手不足問題は、複雑な事情が重なっていることも多いので、業務のIT効率化という施策だけで全て解決するわけではありません。

でも、会社側がITツールを使い社員への負担を少しでも軽減して、会社が古い体質から変わっていくことは、若手の離職率を低下させる1つの理由になると考えています。

ただ、WEB動画ということもあり、経営者層が多い年齢層に直接届かない可能性もあるとして、その家族や従業員、中小企業を支援する仕事をしている人などに届けることで、周りから経営者層に伝えてほしいとも思っているという。

【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。/YouTube

【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。/YouTube

「見る側の立場」を第一に考えて作成

中小機構は今年1月にもPR動画「社畜ミュージアム」を公開した。

「社畜あるある」を美術館で紹介するWEBムービーで、斬新なブラックユーモアさが話題となり、SNS等で200万回以上再生された。

—–前作から作風をガラリと変えたのは、なぜ?

前回は、中小企業における長時間労働などの社会問題を提起するために、Twitterで盛り上がりやすい「社畜」というワードを斬新な切り口で見せることで、話題化を狙いました。

インパクト重視でネタ的要素も強かったのですが、会社の働き方を見直してもらう、議論してもらうための1つのきっかけになればと思い企画しました。

今回は、メッセージをしっかり伝えるための企画構成にしています。そのために前半で大きなフリを作り、メッセージを盛り込んだ後半パートを集中して見てもらえるように設計。

映像トーンも深刻な問題であることを強く感じてもらうために、大きく路線変更して、シリアスなトーンにしました。

中小機構の動画は、前作、今作ともに人々の心に届く話題作となっている。

—–PR動画はどのような思いを込めて作成していますか?

企画する際は、なぜこの動画をユーザーがシェア・ツイートしたいと思うかをポイントに考え、企画を設計するように心掛けています。

そのためにさまざまなユーザーの立場に立って、動画を見る前から見終わった後までのリアクションを細かく分解しながら、企画に落とし込んでいます。

よく勘違いされるのが、面白い動画を作れば広まる・拡散されると思われているのですが、そうではありません。「この動画おもしろかった」という感想だけでは、それ以上Twitterで議論されることはないのです。メディア側としても記事を書きにくいはずです。

今後も、見る側の立場を第一に考え企画に落とし込むことで、心に届くPR動画を制作していければと思います。

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Text by 長澤まき

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