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障がい者によるアートを社会で共有しよう!渋谷区独自の書体「シブヤフォント」が目指す先とは

提供:フクフクプラス

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東京都渋谷区が取り組む「障がい者アートデータの公共化」について、協力する株式会社フクフクプラス代表取締役の磯村歩さんに話を聞いた。

全国初の障がい者アートデータを公共化

渋谷区では、全国初という「障がい者アートデータの公共化」事業が行われている。

渋谷区と区内の支援施設、フクフクプラスが連携して、障がい者アートデータ「シブヤフォント」を公共化し、活用を促す場をつくる事業をスタート。同フォントをダウンロードできるサイト「SHIBUYA FONT(シブヤフォント)」を公開した。

渋谷駅直結の渋谷ヒカリエで11月1日~14日に行われる「であい、つながるデザイン展」で、同フォントを活用した限定商品を試験販売する。

提供:フクフクプラス

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デザイン学生制作のアートデータ

「シブヤフォント」とは、障がい者とデザイン学生が創作したアートデータ。

渋谷区内の障がい者が描いた文字や絵を、区内の専門学校・桑沢デザイン研究所の学生がアレンジし、フォントやパターンとしてつくり出した。

提供:フクフクプラス

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区公認のパブリックデータに認定・公開

日本では、今年6月に「障害者文化芸術活動推進法」が全会一致で可決・成立。障がい者によるアートの活用が進められている。

「ちがいをちからに変える街」を掲げる渋谷区は、シブヤフォントを「区のパブリックデータ」と認定した。

障がい者アートの公共化は、もともとは長谷部健区長の「渋谷らしい“渋谷みやげ”をつくりたい」を発端に、同区の障害者福祉課が、地域のつながりづくりも兼ねて障がい者支援施設とデザイン学生の共同開発を模索するところから始まったという。

そうして、研究所の講師でもある磯村さんが両者を繋げる形でスタートしたそうだ。

7〜8名の学生が同区内の6カ所ほどの障がい者支援施設を回った上で7〜8案の提案があり、その中から選ばれたのが「障害のある人の文字をフォントにする」というアイデアでした。

フォント化することで、障害のある人の創造物を誰でも使うことができ(公共化)、ひいては障害者理解が進むだろうという点が評価されました。

▼シブヤフォント使用の商品

提供:フクフクプラス

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実現までには様々な課題

シブヤフォントを実現するまでには、さまざまな課題があったという。

実際に多くの人々に使ってもらうためには、ニーズに応じたバリエーションや誰でもダウンロードできる環境の整備などが必要だ。

まずバリエーションを増やすため、複数の障害者支援施設で連携して取り組むことにしました。

しかし、必ずしも障がい者の文字の全てが特徴的なわけではなく、施設における障がい者の創造性を育む環境づくりが必要でした。

そこで国内外の障害者支援施設とアートの共創活動に取り組んでいるグラフィックデザイナーのライラ・カセムにメンバーに加わってもらいました。

磯村さんによると、障がい者の方には特徴的でユニークな図柄や絵を描く人が少なくないという。

そこで、パターンデザイン(縦横に並べて生地などのグラフィックにできるもの)もラインナップに加えることにしました。

パターンならば、フォントと同じようにお客様が自由に組み合わせてホームページやチラシのグラフィックに使っていただけます。

フォントと同じように“障害のある人の創造物を誰でも使うことができる”というコンセプトにも合致します。

さらに、より多くの方々に使ってもらうためにダウンロードできるホームページを公開。またフォントやグラフィックを採用した試作品を様々なイベントで紹介した。

このような試行錯誤を経て、2017年度にはフォント11種類・グラフィック44種類をラインアップし、渋谷区の刊行誌、民間のチラシやホームページ、企業の商品にも採用されたという。

障がい者アートを“絵”の形で展示するのではなく、誰でも使いやすいフォントやグラフィックにすることで、多くの方々の関心を引き寄せられたと思っています。

提供:フクフクプラス

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普段から感じられるものに

障がい者とデザイン学生が制作したアートデータを「シブヤフォント」と名付けたのには、こんな思いがあるという。

フォントというのは、使用者が文章として組み換えるなど関わり方の余白のある創造物です。

フォントにすれば、私たちの日常生活の中に自然に溶け込んでいくはず。同じく、パターンデザインも使用者が縦横に並べるなど自由に加工できます。

アートを額に入れて鑑賞するという静的な関わりではなく、もっといろいろな人に関わってほしい。特別なものではなく普段から感じられるものにしたい。

こうしたことがソーシャルアクションにつながり、やがて渋谷を好きになるシビックプライドを醸成する。

こんな思いを込めて「シブヤフォント」と名付けました。

出典:「フクフクプラス」Press Release

出典:「フクフクプラス」Press Release

同フォントデータには、無料の「FREE DOWNLOAD 2016 model」と有料の「ONE COIN DOWNLOAD 2017 model」がある。

まずはシブヤフォントの入り口として誰でも気軽にお試しできるよう無料のものを用意し、実際に商品に採用する場合は、障がい者支援施設の工賃向上に貢献したいと考え、有料のものをラインナップに加えました。

有料版で得たお金は、手数料を除いて支援施設への支援金として活用されるそうだ。

地域に生まれたつながり

シブヤフォント事業を始めたことで、早くもこんな影響が現れているという。

活動によって、地域につながりが生まれたことを実感しています。

今まで、障がい者支援施設と学生とはなかなか接点がなかったのですが、障がい者支援施設のレクレーションに学生が自主的に参加するなどの交流が生まれています。

 

障がい者アートの公共化・活用により、今後どのような効果を期待しているのか?

そもそもは障がい者の創造物が魅力的であることを学生が見出したことが発端です。

この魅力が広がることで、障害のある人の可能性を多くの方々に知っていただけます。

ひいては多様な特性の方が共に暮らし、尊重し合うダイバーシティ社会への一助になるでしょう。

提供:フクフクプラス

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「渋谷を代表するお土産」への成長を目指す

今後のビジョンとしては、まだまだフォントやグラフィックのデータを増やし、年賀状や挨拶状のテンプレートなど、より使いやすいデータも提供していきたいと考えているという。

さらに、同データを活用した商品化もどんどん進め、障害者支援施設で製造している商品のみならず、多くの企業に採用を呼びかけていくという。

こうしてシブヤフォントを採用した商品が、いずれ渋谷を代表するお土産に育っていくことを目指していきます。

障がいのある人の創造物が、くらしの中に自然に溶け込んでいるのも、ダイバーシティのまち・渋谷区だからできること。

これからも、一人でも多くの方が、障害者支援施設や学生と交流し、地域のつながりづくりに加わることを願っています。

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Text by 長澤まき

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