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世界初!ペットボトルを活用する「心肺蘇生訓練キット」が誕生

出典:FastAid

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ペットボトルの空き容器を使った心肺蘇生訓練キットについて、一般社団法人ファストエイド代表理事の小澤貴裕さんと玄正慎さんに話を聞いた。

ペットボトルで心肺蘇生訓練

ファストエイドは、心肺蘇生訓練をペットボトルの空き容器で簡単に行えるキット「CPR TRAINING BOTTLE」を開発した。同社によると、このようなキットは世界初という。

心肺蘇生(CPR)の際に胸を押すのに必要な力が、空のペットボトルを押す力とほとんど同じであることに注目し、精密測定により使用可能なペットボトルを特定したCPR訓練用キットだ。

日常で手に入れられるペットボトルを用いて、いつでも・どこでも・誰でもCPR訓練をすることが可能となる。

提供:FastAid

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胸を押すだけの短時間で覚えやすい講習

キットは「ペットボトル」「訓練用簡易シート」「ペットボトルラベル」「レクチャー動画」の4点から構成されている。

訓練は2人1組で実施。中身を飲み切った空のペットボトルの蓋をしっかり閉めて、広げたシートにセット。1人がボトルを保持し、もう1人はレクチャー動画を見ながら曲のリズムに合わせて2分間のCPR訓練を行う。

出典:FastAidプレスリリース

提供:FastAid

市民が成人の心停止に対して行う心肺蘇生では、「胸骨圧迫のみ」でも人工呼吸と組み合わせなた場合と比較して予後に大きな影響がないことを示す複数の研究があることから、重点を「胸を押すことだけ」に絞った。

短時間で記憶に残りやすく現場で実践しやすい講習を目指しており、キットが心肺蘇生を初めて行うきっかけになることを目標にしている。

どの家庭にもあるものをと発案

キットを開発した背景には、訪日外国人の増加などにより「市民による救急対応」の重要性が高まっていることを挙げる。

特に2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックの際には救急搬送される人が増えると推測されており、救急システムの破綻が危ぶまれているという。

ファストエイドによると、日本では年間7万人以上が突然の心停止で亡くなっている。

119番通報から救急車の到着まで全国で平均8.5分かかっており、心停止してからの救命率は1分経つごとに7~10%低下する。

救急車が到着するまでの間、絶え間なくCPRを続ければ、実施しない場合に比べ救命率は約2.5倍に高まるが、突然の心肺停止現場では居合わせた市民によるCPRは43.9%の割合で実施されていないのが現状という。内閣府の調査では、57.3%の人が応急手当てに自信がないと回答している。

ファストエイドは、CPRの迅速な普及啓発が必要という観点から、簡単かつ短時間にCPRを習得できるキットの開発を進めていた。

CPR訓練の道具として「ペットボトル」に目を付けたのは、次のような経緯があるという。

突然の心停止で倒れる場所の7割が自宅です。そこには家族しかいません。

救命率を上げるは、家族みんながCPR(心肺蘇生)をできるようになり、救急隊が来るまでCPRを交代してやり続けられることが必要です。それには家族が自宅でCPR訓練できるのが一番良いと思いました。

しかし、そのために自宅用として訓練用人形を買うとは思えませんでした。そこで、どこの家庭にもあるものを使ってCPR訓練ができないかと考えたときに、ペットボトルを思いつきました。(玄正さん)

現在、使用するペットボトルは「サントリー天然水」の550ミリリットル、2リットルを推奨している。

ペットボトルは商品ごとに微妙に弾力が違うので、訓練に使う人形と同じ弾力のボトルがあるはずだと思いました。そしてサントリー 天然水のペットボトルが人形とほぼ同じ弾力であると発見し、精密測定したのです。(玄正さん)

▼CPR訓練用人形とペットボトルの測定結果

提供:FastAid

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同社推奨のペットボトルは全国で手に入るので、自宅で家族と一緒に訓練することもできる。訓練動画はYouTubeで公開している。

興味を持ってもらえるよう、デザインを工夫

キット開発にあたっては、興味を引き出すよう「デザイン」にこだわった。

これまでCPR訓練に関心のなかった方にも興味を持っていただき、「やってみよう」と思っていただくために、キットをポップなデザインにすることと、かっこいい訓練動画の作成にこだわりました。

動画では「音楽に合わせて2分間押し続けましょう」と体験を促すものにしています。この音楽も、1分間に100〜120回のCPRのリズムに合わせてBPM110の曲にしています。(玄正さん)

提供:FastAid

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自信をつけて緊急時の行動に繋げる

キットの発表後、救命講習の場で活用したいという問い合わせが多くあり、現在は販売に向けて準備を進めている。

CPRトレーニングボトルなら全員分のキットを用意できますので、大勢で一斉にCPR訓練することができ、音楽に合わせてやることでとても盛り上がる訓練を行うことができます。(小澤さん)

公開に先立ち、自治体が主催するイベントでの啓発活動や、企業や団体での救命講習を行ったそうだ。

講習では心臓マッサージのやり方のコツをお伝えした上で、しっかりと訓練する時間をとっています。

最初に「目の前で人が倒れたとき、自信を持って対応できる方、手を挙げてください」とお聞きすると手が挙がらないのですが、講習の最後に同じ質問をするとみんな手が挙げるようになります。

自信を持っていただくことが、緊急時の行動につながります。受講者の満足度はとても高く、「従業員全員に受けさせたい」という声もいただいています。(小澤さん)

提供:FastAid

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同社はキットを普及させることで、いざという時にお互いに助け合える「共助社会の実現」を目指している。

日本では1日に200人が心臓突然死しています。突然の心停止は誰にでも起こるリスクがあります。その時、いつどこで倒れるかを選ぶことはできません。

もしあなたの心臓が突然止まり倒れたとき、すぐに駆け寄りCPRしてくれる人がいなければ、そこであなたの人生は終わりです。

あなたの家族はCPRができますか?あなたの友達や同僚はCPRができますか?倒れたあなたのそばを偶然通りかかった人はCPRができますか?

そのとき助かりたければ、誰もがCPRできる社会を作るしかありません。そのことを多くの方に気づいてほしいと思っています。

私たちは最も手軽にCPR訓練できるキットを開発しました。次はこれを使って多くの方にCPRを覚えていただく仕組みを作りたいと思っています。(玄正さん)

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Text by 長澤まき

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