シェア

歴史ある川越のお寺に“現代アートの襖絵”が誕生!「アーティストが芸術を追及する姿と、僧侶が仏道に邁進する姿はどこか通ずる」

最明寺の襖絵=提供:最明寺

最明寺の襖絵=提供:最明寺

埼玉県川越市の「揺光山 最明寺」が先日、ユニークな絵柄の襖(ふすま)を設置した。

お寺と現代アートが融合

最明寺(さいみょうじ)の襖に先日、市内に住むアーティストYOHAKUさんとコラボした現代アートが描かれた。

龍の背に乗るお釈迦様とそれを囲う可愛い妖怪たち。今にも襖から飛び出して来そうな迫力のある襖絵だ。

12月4日~12月21日の毎日10時~17時まで、寺院で展示している。

提供:最明寺

提供:最明寺

言葉や人種を超え訴えるアートに着目

最明寺は鎌倉時代(1262年)に北条時頼が創建したことに始まる。歴史ある寺が、なぜ現代アートとの融合を試みたのか。

副住職の千田明寛(せんだみょうかん)さんによると、先代の住職である千田さんの祖父が芸術分野に明るい人だったこともあり、幼いころからアート作品に囲まれて育ち好むようになった。

ただ、千田さん自身は自分では何も描けずつくれず、そのせいか「無から有」のものを作り出すアーティスト達に尊敬の念を覚えているそうだ。

絵にしかり、音楽にしかり、アートというものは言葉や人種を超えて私たちに訴えかけてくるものがありますよね。

それは勇気であったり、感動であったり、時には悲しみなどのネガティブな感情であるかもしれません。

禅語に、文字では真理を説くことは出来ないという意味の「不立文字」という言葉がありますが、それに通ずるものがあるかもしれませんね。

人と人を結ぶ本来の役割へ

千田さんは、日本人の寺院離れが進む今、寺院に必要なことの1つとして、若い世代や女性たちにお寺と仏教に興味を持ってもらうことを日ごろから挙げる。

子供はこれからの時代を担う宝です。そして、子供が集まるとお母様方の女性たちも集まってきます。

お寺とは本来は人と人、そして人と社会を結ぶ役割を担っていました。葬式仏教が悪いことだとは決して思いませんが、かつてのお寺の役割に立ち返る時が来たんじゃないかなと思うんです。

お寺からアートを発信して明るい話題を提供したいというのには、そのような思いが込められています。

そんな折、寺の床の間の襖が真っ白で少し殺風景だったので誰かに絵を描いてもらえないかと思っていたところ、YOHAKUさんを紹介してもらったそうだ。

YOHAKUさんももともと仏教への関心が強く、小さい頃からお寺などに行くのが大好きで、インスタグラムにもお釈迦様の絵などを投稿していたこともあり、すぐに承諾してくれたという。

アーティストが自分の芸術を追及する姿と、私たち僧侶が一心に仏道に邁進する姿はどこか通ずるものがあると思っています。

実際に、YOHAKUさんと話していると心の中に仏道が生きているなと感じました。

提供:最明寺

提供:最明寺

YOHAKUさんは、これまでクラブのDJやHip Hopperとしても活動していたそうで、千田さんは「お寺を通じなければ一生出会うことはなかったと思う。こういう素敵な出会いも仏教を通じてもらうことが出来ました。有難いことですね。」と話す。

仏教と妖怪の縁、子どもに喜んでもらう

襖絵を描いてもらうにあたっては、やはりお寺であることを考え「どこかに仏教的要素を入れてほしい」とお願いしたという。

いわゆるお寺でよく見る荘厳な龍の絵などの「お寺らしさ」は追及しなくてよいが、お寺とは全く無関係なものでも困るなと。

今回は妖怪たちの百鬼夜行にお釈迦様と龍が入ってますね。

「和の妖怪」を描いたのは、YOHAKUさんが妖怪を専門に描くアーティストだからだ。

提供:最明寺

提供:最明寺

実は、仏教と妖怪は意外と縁が深いという。

千田さんによると、京都の真珠庵というお寺には、室町時代に制作された妖怪たちの「百鬼夜行絵巻」の絵が保存されており、この妖怪行列は仏教の舞楽法会を模していると言われているそうだ。

日本で初めて妖怪学を研究し「妖怪博士」と呼ばれた井上円了さんは、お寺の生まれだったという。

その他にも仏教の地獄と妖怪など、通ずるところはたくさんあります。ゲゲゲの鬼太郎の妖怪たちもオープニングではお墓から出てきますよね(笑)

ただ、一番の要因は私のお寺(最明寺)に昭和に活躍した河童の画家・萩原楽一さんの作品が寄贈されていたことです。

妖怪って本来であれば子供に怖がられる存在のはずですが、この河童は全然怖さがなくて、むしろこんな妖怪が居たら会ってみたいと思えるような魅力があります。

YOHAKUさんの妖怪にも同じような魅力を感じました。子供たちに喜んでもらえるかなと。

▼河童画家「萩原楽一さん」の作品

提供:最明寺

提供:最明寺

アートを通じて日本を元気にしたい

最明寺は、現在もアーティストを募集している。今後もコラボ作品を増やす予定なのか?

ぜひ、何かしたいですね。音楽でも、絵でも、陶芸でも、書道でも、そこに仏教を感じることが出来れば何でもよいです。

オーストラリアで絵の修行していたYOHAKUさんとも話していたのですが、日本でアートだけで生計を立てていくのは相当難しいらしいです。世の中には、これだけ美しい作品を作り出せる人が居るのに埋もれてしまっている。

地域のコミュニテイーとして機能してきたお寺は人と社会を結ぶためのハブになれます。この広い敷地(キャンバス)をアートを通じて盛り上げていきたいですね。

「お寺からアートを通じて日本を元気にしたい」としている。

提供:最明寺

提供:最明寺

自らお寺の外に飛び出して人と出会う

最明寺は現代アートとの融合の他にも、斬新な取り組みに積極的に挑戦している。

今年10月からは「ピンクリボン運動」に参画。お寺をピンクに照らして乳がんの啓発を行った。

私自身が県内のガン緩和ケアセンターでボランティア活動をしていることもあるのですが、やはりお寺って一体何の為に存在しているのかと考えた際に、それは困っている人や助けを必要としている人のためにあると思うんです。

昔は「駆け込み寺」なんて言いました。自分の経験を通じて、乳がんで苦しんでいる人のために何かお寺を通じて力になれないかなと思い始めたのがきっかけです。

提供:最明寺

提供:最明寺

お寺の公式キャラクター「さいみょうくんとさいみょうちゃん」を考案。大ヒットアニメ映画「君の名は」風にパロディした「寺の名は」というイラストも公開している。

提供:最明寺

提供:最明寺

提供:最明寺

提供:最明寺

これらの取り組みに込める思いを、こう話す。

根本にあるのは、私が人と違うことをして、誰かを驚かせたりするのが凄い好きなんです(笑)。

今の社会、お寺だから出来ることってたくさんあると思います。ただ、そう思っていても一般の方にとってみればお寺はなかなか近寄りがたい存在。

あえて自分からお寺の外に出て人のコミュニテイーの中に入って行ってみる。そこで人と出会い、悩み、悲しみ、学び、それを最後はお寺に還元する。それが私にとっての仏道です。

関連タグ:

Posted: |Updated:

Text by 長澤まき

Ranking

All Categorys Ranking総合ランキング