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乳がん手術跡を気にせず温泉に…国を動かした日本初の「バスタイムカバー」20年の道のりを聞く

出典:「ブライトアイズ」ホームページ

出典:「ブライトアイズ」ホームページ

日本初の入浴着「バスタイムカバー」について、製造する株式会社ブライトアイズ・加藤ひとみ代表取締役に取材した。

日本初の入浴着「バスタイムカバー」

平成も残すところあとわずか。平成11年(1999年)に登場し、全国の温泉や温浴施設で着用が広く認められつつある「バスタイムカバー」をご存じだろうか。

バスタイムカバーは乳がんなどの胸部の手術を受けた人が、傷跡を気にせずに温泉を楽しんでもらおうと開発された入浴着だ。

タオルなどと違い、着用したままで湯舟に入れる。素肌と同じように石鹸をつけて洗うことも可能だ。

出典:「ブライトアイズ」ホームページ

出典:「ブライトアイズ」ホームページ

乳がん患者の立場で開発

バスタイムカバーを開発した東京都練馬区の株式会社ブライトアイズは、1999年に代表の加藤さんが地元の長野県で立ち上げた。

乳がんを患っていた加藤さん。当時の乳がん専用のブラジャーに機能不足を感じ、専用のブラジャー(ツーピースブラ)とパッドをつくることを決意したという。

長野県は北海道に次いで温泉の多い土地柄のため、患者会で商品を展示した際に、患者会の皆様から「傷を気にすることなく温泉に入れるブラジャーを作ってほしい」と言われました。

それを聞いて、自身も大好きだった温泉に行くのをためらっていたことに気づき、ぜひ作りたいと思いました。

開発では、特に衛生面と着心地にこだわっている。

温浴施設に認可していただくためには、衛生面で問題のないものをつくらなければなりません。

製品を信州大学で検査してもらったところ、素肌で石鹸をつけて体を洗い流して湯船に入った場合とバスタイムカバーを着けて同じように湯船に入った場合で、湯船の石鹸の成分は変わらないという結果が出たという。

着心地は、温泉を裸で楽しむ感覚を損なわないように、肌を覆う面をできるだけ少なくしました。

何枚も試作品を作り、着けてみて、機能的で着け心地の良い現在の形ができまし
た。

脱衣所で着替える際も、お風呂より明るいので気になります。そこで、お部屋から着けて行け、入浴後はよく拭けばそのまま浴衣などを着ても濡れないように、撥水性のある生地にこだわりました。

出典:「ブライトアイズ」ホームページ

出典:「ブライトアイズ」ホームページ

商品の発売当初から複数のテレビや新聞などで報じられ、多くの反響を呼んだ。

現在も口コミでしょうか、安定して販売されております。購入者様より感謝のメッセージを受けることが1番多い商品となりました。

郵便局の振り込み用紙に毎月3~4通は、「お蔭様で素敵な温泉ライフを楽しんでいます」「楽しく旅行することができました」「おかげで術後も母と温泉を楽しむことができています」「3月から温泉をめぐります!」といったコメントが書いてあります。

全国の患者の働きかけで公共性が認められる

発売してからは、利用についての認知活動に力を入れる。

下着と違って公で着けるものですので、受け入れ側の入浴施設の認可と平行して、一緒に入られる一般の方々への認知を広げることが一番の課題でした。

初めは弊社でポスターを作り温泉施設をまわって掲示をお願いしたり、全国旅行業協会の大会でアピールしたりしました。

概ね良い回答をいただきましたが、当時は日帰り温泉などでは一切の着衣は認めていないといった理由で断られることもありました。

認知の拡大は長野県内だけでも難しかった。それでも、2006年に当時の知事に要望して長野県内の温浴施設にポスターが配布されるに至った。

▼長野県の入浴着ポスター

提供:長野県

提供:長野県

その後、各地の乳がん患者や患者会の人々の働きかけのおかげで、2011年には厚生労働省、国土交通省、総務省から各都道府県の衛生部に文書が出され、多くの県でポスター配布などの措置が取られた。

発売から12年余り。加藤さんの地道な普及活動が、ひとつの実を結んだ。

シャワーキャップのように気軽なアイテムになれば

現在は温浴施設が貸出し用や販売用として購入されることも増えたが、まだ認知は十分ではないと話す。

私も温泉に行くたびにバスタイムカバーの許可をお願いするのですが、従業員の方が「初めて見ました」というところが多いのも現実です。

商品を見せると、どこも快く許可してくれますが、まだまだ周囲の方には気兼ねを感じることも多いです。

商品は2019年で発売20周年を迎える。この間に、丈を少し長くしたり生地をより撥水性の高いものに変えたりと改良を続けてきた。

私は乳がんに罹患して21年目を迎えました。

私を励まして一緒に会社を作った姉は6年前に乳がんに罹患し、3年前に乳がんからの転移のため亡くなり、最初の社員も十数年の闘病の後、昨年同じく乳がんよりの転移で亡くなりました。

乳がんは罹患すると一生のお付き合いになります。術前と変わらない生活を送れるように商品でサポートしたいという思いで仕事を続けております。

バスタイムカバーは良いものを作ったとの自負はありますが、認知のために大変な努力が必要な商品です。現在もですが…。

バスタイムカバーは着けていても素肌で温泉に入るのとあまり違和感のない商品ですので、患者だけでなくタオルで胸を隠す健常な女性の方も含め入浴される女性が皆着けていれば、どんなに気持ちが和らぐかといつも思っています。

裸での入浴が原則の温浴施設に認められて、アメニティセットにつけられるような(シャワーキャップのように)安価な使い捨てのカラフルなバスタイムカバーを商品化することが、ずっと持ち続けている夢です!

Posted: |Updated:

Text by 長澤まき

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