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有田焼で「マイセンのような美しい人形を」佐賀の老舗が“有田焼のフィギュア”に込めた思い

提供:賞美堂本店

提供:賞美堂本店

言わずと知れた陶磁器のブランド「有田焼」。

佐賀県有田町を中心に400年余りの長い歴史を持つ伝統工芸において、新しいスタイルに挑戦する地元企業がある。

老舗陶磁器商社の有田焼フィギュア

1948年創業の陶磁器専門商社・賞美堂本店が昨年2月から、有田焼のフィギュアブランド「momoco」を展開している。

ファーストコレクション「momoco bear(モモコベア)」は、クマ型の磁器に様々な有田焼の作家、窯元がそれぞれの得意な技法で装飾を施した。

手のひらサイズのつややかな白磁の人形に、鮮やかな彩色が映える。その対比は、伝統工芸ながら観る者に清新なイメージを与える。

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

「愛情を伝える有田焼を」と誕生

珍しい企画について、賞美堂本店広報の蒲地(かもち)亜紗さんに尋ねた。

—–「momoco」は、どのような経緯で誕生したのですか?

弊社社長の蒲地桃子が幼い頃より、父が海外出張で買ってくる磁器製人形(リヤドロやマイセンなど)に親しんで育ち、磁器製人形やテディベアを好んでおりました。

現社長は創業から3世代目となりますが、「自分の代で何を成し遂げたいのか」を追求したときに、「愛情を伝える有田焼を作りたい、リヤドロやマイセンのような世界の磁器産地のような美しい人形を作りたい」と思い至りました。

2017年秋頃に着想し、ちょうど同時期に参加していた「佐賀県米国市場開拓事業」にて出展する2018年2月のNY NOW(北米最大の展示会)でのデビューを目指し、開発が始まりました。その後、2018年9月1日に正式販売を開始しました。

—–ブランド名に「momoco」を冠した理由は?

創業70年余の弊社では、オリジナルブランド「其泉(きせん)」による食器を中心としたラインアップを展開してまいりましたが、新たな分野「フィギュア」に参入する当代の覚悟の証として、ファーストネーム「モモコ」をブランド名に据えました。

モチーフにクマを選んだのは、世界中で認知され、愛されている点からだという。

テディベアに代表されるように、その愛くるしいフォルムは人々に安らぎと癒しを与えてくれる。

また、英語では「bear」が生む・育てる・耐えるという意味を持ち、子どもの成長や子どもが苦難を乗り越えてほしいといった願いを込めて、クマをかたどった物がお祝い品として贈られてきたという。

これらの願いが、ブランドの船出にふさわしいモチーフであると考えた。

提供:賞美堂本店

提供:賞美堂本店

ボディの造形にもこだわり

装飾も素敵だが、クマ本体の柔らかなボディも魅力的だ。

—–ボディ制作にあたって、こだわった点・工夫した点は?

ボディデザインは、造形作家である「もち川 幸範」氏に依頼しました。

もち川氏は手作りならではの、やわらかな造形を特徴とする造形作家で、NHK・Eテレの番組「いすのまちのコッシー」の造形も担当されています。

弊社からの依頼としては、以下のような点をお伝えしました。

・高さ11センチ程度、現在のマンションを中心としたライフスタイルにマッチするサイズ
・有田焼の様々な装飾が加わることを前提としたニュートラルな造形

もち川氏がこだわった点は、以下の点です。

・生まれたての赤ちゃんのような清潔感、純粋さ、曖昧さ
・これからどんな色にも染まることができる
・機械的に作られた形ではなく、手のひらの中で形づくられた、ぬくもりのある形

その結果、有田焼の様々な装飾を受け入れる包容力、触れたときに感じる愛らしさ、主張しすぎず、寄り添ってくれるような佇まいが実現しました。

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

—–既存の有田焼の人形との違いは?

これまでの有田焼の人形といえば、獅子や招き猫など日本らしい写実的な造形が多かったのですが、momoco bear のフォルムは、モダンかつ普遍的であり、クマというモチーフも相まって世界中のライフスタイルにマッチすると考えています。

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

「作家・窯元らしさ」との相乗効果を重視

—–伝統ある有田焼の新しい挑戦に、有田焼作家さんたちはどのような反応をしましたか?

「食器以外に挑戦できて楽しい、食器ではできない表現をしてみたい」「賞美堂さんの新しい挑戦がフィギュアとは面白い!」など、お取引のあった窯元さん、初めてタッグを組む窯元さんともに、好意的に受け止めていただきました。

普段、造形からご自身で制作される伝統工芸士さんからは、「いきなりこんな生地に描いてって言われても…」と困惑された様子もありましたが、制作が進むにつれ、複数パターン試作してくださるなど、創造性を発揮していいただきました。

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

momoco bear の制作にあたっては、ただ単に会社として作りたい色・デザインをラインアップしているわけではなく、必ず「その作家さん、窯元さんだからこそ」という技法・装飾を相談しているそう。

プロデュースする「賞美堂本店らしさ」と制作した「その作り手らしさ」の相乗効果を発揮することを心がけているという。

窯元さん・作家さんたちは、ご自身が制作されたmomoco bearに愛着を持ってくださっていて、さらに他の作り手さんが作られた作品も「こういうところがかわいい」とお互いに楽しんでくださっています。

最近では「こういうのもどうかな?」と作り手さんから新たなラインアップをご提案いただくことも増えました。

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

出典元:momocoホームページ

有田焼の技巧・紋様を国内外に発信へ

momocoの作品を、いくつか紹介しよう。

【市川光山窯作「宝珠松竹梅文」】(本体価格:150,000円)

19代続く鍋島藩窯「市川光山窯」の作品。

有田焼の代表的様式「鍋島様式」にのっとった伝統的な文様を総手描きにて表現。現代的なクマのボディとのコラボレーションが伝統の中に新鮮さを感じさせます。

提供:賞美堂本店

提供:賞美堂本店

【アリタポーセリンラボ制作「吉祥古伊万里」】(本体価格:10,000円)

江戸・明治期に多く用いられた縁起の良い吉祥文様を「上絵転写」ならではの精緻な表現力を使って制作。

古伊万里の伝統を継承しつつ、モダンな生活空間にも調和するよう鮮やかな色を取り入れ、グラフィックデザイナー 魚岸由佳氏がデザインを担当しました。

アリタポーセリンラボは、創業210年余の歴史を持ち、古伊万里様式の商品制作では、賞美堂本店と長年のパートナーシップ関係にあります。

提供:賞美堂本店

提供:賞美堂本店

—–momocoに込める思い・ビジョンを教えてください。

有田焼は、江戸・明治期に欧州貴族に愛され盛んに輸出された時代がありました。当時の作品を今見ても、色褪せない美しさがあります。

賞美堂本店のコンセプト「時代をこえて美しく」のもと、有田焼ならではの技巧や文様を、世界中でいつの時代にも愛される「クマ」のフォルムを通じて発信し、国内外のお客様にお届けしてまいりたいと思っております。

商社として、このようなプロジェクトを通じ、作家さん・窯元さんの技術や特徴を広くご紹介するとともに、有田焼産地として技術の伝承・保全にも貢献していきたいと考えています。

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Text by 長澤まき

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