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ポケモン図鑑みたい!解説がユニークすぎる生き物図鑑アプリ「Biome」、取材したら開発者の熱意がすごかった

提供:株式会社バイオーム/Biome(バイオーム)ホームページより

提供:株式会社バイオーム/Biome(バイオーム)ホームページより

ユニークな解説が話題のアプリ「Biome(バイオーム)」について、株式会社バイオームに取材した。

解説がユニークなアプリが話題に

スマホカメラで生き物を撮影するだけで名前を判定できる「いきものコレクションアプリ『Biome』」の図鑑説明が、ユニークだとネット上で話題になっている。

同アプリは、独自のAI技術が撮影場所や時期、写った生き物の形状などを元に、日本国内のほぼ全種(6万3635種)の動植物のデータ中から、確率の高い種の候補を瞬時に表示する。

投稿した写真は自動で図鑑に登録され、研究機関や行政機関などしかるべき場所に提供され、環境保全に活用される。

話題になっているのは、その図鑑内の解説だ。

例えば、種子植物には「古生代の後半に出現するやいなや、地上の覇権をシダ植物から奪い、現在も地球の表面は種子植物が支配している」という解説が。

ナデシコ目には、「かの大伴家持は恋人に『あなたが撫子の花だったらなぁ、毎朝手に取って愛でるのになぁ』と歌を詠んだ。少し無神経では」、フクロウ目には「英語には、ぐでんぐでんに酔っぱらった人を指す言葉で『まるで茹で上がったフクロウ』という表現があるんだホー」という解説が載っている。

「Biome(バイオーム)アプリの画面」株式会社バイオーム提供

提供:株式会社バイオーム/Biome(バイオーム)アプリの画面

「Biome(バイオーム)アプリの画面」株式会社バ

提供:株式会社バイオーム/Biome(バイオーム)アプリの画面

ネット上に「解説が秀逸」「思ってたんと違う感すごくて夫と笑いまくってる」「なんかポケモン図鑑みたいなノリ」「これはこれで趣(?)があって面白い」「めっちゃ読んでしまう」といった声が寄せられている。

生物の多様性維持のため学生時代に発案

「Biome」は、どのように誕生したのか。

代表取締役の藤木庄五郎氏によると、アイデアを生み出したのは、藤木代表が京都大学博士課程後期でまだ学生だった2016年だという。

自分で言うのはすごく恥ずかしいのですが、生物多様性の保全をすることが僕の人生の使命だと当時から本気で思っていて、どうすれば地球の生物多様性を維持できるのだろうか、とかをボルネオ島のジャングルでキャンプ生活をしながら四六時中ずっと考えていました。

で、どういう切り口から考えていっても結局たどり着くのは「人間の行動原理とは何か」ということでした。

当たり前なんですけど、人間の行動を変えるためには、その行動原理をどうにか理解していかないといけないんです。これはとてつもなく難しいテーマですし、今も答えはわかりません。

ただ一緒に調査をしていたインドネシアの現地の人たちはすごくシンプルなヒントをくれました。

彼らは単純に「楽しいから」という原理で色々なことに取り組んでいました。当たり前なんですけど、人は「楽しいこと」をやる生き物なんだなあと、そう考えるようになりました。

提出:バイオーム/2014年インドネシア東カリマンタン州にて調査キャンプの様子

提出:株式会社バイオーム/インドネシア東カリマンタン州にて調査キャンプの様子(2014年)

藤木代表は帰国後、京都大学起業家育成プログラム(GTEP)に参加し、生物多様性を楽しみながら守れるサービス作りに取り組んだ。

その際に、「県ごとの生物多様性のランキングを出せたらおもしろいね」といった話になり、楽しみながら生物多様性のことを守りたくなるような仕組みを考えぬき、位置情報と写真を組み合わせたバイオームアプリの原型となるアイデアが生まれました。

これは最高に面白いアイデアだ!自分は天才なのでは!と興奮してプレゼン資料を作った翌週にポケモンGOが発表されたときは驚きました。

自分以外にも天才がいたのかと(笑)

提供:バイオーム/ボルネオ島での研究時代の藤木代表

提供:株式会社バイオーム/ボルネオ島での研究時代の藤木代表

興味を持ってもらおうとカードゲームに着目

話題になっているユニークな図鑑内の解説には、狙いがあるという。

世間の人に生物への興味を持ってもらうためにどうすればいいか考え抜く中で着目したのは、よくカードゲームなんかでみる「フレイバーテキスト」でした。

ゲームとはまったく関係なく、カードの雰囲気や世界観をあらわすためだけに使われるあの文章にヒントがあるのではないかと。

そこで世に出回っているほとんどのカードゲームをチェックしました。そして気づいたんですけど、興味を引くフレイバーテキストというのは、結局、よくわからない妄想の設定を思うがままに書いたようなやつなんですよ(笑)

そうして、小学生の頃によくカードゲームで一緒に遊んだ、当時英文学の翻訳を研究していた友人に、「生物のことをフレイバーテキストみたいに表現してみてよ」と相談して書いてもらったのが、あの文章だという。

当時、彼は英文学翻訳を研究していて、大学を8年かけて卒業したのち、ニート生活をしながら翻訳活動を続けていました。本当に現実から離れて妄想の世界に生きていたようなやつでしたので、こいつしかいない、と思ったんですね。

もちろん間違った知識をばらまくわけにはいけないので、きちんと内容に間違いがないかをチェックしつつ、でも読んだ瞬間、これしかない、と思いました。

今はその友人も立派な物書きになっているのですが、ずっと継続してバイオームのサービスに関わってもらっています。

今もそう思うのですが、多様な人の多様な価値観とか視点が混在した状態というのを僕はこのサービスで表現したいんです。生物の多様性が生み出すこの地球の生態系を模倣していきたいんですよ。大袈裟ですかね(笑)。

提供:バイオーム/アプリ初期の開発風景

提供:株式会社バイオーム/アプリ初期の開発風景

ポジティブな感情を生物多様性の保全へ

アプリは単に名前を判定するだけでなく、投稿された情報が保全活動に活用されたり、コレクションを共有したり、獲得したポイントによってレベルアップしたり、みんなでクエストに挑戦したりと、体験や楽しさを共有できる仕組みがちりばめられている。

「楽しい!面白い!」というポジティブな感情や行動を、生物多様性の保全につなげる狙いがあります。

人のポジティブな感情を引き出し、行動を促すために、随所にゲーム性を取り入れました。

開発に携わるスタッフは皆、生き物好きです。生き物を愛で、楽しむことは、そもそも楽しいこと。ですから、生き物を楽しむことがライフワークとなり、そのお供になるようなアプリを目指しています。

20世紀後半から生物多様性の保全について多くの議論が重ねられてきましたが、まだまだ一般には馴染みが薄いというのが現状です。

周知が遅れているのは、リサイクルや省エネとは違い、自分自身の生活にどんな風に関連しているのか?どう密接に結びついているのかが見えにくい。ということも一つの要因です。

出典元:バイオームプレスリリース

出典元:株式会社バイオームプレスリリース

世界の見方が変わるきっかけになり続ければ

現在、「Biome」では「竹の開花状況を集めるためのクエスト」が開催中。イベントを通じて得られた竹の開花情報は、京都大学大学院農学研究科の小林慧人さんに提供される。

アプリを通じて竹の一斉開花現象の調査に関わることができるイベントについて、ネット上には「いきなりアツいミッションがあって最高!」「現在の植物・生物学の研究課題をみんなで解き明かすことができるんだよ!その当事者になれるって超すごくないですか⁉」「私正直興奮してます」といったコメントが寄せられている。

「ヤバい」とおっしゃっていただけることが本当に嬉しいです。

竹の開花クエストは、竹の研究者の方と度重なる打ち合わせを行なって、丁寧につくりました。

出典元:バイオームプレスリリース

出典元:株式会社バイオームプレスリリース

「Biome」で描くビジョンをこう話す。

身の回りにいる生き物に目を向けることで、世界の見方が変わると思っています。そのきっかけになり続けたいと考えています。

例えば、自分の部屋の壁に蛾が止まっていても、蛾を追い出すか、スルーするかのどちらかだと思います。

それがBiomeアプリを手にすることで、「蛾がいる!ラッキー!ゲット!」となる(笑)

このようにアプリを通して、今まで見向きもしなかった生き物が、自分の中で宝物に変わる。そういった瞬間を体験してもらいたいと考えています。

そうやって、生き物それ自体を“価値”として捉える感覚を広めていきたいです。

Biomeは現在、Google Play(Android 4.4以上)およびApp Store(iOS 11.0以上)で無料でダウンロードできる。

一見ふざけているように見えるアプリには、自然環境への熱い思いが込められていた。

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Text by 長澤まき

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