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お酒を注ぐと星空が浮かぶ酒器「宙COCORO」が話題、完成までの道のりを聞く

提供:佐藤裕美さん

提供:佐藤裕美さん

お酒を注ぐと星空が浮かび上がる酒器「宙COCORO」について、蒔絵(まきえ)の伝統工芸士・イラストレーターの佐藤裕美さんに取材した。

宇宙が広がるお猪口が話題に

新潟県で蒔絵の伝統工芸士・イラストレーターとして働く佐藤裕美さんが作る酒器「宙COCORO」がネット上で話題になっている。

「宙COCORO」は、蒔絵が施されたお猪口(おちょこ)とタンブラー。お酒を注ぐと星が浮かび上がって見え、器の中に宇宙が広がる。

▼酒を注ぐ前

佐藤裕美

提供:佐藤裕美さん

▼酒を注いだ後

提供:佐藤裕美さん

提供:佐藤裕美さん

素敵なお猪口に、ネット上には「飛び込んだら宇宙に行けそう」「こんなので風流に飲んでみたい」「ほ…欲しいです!」など、多くのコメントが寄せられている。

「殻を破れ」筆以外の道具を模索

同作品は、ステンレス加工会社のササゲ工業が作ったベースとなるステンレスの酒器に、蒔絵師である佐藤さんが漆の焼き付け技法を使い絵付けをしたという。佐藤さんに詳しい話を聞いた。

—–いつ・どのような経緯で作った作品ですか?

トヨタの「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2018」という、日本各地で地域の独自性や技術を生かし、新しいモノづくりに挑む「匠」を応援するプロジェクトで、2018年に新潟代表で選ばれ、作ることになりました。

小山薫堂さんがスーパーアドバイザーでプロジェクトをまとめ、私には、「意と匠研究所」の下川一哉さんがメンターとして、沢山アドバイスを下さりました。

最初は写実的な絵柄ではなく、幾何学的模様のデザインでいこうということになり、幾何学模様のサンプルを沢山作り、エリアコンサルティングで意見を求めました。

そしたら、私が遊び心で作った宇宙の様な絵付けの方に大変に注目していただけ、「筆を使わず、抽象的な図柄をデザインしてみて」と、アドバイスを受けました。

蒔絵の命とも言える筆を置くことに、従来のやり方にとらわれなくても良いのか、とワクワクし、「伝統工芸の概念にとらわれるな。伝統工芸士としての殻を破れ」とのアドバイスに目からウロコで、その日から、筆以外の道具を模索しました。

漆と金粉で数えきれないほどの蒔絵を繰り返し、ササゲさんの酒器が一番栄える絵付けを自分なりに納得のいくカタチまで持っていくことができ、やっと完成しました。

提供:佐藤裕美さん

提供:佐藤裕美さん

父親と長年かけて漆の焼き付け技法を習得

—–タンブラーを作るにあたって、こだわった点・工夫した点は?

タンブラーは、ステンレスの色味自体が偶然の賜物のようで、何度も何度も試作を繰り返し、やっと青の虹色発色に成功しました。

青ベースだけど、紫や緑が入っていて、お酒を注ぐと赤っぽい色味が出て来てステンレスの変化が凄いです。

そこにまた私が焼き付けで蒔絵を施すのですが、青の虹色発色が際立ち、より深い宇宙のようです。

ステンレスの酒器に蒔絵で絵付けしたという。

—–ステンレスの酒器への絵付けは通常の漆器とは勝手が異なると思いますが、大変だった点は?

ステンレスには焼き付けないと剥離してしまう性質がありますので、焼き付け技法にて絵付けをしています。

焼き付け技法を教えて貰える所がなかったので、父と独学で15年前から試行錯誤で習得しました。長い間かかりました。

佐藤裕美さん/Facebook

佐藤裕美さん/Facebook

「絵が大好き、苦しくても楽しい」

佐藤さんは江戸時代から続く林佛壇店の6代目。塗箔師の父親と蒔絵師の母親に指導を受け、2015年に新潟・白根仏壇蒔絵部門の伝統工芸士資格を取得した。

—–蒔絵の伝統工芸士になった経緯は?

うちが代々続く仏壇の製造販売店で、両親が伝統工芸士なので、技術の凄さを尊敬していましたし、この道に進む以上、伝統工芸士になることを目標にして日々制作していました。

現在は3児の母で、蒔絵ネイルや蒔絵ブローチ&ヘアゴムなど、新しい蒔絵作品づくりに挑戦。イラスト作品も制作している。

佐藤裕美さん/Facebook

佐藤裕美さん/Facebook

提供:佐藤裕美さん/伝統工芸品・堺打刃物の包丁の鞘に描いた蒔絵

提供:佐藤裕美さん/伝統工芸品・堺打刃物の包丁の鞘に描いた蒔絵

提供:佐藤裕美さん/手形アート

提供:佐藤裕美さん/手形アート

提供:佐藤裕美さん/紫陽花のイラスト

提供:佐藤裕美さん/紫陽花のイラスト

—–制作活動に込める思いを教えてください。

まずは自分が絵が大好きで、楽しいから制作していると思います。

もがいて苦しくても苦しくても、楽しい。

そして、お客様に喜んで貰えるよう、お渡ししたときの笑顔を楽しみにしています。精一杯、心から腕に手から筆に、そして絵に注がれるイメージで描いています。

一度、病気で手がパンパンに腫れ痛みで筆を持つことができず、全身の痛みと高熱、倦怠感(けんたいかん)と脱力感で、半年寝たきりになりました。回復するまで数年かかりました。

絵を描ける喜びは、はかりしれなくて。今は病気と付き合いながら制作しているので、楽しいしかないです(笑)

頑張りすぎるとまた悪化するので、体調をみながら頑張ります!

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Text by 長澤まき

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