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日本初の優先席は静岡のローカル鉄道だった。伊豆箱根鉄道の思い

提供:伊豆箱根鉄道/導入当時の社内報写真

提供:伊豆箱根鉄道/導入当時の社内報写真

日本初の優先座席について、静岡県三島市の伊豆箱根鉄道に取材した。

1973年9月15日(敬老の日)に初導入

現在、国内のほとんどの列車に導入されている優先席。

札幌市営地下鉄が「専用席」を設置したり、都営地下鉄大江戸線に今年8月に機関車トーマスの装飾を施した「子育て応援スペース」が試験導入されるなど、時代に合わせて進化を遂げている。

そんな優先席の日本における起源が、静岡県のローカル鉄道にあるのをご存じだろうか。

提供:伊豆箱根鉄道

提供:伊豆箱根鉄道

それが、静岡県と神奈川県で鉄道を運行する伊豆箱根鉄道だ。

1973年9月15日の敬老の日。同社は駿豆線・大雄山線に、当時の国鉄中央線とともに、日本で初となるお年寄りや体の不自由な人を優先する座席を「シルバーシート」の名称で導入した。

何か役に立ちたいと自発的に開始

なぜ先駆けて優先座席(シルバーシート)を導入したのか。

総務部総務課広報担当の芹澤章裕さんに話を聞いた。

—–1973年にいち早く優先座席制(シルバーシート)を導入した経緯を教えてください。

お年寄りやお体の不自由な方のための優先席を作ることで、企業の社会的責任に少しでも応えていこうと導入しました。

これは会社の中で鉄道を所管している鉄道部が、お年寄りやお体の不自由な方々に何かお役に立とうということから自発的に始めたサービスでした。

当時、日本は高度成長期である大阪万博が終わり、オイルショックなどに入り、企業もただ利益を上げるだけではなく、社会環境に対して対応をしていくよう変わっていった時代でした。

提供:伊豆箱根鉄道/芹澤さん

提供:伊豆箱根鉄道/芹澤さん

革新的な取り組みに大反響

—–1973年に導入した日本初のシルバーシートはどのような仕様でしたか?

1編成3両のうち運転台のある前後2両に設置しました。駿豆線は10編成ありましたので20カ所、大雄山線は7編成なので14カ所に設置しました。

シルバーシートであることを掲示する案内は国鉄が決めたシンボルマークなどのイメージと同じで、外からも見わけのつくステッカーを貼る表示でした。シートの色はえんじ色でした。

1979年に導入した3000系列車から順次シルバーのシートに切り替えました。現在までシートの色はシルバーです。

—–革新的な取り組みに、当時どのような反響が?

当時の社内報を見ると、シルバーシートは当時かなり話題になっていました。

翌1974年6月には、駿豆線沿線にお勤めの皆さま(大きな工場や役場の職員など)を会社にお招きして、シルバーシートや普段の電車通勤についてご意見を伺う座談会を開催し、シルバーシートの周知や取り組みの趣旨に対する皆さまからのご協力のお礼を会社からお伝えしていました。

提供:伊豆箱根鉄道/導入当時の社内報写真

提供:伊豆箱根鉄道/導入当時の社内報写真

地域社会と共に沿線を盛り上げていく

シルバーシートはその後、全国に広がっていった。「優先席」と名称を変え、高齢者や体の不自由な人だけでなく、妊婦や乳幼児を連れた人などの優先座席として使われている。

同社は2019年の敬老の日である9月16日前後、改めて優先席を啓発すべく、「ゆずりあいを大切に」と呼び掛けるステッカーを列車内に貼り付けた。

提供:伊豆箱根鉄道

提供:伊豆箱根鉄道

—–優先席や啓発ステッカーに込める思いを教えてください。

当社の先輩社員が日本で初めてこの取り組みを行ったことを、たいへん誇らしく感じています。

日本で初めてシルバーシートの優先座席を始めたことを忘れず、今後も地域社会の皆様と共に沿線を盛り上げていき、ご利用のお客さまに楽しんでいただく電車を目指していく所存です。

1973年に“これからの企業は地域社会に目を向けて、働きかけを行っていくようにしよう”という考えのもと導入されたシルバーシート。

「地域とともに歩む」という考えは、今も同社に引き継がれているという。

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Text by 長澤まき

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