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「見えざる手」を見る脳――人間の約半数は完全な暗闇でも自分の動きを「見る」ことができる

shutterstock

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私たちの脳は、運動といった視覚以外の感覚情報を使うことによって、暗闇のなかでも「見る」ことができるらしい。このほど米ロチェスター大学の研究者らが、Psychological Science誌の10月30日付オンライン版に発表した。

彼らの実験は、目隠しによって被験者の視覚を完全に遮断した上で手のひらを顔の前で左右に動かしてもらい、その動きを正確に目で追うことができるかどうかを確かめるものだ。実験はディセプション方式※により、被験者129人に対して5回に分けて行われた。コンピューター制御によるアイ・トラッカーを用いて被験者の視線を追跡したところ、少なくとも 50%の人は、完全な暗闇の中で自分の手の動きを正確に目で追うことができることが分かった。

「暗闇の中では、もちろん普通の意味での視覚的には何も見ることはできません」と、研究を主宰したタディン教授は言う。「しかし、手を動かすといった私たち自身の動作によって脳に伝達される感覚信号は、たとえ視界がゼロでも脳内に視覚的認識をもたらしうることをこの研究は示しています」。また、文字や数字に色を感じる「共感覚」を持つ人は、そうでない人と比較して、このような運動感覚に誘導された「視覚」を持つ傾向が高いことが分かった。

この「見えざる手」を見ることができるのは、生得的な能力によるものなのだろうか? タディン教授によれば、この能力は経験によって獲得することができるという。「五感の1つを失うと、ほかの感覚が研ぎ澄まされる」と言われるが、その説をサポートする研究結果といえるだろう。

※被験者が実験の目的や内容をあらかじめ知らされた場合に、そのことが実験の精度に影響を及ぼす可能性があるときに採用される実験手法。つまり、被験者は自分が関わっている行動の意味について、実験前には知らされない。

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Text by 加藤 直子

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