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渋カジ、キレカジ…ビームス窪浩志さんに聞く平成30年「若者ファッション史」

BEAMSの窪 浩志さん

BEAMSの窪 浩志さん

1989年1月8日に始まった平成の時代は、2018年で30年目を迎えます。

この30年で私たちの身の回りではいったい何が変わり、何が変わっていないのか。「平成30年目の目!」と題して、各分野のプロに振り返ってもらいます。

【前回:茶髪→モテ→ゆるふわ→バブル再来!資生堂に聞く平成30年の“化粧”の歴史

第3回は「ファッション」に目を向けて、東京・原宿を拠点に日本のファッションシーンを牽引してきた、株式会社BEAMS窪 浩志(くぼ ひろし)さんにその変化を語ってもらいました。

BEAMSの窪 浩志さん

BEAMSの窪 浩志さん

BEAMSの窪 浩志さん

インターナショナルギャラリー ビームス店長、オリジナルレーベル「BEAMS BOY」ディレクターを経て、現在は社長室室長 兼 クリエイティブディレクターに。神戸芸術工科大学客員教授、JAFCA日本ファッションカラー選考委員も務めるほか、シンガーソングライターの槇原敬之さんのコンサート衣装も担当するなど、社外でも幅広く活躍されています。

90年代は「渋カジ」全盛期

――1989年に入ってから間もなく、平成という新たな時代がスタートしました。当時、若者のファッションはどのようなスタイルが流行していましたか。

日本の中ではやはり「渋カジ」がブームでしたね。特に90年代初頭はライダースやスタジアムジャケット、ピーコートなどが売れていました。さらにそこからワイルドな方向へ向かい、足元もコンバースやナイキから、ダブルリングのエンジニアブーツへ…というヘビーなスタイルに移行していきました。

渋カジ初期の主なアイテム

90年代初頭「渋カジ」の主なアイテム

その後は反動で、キレイ目のファッションが注目され始めます(※当時の呼び名は「キレカジ」)。定番アイテムでは「紺ブレ(ネイビーのブレザー)」が爆発的ヒットとなり、男性はオックスフォードのボタンダウンシャツなどを合わせていました。

ちなみに、女性はライラックカラー(薄いパープル)のインナーを合わせるのが流行っていて、独特の流れがありましたね。ライラックって、当時の渋谷を象徴する色だったんです。

渋カジ後期の主なアイテム

「キレカジ」の主なアイテム

2000年代、アウトドアブランドの台頭

――そして2000年代に突入すると…

2000年代に入ると、輸入ものの情報がよりたくさん日本に入り始めました。これは90年代と大きく異なる点ですが、こうしたインポートものが入ってきた流れで、「patagonia(パタゴニア)」をはじめ、今ストリートで売れているような海外のアウトドアブランドを、ファッションとして取り入れる人が増えてきたんです。

ビームスでは設立の頃からアウトドアブランドのアイテムを、ブレザーとかオーセンティックなものと合わせるという、アメリカのいちライフスタイルを紹介し続けてきたのですが、それをファッションとしてより打ち出していったのは2000年代に入ってからでしたね。

アウトドアミックスの主なアイテム

2000年代アウトドアミックスの主なアイテム

――2000年代後半は、何か動きがありましたか?

後半に入ると、感度の高い人はより幅広いアウトドアブランドを取り入れていました。「GRAMICCI(グラミチ)」「WILD THINGS(ワイルドシングス)」「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」あたりとか。2000年代は、日本人が積極的にスポーツブランドをファッションに取り入れ始めた時期だと思います。

――なるほど。その流れはまさに、この2010年代に受け継がれていますよね。

そうですね。ただ前の10年と比較してみると、2000年代までは、みんなそれぞれの軸を持ってファッションを楽しんでいた気がするんです。これは僕の主観ですけれど…

メンズウェアに関して言うと、70年代~2000年代は、前時代にあった基本的な“着こなしの軸”みたいなものを理解したうえで、プラスアルファ(何かを演出するもの)を加える。例えばトラッドにモードをプラスするとか…何かひとつ自分の好きなものとか世界観を加えることで、自分色の軸にしていきました。

2010年以降は、そうした自分の軸を確立している若者が少なくなったという印象があります。多分、情報が多すぎるんでしょうね。

近年ミックススタイルの主なアイテム

近年ミックススタイルの主なアイテム

ネット普及で“ファッションの軸”がなくなった

――30年間で若者の個性がなくなった?

まあ、そういうこと言うと、うるさい大人みたいになっちゃいますけど(笑)

この30年間で最も大きく変わったのは、ネットの普及で色んな情報や着こなしが簡単にキャッチアップできるようになったこと。ストリートにいる子たちは、みんなミックススタイルが上手ですよね。

でも、昔は雑誌しか情報源がなく、しかも、みんな自分の好きな情報だけ仕入れていたので、個人の世界観が確立しやすかったんです。そうすると、いい意味で軸が決まってくる。音楽や映画、アートなど自分が影響を受けたジャンルに対して思い入れも深く、それが個性としてファッションにも表れていました。

今は自分がそのソースを欲していなくてもあらゆる情報が入ってきてしまうので、幅広いジャンルを取り入れられる分、軸が無くなっているような気がします。

でも、時代って巡っていくものなので、数十年後に振り返ってみたら、このミックス感が2010年代のスタイルだったよねと、ちゃんと引き継がれていくんじゃないかなと思うんですけどね。

30年間変わらなかったもの

1989年から3回にわたって施行された消費税について、BEAMSとして売り上げに影響があったかと聞いてみたところ、驚くことに「まったくなかった」との答えが返ってきました。

また、2011年3月の東日本大震災の際は、仙台市の店舗を数日で再開し、被災者の方々からも「日常を取り戻させてくれてありがとう」と声を掛けられ、スタッフも一丸となって乗り切ったのだとか。

洋服って、人の心を豊かにしてくれるものだからね。

時代によって流行は変化しましたが、平成の30年で変わらなかったもの…窪さんが最後に呟いたこの言葉に、その答えが集約されているのかもしれません。

Heisei30

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