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【北海道新幹線】同日開業した「道南いさりび鉄道」存続への挑戦

ながまれ号 提供:道南いさりび鉄道

ながまれ号 提供:道南いさりび鉄道

3月26日(土)に青函トンネルを貫く北海道新幹線が開業し、1週間が経ちました。

全国的に新幹線のお祝いムードに隠れがちですが、同日、北海道木古内(きこない)町と函館市をつなぐ「道南いさりび鉄道」も新たに開業しました。

社名の由来は、夜の海原を照らす漁船団の集魚灯「漁り火(いさりび)」。

しばらくは赤字を見込まれ、一時は廃線寸前だった並行在来線。存続に向けた挑戦が始まりました。

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出典元:道南いさりび鉄道公式サイト

一時は廃線も視野

道南いさりび鉄道は、JR江差線・木古内駅~五稜郭(ごりょうかく)駅間の全長37.8キロをJR北海道から移管し、第3セクターの鉄道として発足。北海道と沿線3市町、JR貨物などが株主となって経営しています。

新幹線からは木古内駅で乗り換えができ、函館市中心部にあるJR函館駅に直接乗り入れます。

道南いさりび鉄道ロゴ

提供:道南いさりび鉄道

線路自体は本州と北海道をつなぐ大動脈として特急や夜行列車が通過しましたが、路線としては各地のローカル線と同様に、旅客の中心は地元の高校生など地域の人々。

輸送密度(旅客営業距離1キロ当たり1日の平均利用者数)は、採算ラインとされる8000人を遥かに下回っていました。

12年には北海道が、新幹線開業を機に江差線全線をバス輸送に転換する案を示しました。

これに函館市、北斗市、木古内町は反発。貨物列車の線路としての必要性だけなく、地域の生活路線として失うわけにはいかないとして第3セクターの設立が決まりました。

それでも、輸送密度が41人(平成23年度)とJR北海道管内で最も低かった、江差町と木古内町を結ぶ区間は、14年春に廃線となりました。

最大の特長は津軽海峡の風景

いさりび鉄道津軽海峡

提供:道南いさりび鉄道

いさりび鉄道の最大の売りは、車窓から眺望です。

内陸部を通りトンネル区間が多い新幹線に対し、海沿いを走るいさりび鉄道はゆったりと雄大な津軽海峡が眺められます。

窓を開ければ、爽やかな潮風を体感できます。

短文投稿サイト「Twitter」には、すでに多くの写真付き投稿が集まっています。

名曲「津軽海峡冬景色」は青函連絡船からの景色を歌いましたが、どなたか鉄路の風景を歌う曲を考えてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、3月23日に同社の公式応援ソング「函館慕情」(歌:徳永ゆうき)が発売しています。

応援隊設立、沿線施設も充実へ

いさりび鉄道を盛り上げようと、地域住民らも結束。15年11月には地元商工会や学生の有志が、「道南いさりび鉄道地域応援隊」を設立。アドバイザーに後述の日本旅行を迎えるなど、準備を整えました。

開業日には早速、各駅に沿線住民の歓迎メッセージを記した短冊を飾っておもてなし。

今後も住民たちに同鉄道を「マイレール」として意識してもらう活動に取り組みます。

いさりび鉄道短冊

駅に掲示された住民のメッセージを書いた短冊 提供:北斗市役所

2015年12月発表のダイヤによると、木古内~函館駅間の乗車時間は新幹線が約45分、いさりび鉄道が約1時間と意外に大きな差はありません。

接続可能な便は1日7本。木古内駅での乗り換え時間が10~90分以上と開きがありますが、駅前にオープンしたばかりの道の駅「みそぎの郷 きこない」をのぞいてみてもよいでしょう。

道の駅では地元食材を活用したレストランのほか、「観光コンシェルジュ」も常駐。オープン1カ月で来場者1万人を達成した人気スポットです。

運賃は、大人1人片道1110円。同区間の新幹線ルートより470円安くなります。

目玉は日本初、旅行会社による観光列車「ながまれ海峡号」

出典元:日本旅行

旅行会社の日本旅行(株)は、5月28日から観光列車「ながまれ海峡号」を運行予定です。

深い青の車体が特徴で、昭和モダンとなつかしさがコンセプト。1日1往復で8月までに6回の運行を計画しています。

「ながまれ」は、道南地方の方言で「ゆっくりして」といった意味だそう。普段は地域情報発信列車「ながまれ号」として走ります。

前述の応援隊らの協力で、茂辺地駅構内でのバーベキューの開催や海鮮丼を模した「びっくりスイーツ丼」、北海道限定の地ビールの提供などサービス満載の列車です。

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びっくりスイーツ丼のイメージ 出典元:日本旅行

全国各地で新幹線開業に伴う並行在来線の維持が、課題になっています。

いさりび鉄道も今後10年間、利用者の現行比16%減、約23億円の赤字となる見通しです。

決して安泰な門出ではありませんが、地域の足として、新たな観光資源として列車は走り出しました。

最後に、木古内駅の駅名板をJRから道南いさりび鉄道に変更する作業を捉えた、象徴的な映像を紹介します。

(映像提供:松林光朝さま)


※記事中の「一時は廃線も視野」の項目で、JR江差線の輸送密度について「41人」としていましたが、道南いさりび鉄道への移管区間を含まない廃線区間のみの数字でした。お詫びして削除いたします。(2016年4月4日)

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Text by 漆舘たくみ

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