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「本当にできるのか半信半疑でした…」NHK「花は咲く」アニメスター版の制作秘話

(左から)讃岐さん、土橋さん、有田さん

(左から)讃岐さん、土橋さん、有田さん

東日本大震災から5年となった翌日、3月12日からNHKが、復興応援ソング「花は咲く」のアニメスター・バージョンを放映しています。

歌詞とメロディーに合わせ、鉄腕アトムからポケットモンスターまで日本の古今の人気アニメ38作品を5分間にまとめ、復興への願いを表現しています。(※記事下部に一覧)

同曲は、映画監督の岩井俊二さん(宮城県仙台市出身)が作詞。今回は作曲の菅野よう子さん(同市出身)が新たなアレンジを施し、ベテラン声優の山寺宏一さん(同県塩竈市出身)と水樹奈々さんが歌っています。

誰もが知るキャラクターたちが放送局の垣根を越えて勢ぞろいし、その華やかさと胸を打つ映像が話題です。

制作を指揮したNHKの東日本大震災プロジェクトのチーフプロデューサー・讃岐好伸さん(同県石巻市出身)、アニメ部門を統括する編成局展開推進部チーフプロデューサー・土橋圭介さん、編成局編成センター副部長・有田康雄さんの3人に、作品に込めた思いを伺いました。

5年の節目、関心を離れさせたくない

――企画のきっかけは?

讃岐:まず、「花は咲く」という歌自体が、震災から1年目に多く人に被災した方々の復興を後押ししよう、全国の人々に被災地のことを意識してほしいという意図で作っています。

5年という節目を前に、被災地の復興が進まない実態から関心が離れていく雰囲気に抗いたいと思っていました。震災を伝え続けていきたい。

3.11から5年の先のために意義のある何かをしようと4年目の時から画策していて、プロジェクト自体のテーマも「明日へ支えあおう」から、「明日へつなげよう」に変更しました。

その中で、自分たちは必ずどの世代もアニメに影響を受けている。アニメが持つ力が被災地の励ましや元気、勇気につながるのではないかと。

菅野よう子さんも色んなアニメの仕事をされているし、これは行けるんじゃないかってなりました。

テスト版つくり「これは、行ける」

――制作中、苦労したこともあったかと思います。

有田:最初は本当にできるのか、半信半疑でしたよ(笑)

土橋:権利処理を想像しただけで、相当な物量だなと(汗)

岩井さんの書いた詞には一つひとつに意味があるので、その意味と直接関係ないキャラクターたちが出てきてうまくいのか、正直分かりませんでした。

こちらとしては真剣にやっても、有名なアニメキャラクターを、ただたくさん集めたNHKの悪ふざけと視聴者に受け止められるのではという不安もありました。

当初、菅野さんや岩井さん、スタッフの間でも一体どうなるのか具体的なイメージが共有できていなかったと思います。

そこで、去年の夏に一度、テスト版を作ったんです。試しに「花」をキーワードにアーカイブスから映像を拾ってつないでみたら、「これは行ける」と。

皆の頭の中で三者三様だったイメージを統一できて、一気に氷解する部分がありました。

讃岐:今回は、すでにあるものをつないだだけですごく胸に刺さった。これで進められるだろう、となりました。もちろん、結果としてこれほどのキャラクターたちが集まったおかげでもあります。

――アニメを選ぶ際に気をつけたことはありますか?

讃岐:色んな境遇、世代で見るアニメは違うので、各世代が子供の頃に勇気づけられた名作の力を借りたいと思いました。

プロジェクトのテーマである、「明日へつなげよう」というキーワードも念頭に置いています。

土橋:作品は何度もリストアップして練り直しましたね。

讃岐:アニメの草創期から今の子供たちまで、タイトルを見ただけで分かる作品の力をお借りしたい。震災だけに留まらず、色んなことを思い浮かべる映像にしたかったんです。

NHKだからこそ粋に感じてもらえた

――放送が始まり、うれしかった反応や意外な反応は?

土橋:よく聞いたのは、親子で見て子供とタイトル当ての会話が生まれたという反応です。とてもうれしいですし、狙い通りでした(笑)

讃岐:びっくりしたのは、(放送開始日の)翌日の消印を押した手紙が速達で届きました。

秋田の女性からで「感激しました」とあって、私たちの思いが届いたなと。50代の男性からも手紙を頂きました。最近にないことです。

有田:NHKじゃないとできない、と言ってもらえるのが誇らしいです。利益を離れて被災地に思いが届くよう、力を入れて作りましたから。

讃岐:38タイトルの各社さんには、協力して頂いて本当に感謝しています。

――許諾を取る作業も大変だったのでは?

土橋:NHKだからこそ、粋に感じてもらい好意的に受け止めてくださって、これだけタイトルが集まったと思います。

アニメは放送局、制作会社、出版社、原作者と複合的な著作物です。許諾先は相当多かった。

各局の看板アニメで、OKにならないだろうと思っていた作品も少なくないです。

それでも、話を持ち込んだ際に、「復興支援につなげたい」という我々の思いに多くの方がご賛同してくれました。

それぞれの立場で復興に役立ちたい、協力したいという思いがあるのを強く感じました。ご出身が東北で、調整を頑張ってくれた方もいます。

讃岐:公共放送として色んなものをつなげる役割だったのかなと。多くの方にご参加頂いて、人をつなげる歌の力を感じました。

何回もトライした歌声

――映像とともに、山寺さんと水樹さんの歌声も涙を誘います。

有田:山寺さんは最初のオリジナル版(被災地にゆかりのある著名人によるメドレー)の時、スケジュールの都合がつかなくてお呼びできなかったんです。

今回の話をするまで、このことをご存じなくて「自分は実力がないから呼ばれなかったんだ」と、4年間、ずっと気になさっていたそうです。

こっちとしては「そんなわけないでしょう!」ということで、お願いしました。

山寺さんご自身も何度もふるさとに足を運んで復興に関わっているのに、「新しい作品で復興に関わることができてうれしい」とおっしゃてくれました。

土橋:2人とも、すごく練習してきてくれました。

有田:どう歌の中身を表現するのか、納得するまで何回もトライなさった。

あくまでレクイエム(鎮魂歌)なので、元気すぎてはダメだし、かといってひ弱すぎず、強すぎずで歌って頂きました。菅野さんの優れたアレンジも大きかったです。

土橋:手前みそですが、自分でふと放送を見たときにうるっとしています。

この歌が全国に必要とされている

――今後の意気込みをお願います。

讃岐:NHKとして、被災地の復興をこれからも応援していきます。番組もイベントも続けますし、やめません。

そして、この歌はまだまだ被災地をはじめ全国で必要とされていると考えています。本当によく歌ってもらい、うれしく思っています。今後も「花は咲く」プロジェクトの展開を続けていきます。

取材後記

取材は3人で和気あいあいと談笑しながら進みましたが、徐々に力がこもる語気から、復興に役立ちたいという熱い思いが伝わってきました。

アニメスター・バージョンは、1分間の短縮版が番組の合間に随時放送。5分間の全編は次回、4月16日(土)午後5時から放送予定です。

【花は咲く~アニメスター・バージョン~】
「赤毛のアン」「AKIRA」「あしたのジョー2」「あの日見た花の名前を僕達はまだ­知らない。」「宇宙戦艦ヤマト」「うる星やつら」「科学忍者隊ガッチャマン」「機動戦­士ガンダム」「巨人の星」「クレヨンしんちゃん」「けいおん!」「劇場版ポケットモン­スター」「劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~」「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 2.0」「サスケ」「ジャングル大帝」「進撃の巨人」「新世紀エヴァンゲリオン」「0­09 RE:CYBORG」「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」「ちびまる子ちゃん」「鉄腕アトム」「ドラえもん」「ドラゴンボールZ­」「NARUTO -ナルト- 疾風伝」「忍たま乱太郎」「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」「火の鳥」「ふしぎの海のナディア」「ふたりはプリキュア」「フ­ランダースの犬」「魔法の天使 クリィミーマミ」「未来少年コナン」「名探偵コナン」「妖怪ウォッチ」「ラブライブ!­」「ルパン三世 カリオストロの城」「ONE PIECE」(参加全38作品、五十音順)

※1 初掲載時、有田康雄さんを編成局編成センター「副本部長」としていましたが、正しくは「副部長」でした。お詫びして訂正いたします。また、記事中の一部表現について修正しています。(2016年4月7日)
※2 初掲載時、今後の放送予定について「4月16日午後5時から」と紹介していましたが、14日夜の平成28年熊本地震の影響により、現在、放送日時は未定です。(2016年4月15日追記)

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