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「自分のワクワクに素直になって」渋谷で書店を開いた25歳ベンチャー企業社長の志

開店パーティーであいさつをする鶴田社長

開店パーティーであいさつをする鶴田社長

地方出身、ベンチャー企業の挑戦

6月24日、渋谷駅近くの道玄坂に新たな書店が開業した。

「BOOK LAB TOKYO」(ブックラボトーキョー)は、「つくる人を応援する」をテーマに据えた新刊書店。

コンピュータ関連本や料理、建築、科学など現在約6000冊が並び、今後は1万冊の品ぞろえを目指す。

「BOOK LAB TOKYO」の店内

経営するのは、2011年に旗揚げしたベンチャー企業・株式会社Labit(ラビット)である。

創業者である社長の鶴田(つるだ)浩之さんは、長崎県出身の25歳。

地方出身の若き経営者はなぜ渋谷で本屋を開くのか、考え方に迫った。

サラリーマン家庭で育ち16歳で個人事業主

鶴田さんは長崎県諫早(いさはや)市に生まれ、ごく一般的なサラリーマン家庭の3人姉弟の末っ子として育った。

唯一、普通ではなかったと振り返るのは、8歳のころにパソコン(Windows’98)を買ってもらえた点だという。

「父も母もアナログ人間で、子供だけはデジタルに慣れさせたいと考えたそうです」(鶴田さん)

地元のパソコン教室で基本的な使い方を覚えると、両親から頼まれた町内会の資料作りなどを手伝うようになった。

「つくる人を応援する」をテーマに選書をする「BOOK LAB TOKYO」

13歳になると、トレーディングカードを売買するWebサイトを自力で開設し、広告などの収入を得るようになる。

「多感な時期に万人単位の人に自分でつくったものを使ってもらう経験をした。人生、狂っちゃいますよ」と笑う。

ビジネスの楽しさを知り、会計を学ぼうと高校は市内の商業高校に進むと、16歳からは親の扶養を外れ個人事業主になった。

鶴田さんによると、決して進学指導に熱心な学校ではなかったというが、多くの起業家を輩出する慶應義塾大学環境情報学部(SFC)を目指し、ほぼ独学で受験勉強に取り組んだ。

同時期にはインターネット書店で興味を持った本を注文し、乱読したという。

同大学在学中にLabitを創業し、学生向けの時間割アプリを開発。これがヒットし、会社を軌道に乗せることに成功した。

ここは書店ですと言いたい

BOOK LAB TOKYOは、本格的なハンドドリップコーヒーを楽しめるほか、勉強スペースやイベントスペースも併設する。

それでも、よくあるブックカフェではなく、鶴田さんは「ここは書店ですと言いたい」と断言する。

料理本の隣に遺伝子についての学術書を置くなど、ストーリー重視の配列にこだわる。

「本を読んでほしいんです。イベントスペースを貸し出しつつ、本の回転率を高めて利益を上げたい」と意気込む。

一定額以上の書籍購入で本格的なコーヒーをサービス

期間限定で、一定額以上の書籍を購入すると本格的なコーヒーをサービス

本屋の理由、「最初は自分でもよく分からなかった」

本屋のアイデアは昨春、鶴田さんを支援する投資家との会話の最中に生まれた。

若い人がどういうサービスが欲しいか分からないと話す相手に、ふと「本屋はどうでしょうか」という提案が飛び出した。

「正直、自分でもその時はなぜ本屋なのか分からなかった」と打ち明ける。

その後、かつて米国のベンチャー企業がひしめくシリコンバレーを目指した「ビットバレー構想」の舞台だった道玄坂で「いつか本屋をしましょう」という話をするうちに、「道玄坂でクリエイターがワクワクする場所をつくりたい」と思うようになったという。

「今思えば、中学生のころから本を読んで企画や商売の経験など積み重ねてきたものが、(提案の時に)爆発したかもしれません」と語った。

コーヒーを飲むスペースなども設置している

コーヒーを飲むスペースなども設置している

そして2016年3月、偶然、不動産屋から「今なら60坪のスペースがある」と紹介を受けた。

ならば、と着々と準備に取り掛かり、約3カ月後の6月24日に開店に至った。

取材に伺った日は開店5日目だったが、予想以上の来店客に喜んでいる。

「来店する1人の後ろには、50人の興味を持つ人がいると考えている」と明るく話す一方で、「最初はスロースタートでいい。1年でつぶれるような店にはしたくありません」と浮つかない。

これからは消費者同士で本を売買できる場をつくるなど、さらなる野望も燃やしている。

BOOK LAB TOKYOの店内

BOOK LAB TOKYOの店内

地方の若者へ「東京に出て、駅の周りを3時間歩いてみて」

「地方は情報が限定的」と語る鶴田さん。

上京を考える地方の若者へ、「東京に出たいと思ったら、駅の周りを3時間ぐらい歩いてみてほしい。それだけで何かが変わるから」と実際に体験する必要性を説く。

自身も高校時代は週末によく上京してやっていたという。

「自分のワクワクする感情に素直になった方がいい。興味があるなら本当に都会に出ればよい」と重ねてエールを送る。

また、心構えついて「(旅費の)3万円程度はバイトでかき集められる。自力でそれができない時は、まだその時期じゃないのでしょう」とも語った。

鶴田浩之

「自分のワクワクに素直になって」と話す鶴田さん

「若いうちは、お金を貯めてばかりより使った方がいい。10代、20代と40代以上では3万円の価値は絶対違う」

熱っぽく語り続ける口調に、自分の意志で進路を決めて切り拓いてきた力強さがにじみ出ていた。

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Text by 漆舘たくみ

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