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町役場の若手5人で結成!踊る公務員「深浦マグロボーイズ」の青春

深浦町役場の職員でつくる「深浦マグロボーズ」の5人

深浦町役場の職員でつくる「深浦マグロボーズ」の5人

町役場5人組でダンスグループ結成

青森県の西端、秋田県との県境にある西津軽郡深浦町

雄大な日本海と世界遺産・白神山地を抱く自然豊かなこの町で、5人組のダンスグループが話題だ。

名は「深浦マグロボーイズ」。所属先は町役場。

そう、彼らの正体は町の行政を支える深浦町の職員である。

深浦町の位置 出典元:白地図専門店

特産であるクロマグロを広くPRしようと、2014年2月に結成。

これまで町内外で20以上のイベントで出演し、地元では「踊る公務員」として人気を博す。

初の発表から丸2年を迎えたことし7月2日、初の“東京公演”を終えた5人に、これまでの歩みを聞いた。

深浦会東京で踊るメンバー

全員が深浦町出身の20代

メンバーは全員、深浦町で生まれ育った23~25歳、入庁4~7年目の若手たちだ。

普段は税務課や福祉課などそれぞれ異なる部署で公務にいそしむ。

チームをつくったのは、リーダーの佐藤健吾さん(24)。日頃は総合戦略課の職員として、町の広報業務を担う。

佐藤さんに転機をもたらしたのは、全国で町おこしに携わるヒロ中田氏の言葉である。

マグロの人形で盛り上げるリーダーの佐藤さん

マグロの人形で盛り上げるリーダーの佐藤さん

クロマグロ県内1位・深浦町をPRせよ

青森のマグロといえば、絶大なブランド力を誇る大間町が有名だ。

しかし、クロマグロの水揚げ量は深浦町が県内の約半分を占め、圧倒的に首位。

町は知名度で劣る深浦マグロを知ってもらおうと、ヒロ中田氏とともに「深浦マグロステーキ丼」を開発し、売り出していた。

マグロステーキ丼

深浦マグロステーキ丼 出典元:深浦町観光公式サイト

そんなある日、ヒロ中田氏から仕事で関わっていた佐藤さんに、「ダンスグループをつくってみないか」と提案が出た。

ダンスをして深浦町のマグロをPRせよ、というのである。

「正直、びっくりしましたよね」と、その時の心情を明かす。

ダンス経験者ゼロ、1曲集中で形に

突然の発案だったが、佐藤さんは「やってみよう」と決意。

庁内の若手職員に声を掛けて回った。

手を挙げたのは5人。

普段から下の名前で呼び合う親しい仲間だったが、ダンスはまったくの未経験だった。

女性メンバーの1人は「最初に話を聞いたときは不安が大きかったし、参加しようか悩んだ」というが、「でも、この5人ならやってみようと思えた」と語る。

また、別の女性メンバーも「(佐藤)健吾の誘いじゃなければ、乗らなかったと思う」といい、佐藤さんの人柄がメンバーにやる気を起こしていた。

町内にダンス講師はおらず、週に1度、皆で車で片道1時間ほどかかる弘前(ひろさき)市のダンス教室へ通い、基礎を習得。

約4カ月後の町主催イベントを目標に、1曲だけを集中して練習し、振付をたたき込んだ。

業務後に空いた会議室で練習を続ける日々だったが、「部活のような感覚で、楽しくやっていました」と振り返る。

そして、14年6月28日に役場前のイベント会場で幕を開けた最初の舞台。

みごと踊り上げた5人に、盛大な拍手が送られた。

2年間、1人も欠けずに踊り続ける

活躍めざましい彼らだが、ダンスのレッスン料や交通費などは手弁当で工面。

昨年、地元紙が取り上げた際にはインターネット上を中心に「公務員のくせに何をやっているんだ」といった批判も浴び、気が滅入った時期もあったという。

それでも2年間、1人も欠けずにイベント出演を続けてきた。

観客の声援に笑顔で応えるメンバーたち

観客の声援に笑顔で応えるメンバーたち

舞台に登れば、お年寄りや子供たちが歓声を送り、大喜びで拍手を鳴らす。

「家族や親戚まで応援に来てくれるのは、本当にうれしい」と皆、口をそろえる。

広報誌の取材で町内を回る佐藤さんは、「保育園に行くと『あ、マグロのお兄さんだ』と子供たちが寄ってくる。スーパーでもマグロボーイズの人だってあいさつしてもらえる」と笑う。

町長も活動に理解を示しており、いつもメンバーの健康を気遣っているという。

「深浦の広告塔に」と期待の声も

初めての県外発表の場は、町出身の関東在住者でつくる「深浦会東京」の総会だ。

東京の真ん中で、大漁旗を飾る会場に和気あいあいと津軽弁が飛び交う。

町出身者の間では以前から話題になっており、踊りの最中は歓声がやまなかった。

深浦会総会で手拍子をするメンバーたち

深浦会東京総会で手拍子で音頭を取るメンバーたち

ダンスを終えると「やっぱりかっこいいね」「初めて生で見れた」などと喜びの声が上がった。

上京後、都内で42年間公務員だったという女性(63)は「公務員だからってお堅くならず、いい雰囲気出してますよね。若い子が頑張っているのはうれしい。深浦の広告塔になってほしい」と期待した。

若者も頑張っていると発信したい

現在の町の人口は約8800人。

全国で人口減少が顕著になる中、町でも最近5年間で1000人以上が減り、容赦なく過疎化が進む。

ちなみに、同町は政令指定都市である福岡県北九州市(人口96万8000人)とほぼ同じ面積である。

佐藤さんによると、「若い人は(近隣の)弘前市や五所川原市に働きに行く。町で若い人がまとまって居る職場って役場だけかもしれない」という。

深浦町役場の職員でつくる「深浦マグロボーズ」の5人

「深浦マグロボーズ」の5人。マグロの人形を持つリーダーの佐藤さん(前列右)

だからこそ、「小っちゃい町でも若い人が頑張っていることを発信したい」と使命感を持つ。

現在、チームは2曲目の練習に取り掛かっている。

今後ついて、佐藤さんは「少子高齢化の町だけど、若い世代を代表して深浦を積極的にPRしていきたい」と力を込めた。

取材後記

私事で恐縮だが、筆者も青森県出身でマグロボーイズとは同世代。

取材当初、結成に県外のプロデューサーが関わっていると知り、「しょせん都会人の押し付けか」と少し残念な気持ちになった。

だが、メンバーがひたむきに町おこしに取り組む話を聞くうちに、邪念がよぎったことを申し訳なく感じた。

提案者が誰であれ、マグロボーイズは地域に溶け込み、町民から偽りのない厚い支持を得ている。

自分の中に、よそ者に排他的な田舎者根性が残っていたことに気が付かされた。

互いにお国言葉で話せる楽しい取材だったが、地元のために奮闘するマグロボーイズの皆さんにはひたすら頭が下がる思いだった。

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Text by 漆舘たくみ

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