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【読書週間】39年間、娘たちのために80冊の絵本を手づくりした夫婦の家族愛

絵本8

ずらりと並ぶ色鮮やかなオリジナル絵本は、ざっと80冊ほど。

本当に出版された書籍と見まがうほど丁寧に装丁し、製本されている。

これらの絵本はすべて、都内に住むヒロシさん(70)とマリコさん(66)夫妻が手づくりしたものだ。

10月27日から始まった読書週間を前に、息子と娘・はるかさんの4人で紡いだ絵本づくりの思い出を語ってもらった。

空想から家族旅行記も

絵本の内容は、生活の描写からフィクションまでバライティに富んでいる。

柔らかな筆致で描いた水彩絵の具の優しい色合いが印象的だ。

兄妹が好きだったアヒルのぬいぐるみを主人公にした物語など、日ごろの些細な出来事から空想に入るものも多い。

北海道旅行についてまとめた一冊は、現地の写真や観光パンフレットを貼り付けて旅行記として編集している。

絵本1

アヒルのぬいぐるみを主人公にした絵本

マリコさんが文章と製本、都立高校の化学教師だったヒロシさんは主に絵を担った。

ヒロシさんは「製本の仕方は何度か習ったんだけどどうしても覚えられなくて」と苦笑い。

マリコさんは「ちゃんと製本すると、気持ちも高まる。子供の絵もチラシの裏だとどっか行っちゃうけど、本にすれば失くさない」と、絵本制作のメリットを語った。

きっかけは長男の誕生

絵本づくりの原点は1977年夏、マリコさんが長男を授かったことだ。

それまで小学校教諭として忙しい日々を送っていたが、「産休に入ってほっとしていた」時、ヒロシさんが区立図書館で絵本づくり講座のパンフレットを見つけ、持ち帰ってきたという。

もともと子供への読み聞かせが好きだったというマリコさん。

出産予定日まで1カ月を切っていたが、ヒロシさんの後押しもあり2人で参加し、創作や製本技術を学んだ。

「子供が初めて手にする絵本は手作りにしたいと思ったんです。

その時はなぜか生まれるまでにつくんなきゃ!と思って、1カ月に一気に6冊をつくりました。

今思えば、生まれてすぐに読めるわけないのだから焦る必要なかったんですけどね(笑)」

第1作は、アリの子供が夢の世界を旅するストーリー。

まだ首も座らぬ生後3カ月の長男の横に寝転がって見せてみた。

その時の様子を、マリコさんはありありと覚えている。

「じっと見つめて手足をバタバタさせたんです。そして笑ったんですよ。

字も読めないのにすごいなぁって。もっとつくろうと決意しました」

以降、家事の合間を縫って、息子の寝相をスケッチしたり喃語(なんご)を書き留めたりするように。

1年後、子育てに専念しようと退職。ゆとりができたことから、絵本づくりを再開した。

図書館の講座から派生した絵本サークルの活動もあり、多い時はひと月に1冊のペースで本をつくったという。

面白くて楽しいから夢中になっていた

絵本を楽しそうにつくる両親の姿を見ながら育った子供たちも、自然に絵本づくりに加わるようになった。

はるかさんも幼稚園からクレヨンを手に創作を開始。

園内の生活を描いたものやモグラが土を売る「つちやさん」など、マリコさんが文字を書いて一緒に作品を仕上げた。

絵本3

モグラを主人公にしたはるかさんの絵本

はるかさんは「絵本は日常的な存在で、親元を離れるまで貴重だと気が付かなった。みんなで本をつくるのが子供心に楽しかった」と振り返る。

マリコさんは「面白くて楽しいから夢中になった。気が付いたらこんなになっていた。結果として子育てに役立ったという気がする」と話す。

「稚拙な絵でも文字でも、手書きで形に残すと子供たちは何かを感じるかもしれない。ぜひ育児中の方は1冊つくってみては」と勧めた。

今は孫のため

兄妹が独立した現在。ヒロシさんとマリコさんの絵本には新たな読者がついている。

2人の孫娘だ。

「やっぱり目の前に小さい子供がいるとつくりやすい」と、ヒロシさんは目を細める。

離れて暮らす孫娘たちが訪ねてきた際、それぞれを主人公にした物語をプレゼントしたところ大好評だったという。

絵本8

10月29日から練馬区のカフェで展示

絵本の数々は10月29日から、はるかさんの夫が営む喫茶店で「ヒロシとマリコの手づくり絵本展」を開く。

16冊を実際に手に取って読めるほか、絵本制作のワークショップも行う。

両親への恩返しと昨年から病と闘うヒロシさんを励まそうと、はるかさんが企画した。

ヒロシさんは「うれしいけど、ちょっと恥ずかしいかな」と照れる。

絵本を手にするヒロシさんとマリコさん

絵本を手にするヒロシさんとマリコさん

はるかさんは現在、都内で建築関連の仕事に就く。

「私が建築デザインの道に進んだのも、絵を描くことで手を動かすことが好きになったのかもしれません。

けっこう影響を受けていますね」

80冊の手づくり絵本には、描き切れない家族愛が詰まっていた。

【ヒロシとマリコの手づくり絵本展】
☆日時:10月29日(土)~11月6日(日)8~18時
☆場所:東京都練馬区小竹町1-36-1
ライフスタイルショップ「都会の山小屋ワイルドネイチャー」2階
(西武池袋線・江古田駅北口から徒歩5分)

※初公開時、タイトルに誤りがありましたので訂正しました。

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Text by 漆舘たくみ

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