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なぜ地方の大学生は地方を離れるのか?最終回:若者にとって地方はいいところ?

アイコン最終回

「地方創生」が声高に叫ばれる一方、毎年数万人の地方の大学生が首都圏で就職する。

上京する彼らはスマホを片手に、10万円単位の交通費と滞在費を掛けて就活に励む。

本連載は、東京で就職を考える地方の学生たちの座談会を通し、彼らが地方と東京をどのように比べているのか明らかにする。

地方学生2

集まったのは北海道、秋田、岩手、愛知の4道県出身の5人。

5人は地方学生の就活を支援する(株)地方のミカタ(新宿区)でインターンをしながら、シェアハウスで都内に長期滞在した経験を持つ。

なぜ東京に関心を持ったのかを探った1回目では学生たちが地方の現状に閉塞感を抱いていること、2回目では地方で働き続ける将来に悲観的であることが浮き彫りになった。

【第1回:なぜ地方の大学生が地方を離れるのか?

【第2回:東京は未来志向、地方は過去志向?

最終回の今回は、「地方創生」について意見を交換。担い手になり得る若者たちは、なぜ地元を離れてしまうのか。

※学生の名前はすべて仮名です。

短命県ツアーで学んだこと

筆者:では、4番目の質問です。

現在、政府が地方創生をしましょう!という大号令を掛けていますが、地方創生について皆さんはどう見ていますか。

自己紹介1

りな:今は日本人をターゲットに働きかけているけど、これから日本はどんどん人口が減っていくから、地方創生も日本向けじゃなくて世界発信っていうグローバルな目線で見た方がいいと思います。

さとみ:あたしは青森県でビジネスを起こすとしたら何をするかを考える合宿に参加したことがあって。

合宿後に『お金を出すからやってみて』と言ってもらえて実践したものがあります。

なんだろう、若者の無責任ながらに言える意見を事業化してくれた自治体はありがたいと思いました。

さとみさん

筆者:どんな事業を?

さとみ:私のは「短命県体験ツアー~青森県がお前をKILL~」というやつで。

ゆうすけ:えっ、あれ!?

筆者:あれはすごく有名になりましたね。

平均寿命がいちばん短い青森県で、塩分の濃い食生活や雪かきを体験しようという企画でした。

さとみ:合宿でもけっこうとんがったアイデアを求められて、まさか本当に事業化してくれると思っていなかった。

バックアップもしっかりしてもらえたし、そういう事業はいいなって。

ゆうすけ

ゆうすけ:僕は反対、というかちょっと意見が。

どこも地方創生と言っても結局、根本的な原因は変わらないのかなと思います。

観光客とか雇用の奪い合いになっていて、本質的な解決になっていないなと。

それならコンパクトシティみたいに、きゅっとまとめることのほうが、より問題解決につながるのかなと。

どんどん散らばったら、逆に雇用やアクセスの面で不便になるし、それならもう少しだけ内側に寄るのがいいのかなと思います。

雇用をもらって来よう、東京からこっちに来てもらおうはどこも一緒だし、それが地方創生になのか、正直、あんまり分かんないです。

もちろん来ることで儲かるってこともあるけれども、『うーん?』って思います。

楽しそうに見えない地方創生

筆者:どう、留学経験があるみおりさんは?

自己紹介3

みおり:栃木と岩手、宮城でそれぞれやり方が違うなって思っていて。

栃木でいうと、日光とか那須とかグローバルで外国人観光客向けだと思うんです。

岩手や宮城だと、地方創生は復興を絡めたやり方をしていて。

改善点としては……盛り上がってないところを盛り上げようじゃなくて、これ楽しいからやろうよというスタンスだったらいいんだろうなって。

今、この地域が廃れているから盛り上げていこうよじゃなくて、言い方というか『面白いんだよ』が先行すればいいのだろうと。

地方創生っていうと、ネガティブなものをポジティブに見たいなイメージ。やる人たちもポジティブだったらいいのになって思います。

自己紹介2

つーちゃん:実際に働いている人たちに意見を聞いてみても、弘前をディスるわけではないですけど……『まあ残らない理由も分かるよね』みたいな空気がそもそもあって。

そういう意識の人たちがやっているなら、地方創生って楽しそうにも魅力的にも見えない。

短命県ツアーもだけど、学生のとがった活動のほうが意外と全国に知られたりする。

そもそも発信力が弱くて、ガツガツ調べなきゃ出てこない状況だと、あまり行こうかなとはならないだろうなって。

座談会2

筆者:なるほど。皆さんが、想像以上に周りの社会人を冷静に見つめているのがちょっと怖いなと感じています(笑)

今の私も、どう見られているのか心配です。

さとみ:とんでもないです。変に思ってないですよ!

つーちゃん:そんな今の少しの時間じゃ分からないですよ(笑)

筆者:なんか面接されているみたいだなぁ。

田舎でキャリアという単語を聞かない

筆者:それでは、最後の質問です。

「若者のキャリアづくり」という観点で、地域に残ってほしいと言って若者を食い止めるのは本人の成長を妨げる、という意見があります。

若者が成長しようと考えた時に、地方と東京だったらどっちが良いと考えていますか。

もちろん、皆さんは東京に興味があるという前提がありますが、もっと先のこと、東京で就職後のことも考えてほしいです。

りな:キャリアって、私たちぐらいの世代だけですか?幼いころも含めて?

筆者:それでも構いませんよ。

座談会14

りな:豊田市が特殊なのかもしれませんが、習い事に豊田市の補助が出ていてるんです。

あたしはロボットを作る習い事をしたんですが、市がはんだごてとか支給して市内の小学生は無料だったんです。

そういう色んな分野を知れたので、その面は豊田市で良かったなと。ただ、その後を結びつける仕組みがあったらいいなと。

小学校で終わっちゃうので、中学校でもっと進んだ内容をやるとか続けていく工夫が欲しいと思いました。

座談会9

さとみ:あたしは、地方に残ってくれてという大人じゃなくて、いま関わっている青森県庁の方は一回東京に出ろって言ってくれて!

一回東京に行って、見て成長して、最後に戻ってきてくれたらうれしいなってスタンスなんです。

逆にそういうスタンスじゃない地方の人は、自分さえ良ければいいだと思えて、あたしは意見を聞かないようにしています。

ちゃんと成長して戻って来いって言ってくれる方は、本気で地方創生のことを考えているんだなって思います。

筆者:確かに、東京に出ると価値観が変わりますね。

座談会7

みおり:キャリアづくり……さっき、りなが言ったように東京か地方かという括りより、女性だと住む市町村で子育てにどんな補助があるかって点が関係していてるんですけど、東京のほうがキャリアの選択肢は広がる気がします。

そこにどういう自分として生きたいかというのが加わって、どういうキャリアをつくるから、じゃあどこに行ったらいいのかという話になってくると思います。

りな:あ、付け加えてもいいですか。

筆者:もちろん。

りな:就活を地元(愛知県)でもしたんですけど、地方と東京で意識が違うなと感じたのが、地方は出産後にこうして働きましょう、みたいな生き方。東京だと、どう働いていきたい?っていう感じ。

なんていうだろう、東京だとキャリアプランを自分で設計することを求められる。

地方だと長く働くにはどうしたらいいのか、与えられた選択肢の中で選んでというのが地方。その点で、東京のほうが多様性があるなと感じます。

座談会13

さとみ:地元(秋田県)にいて、まずキャリア形成とか、そういったものを考えてみようって機会がなくて。

キャリアって単語を発するより定年まで働くことが基本みたいな考えが根底にあって、その中で生きていくために働いてますってイメージが強かったと思います。

りな:そう、そう、そう!

ベンチャー企業だと自分の会社はファーストステップで、転職をしてセカンドステップを考えてもいいから、自分なりのライフプランを話してみてと言われます。そこがまず違う。

筆者:確かに、田舎でキャリアって聞かないですね。

ゆうすけ:基本的に、僕もみおりさんと一緒です。

その人にとって、東京か地方かどっちがいいのか選ぶ必要があると思います。

東京のほうが選ぶ面では得る機会がすごく多いですけれど、その人に合っているかは別。

その人自身が地方の良さと東京の良さを分かる必要があるし、どっちに向いているか自分を知ることが大切だなと。

地方は特に、偏見を持っていても地域の中でどう生きるかしか考えない人が多いと思うんです。

そのうえで東京という選択肢もあるんだよっていう視点を持つことが、大前提として大切だと思います。

座談会11

つーちゃん:さっき漆舘さん(筆者)が言ったみたいに、やりたいことをやるのが大事だなと思っていて。

地方……青森しか見てないですけど、地方の企業って、その企業に勤めて何ができるのか、将来的にどういう人生を送れるのかという部分が、実際に大人と交流して説明を聞く機会が少ないです。

今、就活をしてみて周りの人を見ても、本当に夢とかやりたいことを持っていて就活をしている人があまりいなくて。

とりあえず地元が好きだから帰る、安定したいから公務員、銀行って今から言っている人が多いんですよ。

みんな:うんうん。

つーちゃん:やりたいこと以前に、そもそも何ができるのか知らない人が多い。

地方に残っても、できること、やりたいことが分からないとなると、より社会人と触れ合えて情報があふれている東京に出ようってなるのは仕方がないことだなって。

地方の企業はどんな人生を送れるのか、学生と話す機会を増やした方がいいのかなって思います。

座談会10

さとみ:あたしの生まれた秋田県男鹿市って本当に田舎で、中学高校で人生の道を決めちゃう人が多くて、それはすごく勿体ないなって。

30歳からでも大学に行けるように、自分のキャリアプランをもっとフレキシブルに変える仕組みがあれば、地方の人材の底上げにつながるかなって思っていて。

今はパソコン1台あれば地方でも都会とつながってできる仕事はたくさんあるし、そういう生き方ができる環境があればいいなって。

筆者:確かにそうですね。

さて、だいぶ長丁場になりましたが、最後に言い忘れたことや言いたいことはありますか。

ゆうすけ:最後にちょっとだけいいですか。

地方でも、小中学校に絞ってOBOGなり社員の人が訪問するようなキャリアの授業を増やしてほしいなと思っています。

高校で理系、文系に分かれた時にほぼ決まってしまう部分がある。

中学高校でキャリアビジョンを描けるようにしないと、親の影響を受けすぎるから、小中に絞って分かりやすく伝える環境が大切かなって。

いつかは戻りたい

筆者:今回、地方と東京を比べてみたんだけど、地方って若者にとっていいところなんでしょうか。

りな:地方は……やっぱり住みやすいですよ。東京は人が多すぎます。

さとみ:うーん、東京にいたら消費することしか考えていない自分がいて。

何か買おうとか。あたし、資本主義社会に乗せられてんなぁって。

りな:彼女に付け加えると、東京はモノがありすぎて選ぶことしかできないんです。

地方はないからこそ『これが欲しい』『こんなのがあったらいいのに』が思い浮かぶ。

筆者:それは、はっとさせられますね。

座談会3

筆者:どうでしょう皆さん、東京で働いたとして地元に戻りたい気持ちはありますか?

さとみ:…………いつか?

筆者:長い目線で。

さとみ:あたしは戻りたい。いつか、戻りたい。

つーちゃん:やりたいことをちゃんとやり遂げて終わって、満足して帰ろうってなったら帰りたいな。

ゆうすけ:僕も同じですね。すごく地元が好きです。住みやすいし、なんか落ち着きますね、単純に。

みおり:あたしはあまり場所にこだわりがないので、なんていうか、日本でもいいし、海外でもいいし、岩手でもいいし。

やりたいことに周りに人がそろっていれば別に、かな。

賃金でも求人倍率でもない上京理由

座談会で明らかになったのは、地方学生たちが上京する理由として、普段のニュースが報じる「賃金格差」や「高い求人倍率」、巷の「遊ぶところが多いから」といった定型句はごく限られた一面でしかないことだ。

意欲ある新卒学生ほど、周囲の社会人を冷静に見つめ、安定の代名詞のはずである「終身雇用」に二の足を踏む現状がうかがえる。

それは、地方で働く将来像が見えない不安も一因だ。

就職情報サイトで商品カタログのように企業を比較できる現代で、積極的に情報を出す企業に安心感を覚えるのは自然なことである。

座談会2

一方、会の終盤で学生たちは「いつかは地元に戻りたい」という心情を吐露した。

この思いを無下にしないためにも、彼らが繰り返し指摘してきた前例と年功序列を重視する地方社会で、都会に出た若者がUターンをしやすい土壌を育てていく必要があるだろう。

本連載の最後に、(株)地方のミカタと忙しい合間を縫って協力していただいた大学生の皆さんにあらためてお礼を申し上げる。

関連記事:“就活生の地域格差をなくす”自身の苦労体験ばねに「地方のミカタ」を起業した26歳の熱意

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