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「干し芋」をおしゃれにする高校生たちの発想力

大成女子高の生徒たち

大成女子高の生徒たち

ダサい印象の「干し芋」、なじみの薄い「車麩(くるまぶ)」、臭いがきつい「酒粕(さけかす)」。

この3つで、それぞれ新しい商品を生み出すとしたら、どのようなものを思いつくだろうか。

会場となった東京大学(2017年3月4日撮影)

会場の東京大学(2017年3月4日撮影)

宮城、福島、茨城の高校生が集う

東京大学(東京都文京区)で3月4日、3地域の高校生たちが新たな名産品づくりの成果を発表、発想力を競う「Think Next! i.club Meetup! 2017」が初めて開かれた。

地域資源の利用について学生の活動を支援する一般社団法人i.club(アイクラブ、代表:小川悠)=東京都=が主催。

宮城県気仙沼市の気仙沼向洋(こうよう)高、福島県西会津町の西会津高、茨城県水戸市の大成(たいせい)女子高の3チームが参加した。

生徒たちはi.clubや地元企業の協力を得て、3~2年前から冒頭の3つの特産品の刷新と商品化に取り組んだ。

(左上から時計回り)ほしいもグラノーラ、車麩のラスク、酒粕ミルク

(左上から時計回り)ほしいもグラノーラ、車麩のラスク、酒粕ミルクジャムとクッキー

ブランド力最下位県の最悪の特産品

最優秀賞に輝いたのは、茨城県の大成女子高の「ほしい!もプロジェクト」だ。

干し芋(乾燥芋)を穀物類と混ぜた「ほしいもグラノーラ」を、水戸市のホテルとともに開発した。

大成女子高の生徒たち

大成女子高の生徒たち

民間研究機関の調査で、4年連続でブランド力最下位の茨城県を「伸びしろが日本一」だと解釈し、同県が全国の生産量の9割を占める「干し芋」の活用を検討。

アンケート調査により若い世代が干し芋を「べたべた」「地味」「ダサい」と捉えていた結果から、「イメージ最悪の干し芋を、さわやかなでおしゃれなものに」をテーマに据えた。

大成女子3

スライド発表を行う大成女子高のチーム

生徒たちは「さわやか=朝」の連想から、手軽な朝食として市場拡大が続くグラノーラに注目。

“腹持ち”が悪い弱点を、干し芋を混ぜることで改善できると考えたという。

発表する大成女子高の生徒

発表する大成女子高の生徒

発表では、万人受けするおしゃれレシピである点を強調。

後味がさわやかな「りんご味」のほか、おかゆや豆腐と和えられる「みそ味」の2つを制作し、甘い物が苦手な人向けにも対応できるとした。

審査員からは、干し芋に注目した観点やグラノーラと和食を結びつけた点が高い評価を受けた。

ドーナツ状のお麩をラスクに

福島県の県立西会津高校は、人口約7000人の過疎化が進む町にある。

部活動として、地域の企業とともにお麩のラスクを作り出した。

寸劇で車麩ラスクの将来像を表現する西会津高の生徒たち

寸劇で車麩ラスクの将来像を表現する西会津高の生徒たち

西会津町には、車輪のように真ん中に穴が空き、歯応えのある麩「車麩」のメーカーがある。

同社は雪国の伝統的な保存食として、膨張剤を使わず、炭火焼で3回焼くといった丁寧な製法を現在も守っている。

参加生徒は、車麩について「みそ汁や鍋など調理イメージが固定化している」と課題を設定。イメージを覆そうと、スイーツを考案した。

西会津高校の生徒たち

西会津高校の教員と生徒たち

地元菓子店と試行錯誤を重ね、コーヒーや紅茶と相性が良い「ラスク」を生み出すことに成功。

ドーナツ型をカワイイと感じてあえて残したこと、ゆくゆくはラスク目当ての観光客を呼び込む目標などを堂々と発表した。

仮設校舎で作った酒粕ミルクスイーツ

宮城県の県立水産高校である気仙沼向洋高校は、地域の酒蔵で余っていたという酒粕に着目した。

海に近かった同校は4階まで津波が押し寄せ、6年経った現在も高台の仮設校舎が学び舎だ。

気仙沼向洋高校の生徒たち

気仙沼向洋高校の生徒たち

酒粕の印象について広い年代に調査を行い、好きな割合が若い年代ほど下がることを発見。

若者になじみが薄い原因について、レパートリーが少ないことと考え、10~20代に関心を持てるアイデアを練ったという。

その中で、ミルクジャムに混ぜて酒粕特有の臭いを弱め、味をよりまろやかにする方法を編み出した。牛乳は気仙沼産を使っている。

気仙沼向洋1

支援する菓子店とのやり取りでは、悩むことも多々あったという。

発表では「アイデアを実現するには色んな工程があると知った。心が折れそうになったけど、思った以上の商品ができた」と胸を張った。

活動した卒業生は今

発表終了後、気仙沼向洋高の卒業生で、最初にプロジェクトに携わった会社員・小野寺里奈さん(21)が登壇した。

高校3年時に「就職活動の履歴書に書き込めればいいな」と軽い気持ちで活動に参加。「地元のことを何も知らない」と痛感させられたと語る。

小野寺さん

小野寺さん

当時は食べるラー油ブームに合わせ、気仙沼のカツオを使った「なまり節ラー油」を開発した。

3年が経った今、活動で縁を持った地元の老舗水産加工会社・斉吉商店で店頭に立ち、自身の手でなまり節ラー油を販売している。

「プロジェクトが終わった時の達成感がすごかった。私自身が仕事で気仙沼の良さをPRしたい」と、就職先を選んだという。

メンバーは卒業後、仙台市など各地に散っていく。それでも、彼らはいずれ気仙沼に戻ると口をそろえているという。

小野寺さんは「宮城といえば気仙沼と言われるようにしたい」と宣言した。

プロジェクトを見守る齋藤真教諭が、i.clubの提案を受けた理由を明かす。

本校には震災で家を失った子、親を失った子もいます。

地域の大人と協力して物事を達成していくという体験を通して、彼らが自信を取り戻し、地元で働きたいと思えるきっかけになってほしかったんです。

「日本は事例に弱い国」

教師を目指していた小川さんは、「アイデアづくりに困っている学生に作り方を広めたい」と団体を立ち上げた。

今回の3品は、商品化の資金をすべてクラウドファンディングで調達している。

小川さん(写真中央の白いシャツ)と高校生たち

小川さん(写真中央の白いシャツ)と高校生たち

小川さんは最後のあいさつで、「日本は事例に弱い国です」と指摘。

前例がない挑戦に二の足を踏み、他者の成功例ばかりにすがる風潮を端的に表した一言だろう。

商品化の実績は、参加した高校生たちにとって将来への確かな自信となるはずだ。

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