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27歳で新聞記者→突っ張り棒メーカー社長になって気づいた仕事の本質

竹内さん 出典元:平安伸銅工業株式会社公式サイト

竹内さん 出典元:平安伸銅工業株式会社公式サイト

大阪市西区にある創業65年の突っ張り棒メーカー・平安伸銅(しんどう)工業株式会社。

代表取締役の竹内香予子さん(34)は、創業者の孫で3代目だ。

前職は新聞記者。27歳だった2010年1月に父から事業を引き継いだ。

「家業を継ごうとは、まったく思っていませんでした」

そう語る竹内さんが、一介の記者から経営者に転身して気が付いた仕事の本質がある。

他の人にできない仕事

3姉妹の末っ子である竹内さん。

両親は「好きなことをやりなさい」という教育方針で、姉2人は医師と歯科医になった。

自身も「自分も専門職を極めたい」と新聞記者を志し、全国紙に入社。

滋賀県の支局に配属され、県警(事件・事故)や県庁(行政)などを担当し修行を積んだ。

しかし、巨大な会社組織の中で役割を見失い、「組織の要求に応えるだけが仕事なのか」と思い詰めるようになったという。

イメージ画像 出典元:Fotolia

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そんな折、2代目として社を率いてきた父が体調を崩す。

父が体調を悪くしたのと、私が悩んだ時期が重なって。

新聞社には毎年たくさん人材が入るけど、今、会社を継げるのは私しかいない。

他の人にはできない仕事だと思いました。

どうせやるなら自分で責任を持つ仕事をしたい、と入社を希望したんです。

両親は、娘の決断に驚いたそうだ。

企業経営の厳しさを知るだけに、親心として子供を働かせようと思っていなかったそうです。

私が自分の意志で「やりたい」と言ったことを、両親は予想以上に喜んでくれて、肯定してもらえたなと。

会社の行き先を心配していた従業員たちも「後継者が来た」と喜んだという。

従業員の3分の2が入れ替わる

突っ張り棒を発明したリーディングカンパニーとして、長くトップシェアを保ってきた同社。

社内には、過去の成功体験にこだわる価値観が定着していたという。

これまでは耐荷重など機能を高めていくことで市場を拡大してきたんです。

しかし、それにニーズがあるかはちゃんと考えられていませんでした。

100円均一で十分に使える突っ張り棒が買える時代に、新しい戦略が求められているのは明白。

数十年先を見据えた社風改革が必要だった。

成功するか分からない中で、40年やってきたことをなぜ変えるのか、なぜ新しいことに挑戦するのかと不満を持つ方もいました。

付いていけないと辞められる方もいました。

イメージ画像 出典元:Fotolia

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この7年間で、社員の3分の2が入れ替わった。

一方で20人だった社員は32人まで増え、平均年齢も40歳ほどまで下がったそうだ。

失敗もたくさんしています。

でも、その繰り返しで徐々に成功したものを残して、方針がブレなくなってきました。

現在はDIY向けの金具シリーズ「LABLICO」、デザイナーと協力したおしゃれな突っ張り棒「DRAW A LINE」、さらに片付けに関するメディア「cataso」の運営など、新たな生活スタイルを提案する製品・サービスに主軸を置く。

突っ張り棒の「DRAW A LINE」シリーズ

突っ張り棒の「DRAW A LINE」シリーズ

常務取締役で夫の一紘さんの支えも大きい。

建築事務所出身で滋賀県庁に勤務していた一紘さんを1年かけて説得し、2014年春に入社してもらった。

経営者になって3年ほどして、どうしても会社を変えたいともがいていた時、私の力不足で社内外から人材を見つけることができませんでした。

そんな時に一緒に経営の勉強をしてくれたり、建築の知識でサポートしてくれたりしたのが夫でした。

人に感謝できるようになった

経営者として働く中で、竹内さん自身も成長を感じている。

人に感謝できるようになりましたね。経営は人で成り立っていると、本当に思います。

会社員の時は会社から給料をもらって当たり前でしたが、色んな所から力を借りて会社が成り立つんだなと。

本来なら下積みを重ねるところを、こんな歳で今の立場にしてもらえたのはありがたいことです。

また、何かを与えられたら、それ以上の価値を加えて恩返しするという循環を生むことが大切だと感じます。

結局、ビジネスって誰かを幸せにすることかなって考えるようになりました。

組織改善などが功を奏し、直近の3年間は連続で増収を達成している。

まだ成長の軌道には乗り切っていないと言い、さらに時代に合わせたビジネスモデルを模索する。

告知画像

実は、平安伸銅工業の始まりは突っ張り棒ではなくアルミサッシの生産だ。

戦後の住宅ラッシュに合わせ急成長。その後、都市の過密化で住宅が狭くなるのに合わせ、いち早く突っ張り棚などを開発し、日用品メーカーに転じた歴史を持つ。

竹内さんは、かつてと同じように時代に合わせた転換ができると信じている。

社会が成熟して物が余っている、安くても要らない物は買わないという低成長の時代です。

そんな時代の消費のあり方に合わせた、シフトチェンジをしたいです。

きょう27日(土)には大阪市内でトークイベントを開き、「モノを持たへん時代に、何つくる? 〜老舗メーカー×デザイナーの挑戦〜」と題して、ものづくりの将来について語る予定だ。詳しくは公式サイトで。

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Text by 漆舘たくみ

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