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下手な教師より塾講師の動画授業…平成30年で変わった「高校生」の勉強

イメージ画像 出典:Fotolia

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1989年1月8日に始まった平成の時代は、2018年で30年目を迎えます。

この30年で私たちの身の回りではいったい何が変わり、何が変わっていないのか。「平成30年目の目!」と題して、各分野のプロに振り返ってもらいます。

第1回:平成30年で“ケータイ”が退化した面とは?auに聞く携帯電話史

第4回は「高校」という多くの人が10代の多感な時期を過ごす場所に目を向けます。学校教育や生徒とメディアの関係を長く研究する千葉大学教育学部の藤川大祐教授が、「電子メディア」「大学進学率」の2つをキーワードに変化を語りました。

千葉大学教育学部 藤川大祐教授

千葉大学教育学部 藤川大祐教授

【ふじかわ・だいすけ】千葉大学教育学部教授。2010年より現職。2016年10月より千葉市教育委員。文部科学省などで現職教員研修講師や日本メディアリテラシー教育推進機構理事長を務め、青少年とメディアの関係について著書多数。

ネットコミュニケーションが友人関係に

1989(平成元)年からの最大の変化は、高校生たちの電子メディアへの接触時間の増加といいます。

1994年の携帯電話の端末買取制による低価格化を機に、1990年代後半から高校生にも携帯電話が急速に普及。1999年にはインターネット接続サービスが始まり、2001年にはカメラ付きケータイが登場、2007年頃からはスマートフォンが広がり始めました。

内閣府などの調査によると、2004年には高校生の携帯電話保有率が9割に達します。

この30年でプライベートが大きく変わりました。ちょっとした隙間時間に友達とおしゃべりしたり本を読んだりしていたのが、スマホの登場で「退屈な時間」がなくなりました。

メールやSNSでの会話が一般化し、コミュニケーションの中心は音声から文字に置き換わりましたね。ネットコミュニケーションが友人関係の基本になり、LINEのようなゆるやかな関係が多い。高校でも、昔と違って中学時代の友達とつながったままです。

勉強も1人だけで机に向かうものではなくりました。家に帰っても、友達にLINE(2011年6月サービス開始)でテスト範囲や理解できない箇所を尋ねながら、ノートの写真を送ってもらうのが普通です。

イメージ写真 出典:Fotolia

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Twitterと現実の知り合いは何が違う?

ネットコミュニケーションの定着は、人間関係にも変化をもたらしたと指摘します。

2017年9月に神奈川県内のアパートで9人の遺体が見つかった事件では、被害者に高校生が含まれていました。報道によると、容疑者の男はSNSを通じて被害者と知り合ったとみられており、藤川教授の元には「なぜ若者はネットで会話しただけの人に会えるのか聞きたい」というマスコミからの取材依頼が相次いだといいます。

「なんで本名も知らない人にいきなり会うの?」とよく聞かれましたが、別に知らない人ではないんです。Twitterで自分の気持ちを受け取ってくれる知り合いなんです。

今の子供にとって、相手と対面しなきゃよく分からないということはないんです。デジタルでつながることが自然なんですよ。

大人だって人によって態度を使い分けます。子供たちも学校では「学校向けのキャラ」を演じているから、そこにネット越しの付き合いとの差はほとんどありません。

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進学率上昇も高校は変わらず

平成30年までのもうひとつの大きな変化として、大学・短大への進学率の大幅な上昇を挙げます。

文部科学省の2017度学校基本調査によると、大学・短大への進学率は54.8%(速報値)と、2人に1人が進学。平成が始まった1989年の36.3%に比べると「大学生・短大生」が珍しい存在ではなくなったことが分かります。

1989年には、男女の大学・短大進学率が逆転していました。

長い不況と大学の大衆化で、「大学を出ても幸せではない」という意識が社会に定着しました。男女共同参画の考えも進んで、「女性の幸せは結婚」とは表だって言わなくなりましたよね。

しかし、高校自体は一部の意欲的な学校を除いて旧態依然としていて、相変わらず単位取りゲームです。昭和の頃と変わらず進学実績ばかりが重視されて、高校の序列はほとんど変化していません。学校教育全体が、時代に対応しきれていないんです。

東京大学安田講堂=2017年3月4日撮影

日本で最初の大学である東京大学=2017年3月撮影

知識の習得より体験を重視

一方でネットの発達により、塾や予備校に通えるかといった地方と都市部の教育格差は縮まりつつあります。

2011年から配信されている学習アプリ「スタディサプリ」は、各大手予備校と提携し、月額980円という低価格で地域にかかわらず有名講師の授業を動画で受けられます。

科目の基礎的な内容を学ぶなら、教え方が下手な学校の先生より、定評のある塾講師の動画のほうが分かりやすい。しかも、動画なら何回でも再生して復習できるから効率がいいわけです。

高校でやることは知識の習得より、その場での「体験」を重視しなければならない時代になりました。

2018年度からの新学習指導要領は、国語での討論、数学の活用、就業体験の充実など「生きる力」の育成を掲げた内容となっています。

また、顕著な例として、広域通信制の私立高校「N高校」(2016年4月開校)は、ほとんどの授業や課題提出をインターネット上で完結。全国の教室で行うスクーリングは年5回程度で、沖縄県の本校では体験型の課目も実施します。比較的短い拘束時間で、全日制と同じ単位を取得することが可能です。

部活動で開発した特産品の発表を行う高校生たち=2017年3月、都内のイベントで

部活動で開発した特産品の発表に工夫を凝らす東北地方の高校生たち=2017年3月、都内のイベントで

そのうえで、藤川教授は設備が整った工業や農業、商業といった実業高校に着目します。

体験を重視する時代に、実業系の高校は大きなポテンシャルを秘めていると言えます。

ところが、世間では「偏差値が低く」「普通高校に入れない子」が行く高校という偏見が未だに根強いです。それは、結果的に普通高校への不本意な入学者も生んでいます。社会の見方がどう変わるかが、問われています。

意欲のある高校生は海外へ

国内の地域差がなくなったように、ネットの普及や航空網の整備などで現役高校生の海外進学へのハードルは、30年前に比べると格段に下がったと指摘します。

そんな中で、平成に入って日本の大学は、予算削減などで研究水準が落ちてピンチを迎えています。先日、「世界大学ランキング2018」が発表されましたが、国際的にも日本の大学の地位は落ちています。ノーベル賞も昔の功績で獲れているだけです。

高校生でも海外留学ができる環境になってきているので、意欲があり勉強ができる学生ほど日本に留まりにくくなっています。

イメージ写真 出典:Fotolia

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2020年度からは小学生からプログラミングが必修化され、既存の物を使いこなすのが前提の私たちとは「まったく違う価値観になるだろう」と藤川教授は予想します。

「ゆとり世代」「さとり世代」などと称されてきた平成の高校生たち。

いつの時代も「若い世代の考え方が分からない」と嘆くのが先輩世代の常ですが、早くから電子メディアを操って海外で経験を積むだろう新しい時代の高校生たちは、どのような価値観を生み出すのでしょうか。

Heisei30

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Text by 漆舘卓海

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